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第六話

なんかだんだん話しが大きくなってきてます。

自滅しかねないように、しっかりコントロールしないとです。

~~~ 昭和5年 9月9日 海軍省 ~~~


朝、海軍省に出頭、谷口軍令部長に挨拶をおこなうと。


「おはよう三好中尉、今日は昼から皇居に参内するからその心構えでいたまえ」


「はっ、では陸・海、そして政府の主要メンバーが集まる……認識でよいのですね?」


「その通りだ。中尉の望んだ舞台が出来上がりそうだよ。陸・政府も動かす事ができるかね?」


「反発は必ずでると思います……もちろん海軍も。ですなんとか説得したいと思います」


俺は少しうつむき加減に答えた。


「我々も痛みを知る事になると言うわけだな?」


谷口軍令部長は目を細め、こちらを見透かそうとする。

野村司令にもされたが、どうも偉い人はこれができなといけないんだろうかね。


「その通りです。こればっかりは避けられないと考えます」


「わかった、それでは後ほど聞くことにしよう」


「はっ、それでは自分は準備をいたします」


敬礼をし、軍令部長室を退去したのだった。

俺はひとつ深呼吸をし、よしと一言気合を入れて午後に挑むのだった。


~~~ 午後 皇居内会議室脇控え室~~~


「さて、ここの会議室集まってもらった人物の一覧だ」


俺は野村司令より一覧表を貰い見る。


「どうしたかね? そんな驚いた顔をして」


「こ、これは……よくこれだけの方々を集められましたね……」


やばい、このメンツは正直キツイものがある。

手と膝が震える。このプレッシャーに負けず押し切る事ができるだろうか。


「はっはっはっ、そりゃー陛下の意向だからな。断る人間はいないよ」


あっさり一言で片付けられてしまった。

もう一度会議参加一覧を見る。


政府

総理大臣 濱口雄幸

外務大臣 幣原喜重郎

内務大臣 安達謙蔵

大蔵大臣 井上準之助

司法大臣 渡辺千冬

文部大臣 田中隆三

農林大臣 町田忠治

商工大臣 俵孫一

逓信大臣 小泉又次郎

鉄道大臣 江木翼

拓務大臣 松田源治

内閣書記官長 鈴木富士弥

法制局長官 川崎卓吉


陸軍

陸軍大臣 宇垣大将

参謀総長 金谷大将

教育総監 武藤大将

関東軍司令官 菱刈大将

近衛師団長 林中将

参謀次長 岡本中将

陸軍航空本部長 古谷中将

造兵廠長官 緒方中将

技術本部長 吉田中将

軍馬補充部長 吉岡少将


海軍

海軍大臣 財部大将

軍令部長 谷口大将

軍事参議官 伏見宮大将

軍令部次長 永野中将

連合艦隊司令長官 山本(英)中将

艦政本部長 藤田中将

航空本部長 安東中将

軍需局長 山下中将

海軍次官 小林中将

航空本部 山本(五)少将

教育局長 寺島少将

人事局長 松下少将

軍務局長 堀少将


そして天皇陛下も御臨席される。


財部大臣・伏見宮大将がどのように伝えたのかがわからないが、それなりに興味・危機感を持ったと思ってよいみたいだ。

元いた時代、戦史研究を行っていた時に共同で論文を書いた事があった。あったのだけれど、まさかこんな形で実現させようとは思ってみなかったなぁ。


「準備はいいかね中尉?」


どうやら中の準備が整ったようだ。


「はっ」


俺はただ一言返事をした。

そう、俺の戦争はもう始まっていたのだ。


「さあ行こうか」


野村司令がドアを開け中に入る。俺は野村司令に続き中に入ると、中にいる将官・大臣達の視線がこっちに集まる。

ものすごい重圧感が俺を襲い、背中に冷たい汗が伝う。俺はその重圧に抗うように腹に力を入れる。


野村司令が会議室に取り付けられている黒板の脇に立ち、俺を正面へと促す。野村司令を通りすぎる時に軽く頷き、黒板の前に立ち敬礼をする。


「本日は皆様にお集まり頂き、光栄であります。自分は軍令部付 三好中尉であります」


敬礼を解き、休めの体制になる。

相変わらず政府・軍の重鎮達からの視線は強いままだ。


「本日お集まり頂いた内容ですが、これからの日本……きたるべき米国との戦争に勝つ為、現在日本が抱えている問題を改善する会議となります」


ここで政府の要人の一人が挙手をする。俺は「どうぞ」と一言いい、発言を促す。


「総理大臣の濱口だ。財部大臣よりおおまかな事を聞いておるが、何故政治の話しにまでなるんじゃろうか?納得できる話しを聞かせて貰えるとありがたいのう」


のっけから敵意むき出しだな。でもちょうどいい。政府のTOPを説得できれば一機に風向きがこちらに向くはずだ。


「はい。今の時代、現時点での政策は問題ないでしょう。しかし10年後突然国難にぶち当たった場合、現在の政策のままで国難を乗り越える事ができるでしょうか?例えとなりますが、明治43年・皇紀2570年に帝国は韓国を併合いたしました。日本が米国に敗戦するまでの35年間に文字通り国家予算を注ぎ込み続け、韓国を先進国並みに変えました。しかし、敗戦後の日本に得られるメリットはありませんでした」


政府関係者や陸軍の重鎮達が軽くざわめく。


「……中尉は我々の国策が間違っていると言いたいようだが?」


目を三白眼にして睨まないでください濱口総理。


「自分がいた時代からは「骨折損のくたびれもうけ」の諺がぴったりと当てはまる事例となっておりました。そこに莫大な金を使うのは日本の国力を削ぐ事にしかなりません」


総理は憮然とした表情で黙って聞いている。不満だろうがかまってられない。


「つまり韓国の開発を廃止、または大幅に縮小させます。その金を国内の改善に当てます」


この「金」と言う単語に目つきの変わった大臣がいる。おそらく大蔵大臣だろう。


「まずは国内の工業基盤を改革です。この時代、職人の手によって作られた同一の品の品質はバラバラなのがあたりまえでした。これが後に大きな問題となり、戦争兵器に多大な影響が出ております。これを改善する為にドイツの最新工作機械導入を実施し、工業製品の品質にも一定の基準を設ける事が必要と考えます。次に国内の交通網の整備。ドイツにはアウトバーンと呼ばれる自動車専用の高速道路網が整備されております。これを日本の主要都市を繋ぎ、経済活動を促進させます。この副次効果もありますがそれは別途お話しいたします。次に鉄道。現在満州に満鉄が創設されておりますが、国内にも満鉄を超える高速鉄道の建設をいたします。この三点の改善だけでも日本国の経済活動は活発となると判断いたします」


「朝鮮投資をやめた金をこれに使うって事になるんだね?」


今質問したのはおそらく大蔵大臣だろう。俺は発言した大臣と目をあわせ頷く。


「はい、その通りです」


「私はこの案に賛成いたします」


と挙手する大臣が五名現れた。

後で聞いたら大蔵大臣・商工大臣・逓信大臣・鉄道大臣・拓務大臣だった。


ひとまず一部だが賛同を得る事ができた。最初の壁は乗り越える事ができたようだ。

※ご意見・ご感想お待ちしております。

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