第二十九話
どうもお久しぶりでございます。
職場環境がガラっと変わり、更新できる時間が激減してしまいました。
暇をみてちょくちょく更新はしていきたいと思いますので、どうぞ皆様気長にお待ちください。
リハビリなので短いでございます……
俺は自席の資料を箱詰めしながらさらに回想する。
8月に史実通りドイツ労働党が選挙に圧勝した。
これでヒトラーが来年の早々に首相に指名されるはずだ。
今思えば暗殺しておくと言う手段はあったが、暗殺してしまうとデメリットの方が大きいので却下せざるを得なかったか。
兎に角、ユダヤ系の技術者への接触をより密にしていく事はすでに統合作戦本部・外務省とで確認済みである。
余談だが、ヒトラーの「我が闘争」は原訳が出版される事となった。
これがドイツ労働党に対する影響はわからない。
~~~ 昭和7年 12月31日 鶴岡八幡宮 ~~~
今年も鶴岡八幡宮で年を越す事とした。
今回で三回目だ。戦時に入ればこう言う風に詣でにくる事もできなくなるだろうしね。
国内の技術開発だが、今年の初頭に上海事変の結果、新しい航空機の設計図が書きあがった。
BMW・三菱・中島との共同開発による全金属単葉戦闘機。
性能は最大速度400km、最大航続距離700km以上を目標とする野心的な設計だ。
来年早々には試作機を作成し、試験飛行を行う予定でいる。
もしこれが試験が成功し正式採用されれば、日本の戦闘機技術は史実より2年程早まる事にり、世界的に見ても優秀な戦闘機となる。
当然あの堀越二郎も設計に携わっており、BMW側からも期待を寄せられているとの事だ。
エンジンはBMWが日本の要求を受け入れ、三菱との共同開発の空冷エンジンの開発をした結果、14気筒のエンジンの開発を成し遂げている。
14気筒の空冷式エンジンで有名なのは栄エンジンだが、史実どおりとはいかず680馬力にとどまっているようだ。
(史実の栄12型は950馬力を出力できていた)
技術者達は「このエンジンであればおそらく時速は500km近くはでるのでは? 」と期待がかかっている。
新生日本空軍の初の戦闘機。ぜひ開発に成功してもらいたいものだ。
さて、そろそろ時間だ。来年も平和であるように願おう。
俺がやっている事は人を殺す手段を増やしている事だ。
とても誉められたことではない。寧ろ願いとは矛盾している感じだな。
しかし、過去とはいえ祖国を守ることには躊躇はしねーぞ。将来のアメリカ大統領・ルーズベルトよ。
~~~ 昭和8年 4月1日 空軍学校 ~~~
今年も雛鳥達が入学してきた。
俺は教官の一人として入学式に参列している。現在は山本校長が訓示を述べている時間だ。
1月末。とうとうヒトラーがドイツの首相になり、政権を獲得した。
これからヒトラーの独裁政治が始まり、第二次欧州大戦の始まりが決まったような物だ。
ドイツにある大使館内の職員として偽装させてある諜報員達に在ドイツ技術者達への接触を強化させるように指示。ここからが勝負だ。
そして3月にはアメリカでは史実通りルーズベルトが大統領選に勝ち、大統領に就任した。
日本を戦争に追い込んだ男。
これが後の歴史学者達の認識であるフランクリン・ルーズベルト像。
日本にとって本当に危険だったのはこの男だった。
以前にヒトラーの暗殺を考えた事があったが、寧ろルーズベルトこそを抹殺しておけば戦争は起きなかったかもしれない。
なぜもっと早く気がつかなかったのだろうか。
もっとも1930年の時点でルーズベルトはニューヨーク州知事だった為、暗殺は難しかったかもしれないが。
まぁ、まだ大丈夫だ。
ルーズベルトは第二次世界大戦・ヨーロッパでナチスドイツが戦争を起こすまでは対日戦略は協調路線だった。
戦争が勃発し、イギリスやソ連が窮地に追い込まれていくと日本への戦略を変化させ、戦争と言う崖に突き落としたのだ。
これからはもっとアメリカの行動を注意して見て行かないといけない。
もっとも、ドイツやイギリスとの行動も注意しなければいけないだろう。
おれ自身としては中佐に昇進した。
前回少佐に昇進してから2年が経過しており、事務処理能力・3軍に対する提案の功績・対外諜報への功績などが認められた結果昇進となった。
まぁ、未来知識と言うチート能力のおかげと思うがありがたくもらっておく事にしておこう。
~~~ 昭和8年 5月1日 羽田飛行場 ~~~
この日は開発に成功した試作機の試験飛行の日だった。
今はその飛行試験結果の評価を次のメンバーでおこなっている。
・国防大臣
・国防次官(空軍担当)
・統合作戦本部長
・統合作戦副本部長
・空軍長官・次官
・技術本部長以下数名
・BMW・三菱・各メーカー技術者
すでに試験機は上空を飛行しており、定められた飛行プランを消化している。
低空飛行時には評価メンバーの上空を通過した際には、空冷星型14気筒がたたき出す音に全員が静かになった。
その飛行速度・運動性に全員が頷き、軍から採用される事は間違いがないだろう。
「うむ、これは素晴らしい。こんな速度が出る戦闘機は始めてみたよ」
「まったくです」
空軍長官と次官が話し合っている。
そこにBMWの技術者を引き連れて技術本部の技師が話しかけてきた。
「どうでしょう。 BMW殿と共同開発した機体は?」
「良いな。ひとまず空軍機として満足できる性能だ。海軍仕様機の開発は進んでいるのか? 」
そう。本来の目的である空母への発着可能な航空機の開発はまだなのだ。
BMWは陸軍機の開発しかしたことがないため、開発が難航しているようだった。
技術本部長が開発陣をまとめる技術本部の担当官に質問した。
「現在試作段階ではありますが開発は進んでおります。来月あたりには試験飛行が可能となるでしょう」
「そうなれば海軍からも空母を用意しないといけませんね」
「そうだな、私から海軍長官へ話しをしておこう」
そう今後の方針を決めつつ、俺はいまだ飛行を続けている試作機を見上げ、呟いた。
「これからお前を始めとする後継機が日本の空を護る。高く、遠く……そしてより強く飛べ」
試作機は俺の呟きに応えるかの如く、その白く塗装された機体を煌めさせながら飛行を続けたのだった。
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