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第二十三話

改めまして新年明けましておめでとうございます。

本年も宜しくお願いいたします。


今年の目標?といきたいところですが、目標が立てられないダメな子です。

鎮守府に戻る前に横須賀軍港ドックに立ち寄った。

因みに比叡は5号ドックで改装中で、一万トン級重巡洋艦は4号ドックで建造中だ。

比叡は練習艦に艦種変更された。改装内容は機関の縮小と4番砲塔の取り外しがメインとなっている。

しかし、先日の会議にて機関は他3艦と同等にする事になった。装備については現状維持のままとなり、例のバルバス・バウを取り付ける改装を現在計画中だ。


なので現在5号ドックに関してはあまり動きが無く、わりと静かな雰囲気となっている。


「しかし戦艦がこうやってドライ・ドックに入ってるのを見ると圧巻ですね」


俺がしばし呆然と比叡を見上げ、そう呟くと艦政本部長達が笑い声を上げた。

そりゃーね、現代に2万トンを超える軍艦ってのは、国内にはふそう級護衛艦くらいしかなかったからな。※1


こんなでかい軍艦の全容が見れるのはこの時代だけだろう。


「そうか、大尉の時代は戦艦と言う物はないのだったな」


「はい、航空母艦はもっとでかいですが、戦艦は自分が生まれる前には全て退役してましたから」


俺と艦政本部長の会話を聞いていた建築局長が怪しげな顔で見てくる。

あー、知らないんだわな。100年後から来た人間って事が。

それを見た俺と艦政本部長は苦笑をしあうのだった。


その後鎮守府に戻った時、鎮守府司令から統合作戦本部に至急出頭せよとの指示をもらった。

俺は艦政本部・建築局の方々に挨拶をし、バイクで統合作戦本部に急ぐのだった。


~~~ 昭和5年 10月18日 統合作戦本部 応接室 ~~~


「本部長、三好戻りました」


「うむ、ご苦労。こっちに呼んだのはこちらの方が三好大尉と話ししたいとの事なのでな。横須賀鎮守府に行ってた所すまないが、呼び戻させてもらった」


「いえ、向こうでの用事は済んだので大丈夫です」


俺は鎮守府からバイクをかっ飛ばし、急いで統合作戦本部まで戻ってきた。

この時代はまだ車はほとんど走っていない。だから飛ばせるといえば飛ばせるんだが、道を横断する人が多くけっこう危ないのだ。信号もまだないしね。

そういえば俺に客って誰だ?言われて見ればソファーに座っている中年の方がいらっしゃった。


「始めまして、私は帝都大学助教授の坂田と申します」

一枚の名詞を差し出され、俺は受け取る。

たしかに帝都大学 助教授を書かれている。


「実は9月中ごろに海軍さんからある繊維を調べてもらいたいと依頼を受け分析をおこなっていたのですが……」


と脇においてあった鞄から見覚えのある


「それは……」


そう、俺がこの時代にくる時に来ていた戦闘服だ。

紺色の作業服みたいなのが上下にライフジャケット。そして鉄帽。


「そう、大尉が最初に着ていた服だ。珍しいので帝都大学で分析をしてもらっていたんだよ」


俺はその戦闘服を見て懐かしいと思った。よく考えてみればまだこの時代に来て2ヶ月とたってないのにだ。

それだけ濃密な時間をすごしたと言うことか。と苦笑を漏らすのだった。


「この一式の繊維を分析させてもらっていたのですが、これはいったいなんです?とても見たことの無い繊維が使われていますが……」


ものすごく悔しそうな顔している。

そりゃそーだ。戦闘服一つにとっても石油で作った合成繊維のはずだし、鉄帽も陸自と同じケブラー繊維のヘルメットに置き換わっている。


「はぁ。鉄帽以外は2029年に支給されていまして、鉄帽は……たしか2023年に更新されたんだったけな? 」


ここまで言って助教授を見ると唖然としている。


俺と本部長は目をあわせ、本部長が説明を開始する。


「坂田教授、三好大尉は今から100年後の日本からタイムスリップしてきたのですよ。100年後の技術がこの服に使われていると言う認識でよいかな? 大尉」


「その通りといいたいところですけど、その戦闘服の素材や鉄帽の素材に関しては、私がいた時代からすでに50年以上前には発明されており、一般的な物となっている物でした」


「なるほど……、本来ならば大尉にこれをお返ししなければいけないと思うのですが……」


言いづらそうに聞いてくる坂田助教授。目の前にこんな未知なる物があれば、研究者魂に油を注ぎ込んでいるようなもんだ、と俺は思う。


「いえ、この戦闘服一式は差し上げます。これで我が国の技術が向上する事は喜ばしい事だと思うで」


「いいのかい? 大尉」


「はい、構いません。すでには自分は帝国軍人としての覚悟を決めております」


「すまんね大尉」


「大尉ありがとう。有意義に使わせてもらいます」


先が本部長、後が坂田助教授だ。

実際この戦闘服を着てもなにかあるわけでもない。寧ろ素材の技術を確立してもらい着心地のよい衣類を開発してもらった方が建設的だと思うわけだ。

ましてや通常着る服でもないしね。


坂田助教授が統合作戦本部を辞し、本部長と二人になったことをきっかけに相談事を持ちかけてみた。


「本部長、一つ相談事があるのですが、よろしいでしょうか」


この後、本部長と1時間程話しこむのだった。


~~~ 昭和5年 10月25日 統合作戦本部 執務室 ~~~


今日は本部長より渡された報告書に目を通している。


差出人は駐英大使・駐独大使補佐:吉田茂


つまり対独企業の交渉の進捗状況だ。

報告書は10月20日までの状況がかかれている。

まず、ドイツ政府に対して河内級の戦艦の売却がほぼ確定した。しかしこちらの希望金額の6割程度の金額となったが。

希望金額が届かなかった理由としては、予想通りの財政難が上げられるのと、こちらがドイツ国内企業と接触を図っている事に起因する。

ドイツ政府としては、優秀なドイツ企業の技術を出したくないのが本音だったが戦艦は欲しい、しかし金も無い状態だった為、戦艦の購入金額を減らす変わりに各企業への斡旋をしてくれるという事で折り合いがついた事となった。

この対応の謝礼として、扶桑級の初期設計段階の設計図を譲渡する事になった。これでドイツの建造技術も進歩するだろう。


ここまでが我が国とドイツとの報告書だった。

ご意見・ご感想ありましたら宜しくお願いします。


※1ふそう級護衛艦は2012年段階で計画されている22DDH19,500トン級護衛艦をこの物語の便宜上「ふそう級護衛艦」としています。

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