第二話
第二話です。淡々と進みます。
寺島軍医の様子を伺っていると、耳の後ろをカリカリと掻いたのち額に指を当てて考え始めた。
だいぶ困惑している様子だ。
「三好君だったね……失礼な事を聞くけど、君は日本人なんだよね?」
「はい。日本国民です。」
やはりここはちゃんと話すべきだが、どう切り出したものか。
「うーん。見たところどこにも異常はなさそうだし、かといって頭がイカれてるとも思えない」
ひどい言われようだな。
「少々私の手には余るかもしれないから、君の事を聞くのは少しまってもらっていいかな? 」
「はい、了解いたしました」
寺島軍医はなにかを感じ取ったみたいだ。
そういえば俺の着ていた戦闘服と認識票がない。
すでに確認済みだろうな。
それを見た上で、ちゃんと向き合ってくれている。
寺島軍医が担当医だったのが、幸運だったかもしれない。
~~~ 約一時間後 ~~~
ぼけーっと窓の外の風景を眺めているとドアがノックされた。
『三好君、寺島だ。 入るよ』
「どうぞ」
断る理由が無い。
おそらく寺島軍医は俺の処遇を判断できる人を連れてきたと思われる。
ドアが開き、第二種軍装を着た軍人が4名入ってくる。
最後の二人はドアの左右に分かれて立つ。
おそらく護衛兵なのだろう。
最初に入ってきた二人のうちの一人は背筋を伸ばし、どこか有無を言わせぬ雰囲気を漂わせる。
肩の階級章を見るとほんとんど金線、桜の星の数は二つ。
確か階級は中将閣下になるんだっけか。
もう一人はその将官の斜め後ろをついてくる。
おそらく副官だろう。
中将閣下がベットから1.5m手前あたりで立ち止まった。
(!!??)
悲しきかな階級世界。
すぐさま起き上がり敬礼をするが、すぐさま制された。
「いや、怪我人を無理させようとは思わん。 楽にしなさい」
俺はベットに上半身を起こした状態で礼をした。
「さて、私はこの呉鎮守府指令の野村だ。君の事は寺島軍医から聞いている。
少し普通ではないとね」
俺は寺島軍医を見る。
頷く寺島。
まさか鎮守府のトップがでてくるとは思わなかったよ。
まぁいい。ポジティブにいこう。
下手に伝える必要がなくなったのだ。
「はっ、自分は日本国 海上自衛隊・第3護衛隊群所属の三好二尉であります」
寺島軍医と同じ自己紹介をして、野村指令の様子を伺う。
「ふむ、さっぱりわからん。ひとつひとつ質問させてもらうが、いいかな?」
少し目を細め、人の目の奥……心を覗くように問いかけてくる。
「はっ、なんなりと」
背中に冷たい汗が流れる。
「まずは日本国とはなんだ?」
「はっ、日本国とは昭和21年……今から16年後になります。 昭和21年にアメリカとの戦争に負けて……「貴様ッ!!ふざけた事を抜かすか!! 」」
副官が激高し、俺につっかかろうとする。
「やめたまえ、戯言かどうかは話しを聞かないとわからんではないか」
すぐさま野村指令が仲裁にはいる。
すると副官は一礼をし、元の位置に戻る。
「では続けさせていただきます。」
一呼吸入れる。
「昭和21年にアメリカとの戦争に負け、アメリカ占領軍主導による憲法改正を行い、国名も大日本帝国から日本国へ変わったのが理由です」
野村指令の様子を見ると軽く頷いた。
少し喉が渇いたが、かまわず続ける。
「次に海上自衛隊です。これは敗戦後にアメリカ軍に軍を持つ事を禁止されました。
いくらアメリカ軍の保護下にあるとは言え、有事の際には対応できない事を憂慮した結果、専守防衛を目的として発足した組織です。」
「だから"自衛隊"と言うわけだね。なるほど、上手い言い訳を考え付くものだ」
苦笑を漏らす野村指令。
「そして自分の階級「二尉」はこの時代で言う「中尉」に相当します」
野村指令は腕組みをし、少し考えたのちに
「ようするにだ、君は未来の日本から来た人間と言うことになるね」
俺はうなずきながら
「そうなります。閣下」
「では、君の知っているこれからの事と、何故この時代にやってきたのかを教えてくれんか」
俺はひとつ頷き
「すいませんが水をもらえますか。少し喉が渇きまして……」
これから一時間を超える説明が始まるのだった。
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