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第二十四話

ちょっと筆の進みが悪くなってきてます。

なんか色々話しが抜けてるような気がするなー……

俺は報告書のページをめくると、日本政府(ドイツ大使館)とドイツ政府との交渉の総評が書かれている。


”吉田評・今回このようにドイツ政府と交渉が纏まったが、外交的には敗北したといわざるえを得ない”

”ドイツ国内の企業への斡旋と言う、無形な報酬はあって無いような物”


かなりの酷評だがまったくその通りだと思う

河内級戦艦は旧式とは言え、値切りに値切られた上で扶桑級の設計図をタダ当然で奪われ、見返りは企業への「斡旋」と言う微妙な約束だからだ。

吉田茂大使が対ドイツ政府への交渉に参加したのは、ドイツ政府との交渉がすでに大詰めに近づいている段階だった。その時点ので契約内容は、1.河内級戦艦の売却を日本帝国側が提案する半分の値段とする。2.扶桑級の図面の譲渡。と言うとんでもない条項だった。

慌てた吉田大使はすぐさま日本政府と連絡をとり、駐独大使の権限を剥奪。自ら交渉の席についたというわけだった。そこで引き出した条件として、ドイツ国内の各種企業の斡旋と言う物だった。


現在外務大臣が主導となって、駐ドイツ大使交代をリストアップしている。


さらに報告書のページをめくり、ドイツ国内企業との報告を読み始める。


”下名(駐独大使補佐:吉田茂)は下記の企業との会談に成功。”


そこには5社の企業名が書かれていた。

”BMW””ダイムラー””ラインメタル””クルップ””ティッセン”


BMWは二輪と自動車と航空機。

何気にBMWは航空機エンジンも作ってたりするわけだから、交渉相手としては得がたい物がある。

ダイムラーは後のベンツとの合弁企業の片割れだが、ヨーロッパ大手のトラック製造企業だ。

ラインメタルはドイツの軍需産業の筆頭といえるべき企業。主に砲の製造には定評がある。

クルップとティッセンは鉄鋼企業だ。後に合併するが、現在は独立した鉄鋼企業であり、それぞれの技術を上手く融合できれば、よりよい鋼材ができると思っている。


いかん。思考がお花畑にはいった。報告書の続きを読もう。


”BMWとの会談についてはこちらに好意的である。内容は現在国内の航空機のシェアをメッサーシュミットに奪われつつあり、研究・開発・試験を行える環境を望めるのであれば、共同開発も考慮する”との事らしい。

自動車・二輪車に関しても、日本で高速道路を建築すると言う話しを持ちかけた所、好意的に受け止められたようだ。


”ダイムラーは会談に成功したが、あまり色よい返事はもらえない状態である。原因としてはアジア市場への参入には消極的な姿勢が見受けられる”と吉田大使の見解だ。

これはちょっと困った。トラックはもちろんの事、戦車等に使うディーゼルエンジンの技術が得られない。

アジア市場の将来的な旨みを出し、合弁企業等で上手く技術を取得できないか?と思う。

ここは商工大臣と相談しなければならないだろう。


”クルップ・ディッセン、この二つの鉄鋼企業、前者は好感触、後者は無感触”とある。

つまりクルップに狙いを絞るべきだと吉田大使は報告書にそう記してある。

まったく問題無しだと思う。イギリスやドイツ・後年のアメリカなんかはの技術はとても素晴らしく、得る物しかないと思うからだ。


”ラインメタルは大型砲の技術を逆に欲しい”と打診があったそうだ。

現在日本は長門級の41cm砲の実用に成功しており、この技術が欲しいらしい。

俺的には技術交換はありだと考えている。たとえ41cm砲の技術を渡しても、砲の製造技術が上がればよりよい41cm砲が作れる。

つまり現在の41cm砲より、軽量・高品質、命中精度も上がるとなれば悪いことはでないと思う。

ま、吉田報告書にも同じ事が書いてあるがね。


以上が対ドイツ企業との一次接触の結果となり、10月27日の朝一から会合予定となっている。


そしてさらに報告書は続く、ここからは”極秘”とあり、この極秘事項には閲覧者が限られている。

その内容はある人物達の報告があげられていた。


俺は一通り報告書に目を通し、椅子の背もたれによりかかるように背を伸ばした。

椅子が軋むように悲鳴を上げるが俺は気にしない。ある人物達の報告書を上げてきたのは情報部の人間達だ。発足してからの期間が短いとは言え、よくここまでの情報をあげてきたと思う。

もしこの人達の招聘が成功したら、日本の技術力は格段に向上する事だろう。上手くドイツ国内の政治闘争に付け込めればいいんだが……


~~~ 昭和5年 10月27日 首相官邸 会議室 ~~~


「それでは、先日駐英大使から届いた、対独交渉の報告書を元に会議を始めたい」


内閣書記官長 鈴木大臣が司会となり、会議が開始された。


まずは吉田大使の報告書の内容の確認から。

これは現在の駐独大使の交代を確認しただけで、特にこれといった議論はでなかった。


ドイツ政府と決まってしまった物は仕方が無いと言う判断なのか、ドイツ企業との交渉をまとめる方に意見がでた


まず一番優先課題となる基礎工業力の一つである鉄鋼技術を早急に取得すべきだと俺が主張した。


「なぜ鉄鋼技術なのかね? 我が国は自動車や航空機の技術こそが必要だと思うのだが」


濱口首相が疑問の声を上げた。


「首相、エンジンにしろ艦を形付くる鋼材にしろ、基となるのは鉄鋼技術です。この鉄鋼技術の技術があがれば、より高温・高圧に耐えられるエンジンが作れます。より堅い鉄が作れれば、薄くても丈夫で軽い砲が作れるのです」


唸る首相。


「自動車にしろ、航空機にしろ鋼材等で作られます。まずは鋼材技術を確立すべきだと思います」


唸っていた首相が決意を固めた表情になり


「よかろう。まずはクルップの交渉を最優先事項とする。所で技術研修としてはどのようにしたらよいと思うかね」


「まずはこちらの技術者をドイツ側に送ると同時に、向こうの技術者をこちらに呼び寄せ、工場を建設する事になるでしょう」


商工大臣がそう提案する。

うん、たしかにそれがベターだろう。一刻も早く日本の技術を育成しなければならない。

だが、技術は一朝一夕ではできない。こういう場合の諺はなんだったっけ?


ドイツ企業との方針が一通り決まったところでいったん会議は解散となった。

しかし、俺と首相、外務大臣と統合作戦本部長・副本部長は官邸の応接室に移った。

そう、この面子にだけ極秘の吉田文章がまわっている。

この応接室で吉田文章の内容を確認と、今後の方針を考察する事になる。


「それでは始めよう」


首相がそう発言すると、俺は極秘文章の内容を話し始める。


「今回情報部を使い、ドイツ国内の科学者・技術者の動向を探っておりました」


俺が報告書をめくりつつ発言する。


「今回ターゲットとして調査させているのはアルベルト・アインシュタイン、リーゼ・マイトナー、ジェイムス・フランク物理学者とエルンスト・ハインケル博士、の4名です」


「誰だね?その者達は」


「これから説明させて頂きます、大臣。まずアルベルト・アインシュタインとはユダヤ系ドイツ人で物理学者であります。研究内容は相対性理論・光量子仮説等があり、この光量子仮説で1921年にノーベル賞を獲得しております。現在はベルリン郊外の別荘にて生活をしております。史実では彼はユダヤ人であり、ナチス党の迫害を恐れ、アメリカに身を寄せる事になりますが、そのアメリカで将来最終兵器とも呼べる兵器の基礎理論を生んだ事で有名となりました」


「その最終兵器とはどんなものだろうか」


首相が疑問を発してくる。


「原子爆弾と呼ばれる核爆弾です」

※ご意見・ご感想がありましたら宜しくお願いします。

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