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第十八話

ちょっと短いです。


いやぁ、子供の頃にもっと国語力の勉強しとけばよかったなぁ。

「まず、金剛型以前の戦艦……河内型2隻、敷島型4隻、富士型2隻を海外に売却し、金剛型以降の戦艦の改装費を稼ぎます」


「ん? 大尉、扶桑と金剛は今改装中だ。それに長門も改装するのかね? 」


艦政本部長が疑問を投げかけてきた。

たしかに扶桑型と金剛型は第一次改装を行っている最中だ。

金剛型に関しては一隻を実験艦に変え、改装をしてもらう予定でいる。


「近代化技術が整い次第改装いたします。金剛型の一隻は今からお渡しする技術案にそって改装していただきたく思います」


艦政本部全員・各艦隊司令部に金剛型改装案の資料を配る。

俺はその間、改装案への説明資料を用意する。


「大尉。なんだね、この「バルバス・バウ」と言う技術は? 」


今尋ねてきたのは艦政本部の……平賀中将だ。

これは気合を入れて説明しないと感情論をふっかけられそうだ。


「はっ、この「バルバス・バウ」と言う技術ですが、1911年にアメリカの造船学者、D.W.テーラーが発明した技術です。このバルバス・バウとは日本語的に訳すと、球状船首と言う事になります」


俺はここで図解を示した資料を黒板脇に貼り付ける。

それを棒で示しながら説明を開始する。


「まず船とは水面を掻き分けながら進む物です。なので船首はさながら刃物のように鋭角な形をして水面を切るようにしておりますが、その水面を掻き分ける際に波が発生します。この波を曳き波と呼び、波を生み出すためのエネルギーの損失が船の推進時の抵抗となります。この抵抗を造波抵抗と呼びます。これを小さくすることは、航行速度を高め、燃費を改善する重要な要素となります。バルバス・バウの原理ですが、水面下の前方に突き出した……このような突起した構造を作り、水面での船首が水を掻き分けるより前方にあらかじめ波を生じさせます。そして水面上にある船首が波を掻き分ける前に、バルバス・バウで生じた波と逆位相となり、それぞれの山と谷が打ち消しあうことで波を小さくなります。結果、造波抵抗を最小化して燃料効率や速度の向上を図る事ができる理論です」


しきりに頷く造船技術者。


「これを現在改装している金剛型戦艦に導入しようと言うわけか」


「はい、しかし4隻全てこれにするのは現在の技術力ではリスクが伴います。まず1隻をバルバス・バウに更新し、技術力の蓄積と効果を確認すべきだと自分は考えます。それと現在建造中の一万トン級重巡洋艦にも当てはめたいのですが……」


「……よかろう、2番艦を変更するようにしよう」


これでバルバス・バウへの改装案が承認され、試験艦として金剛型2番艦比叡、一万トン級2番艦が対象となった。


「次に艦のエンジンについてですが、現在は石炭と重油缶があります。これを重油缶に一本にし、蒸気タービン機関のさらなる性能向上を行って頂きたいと思います。理由は後ほどお話しします。今日は民間の三菱・播磨・川崎各造船の方をお呼びしています。機関は協力して開発して頂きたいと思います」


「それは艦種全てにおいてでしょうか」


民間の技術者の一人が挙手しながら問うてくる。


「はい、全ての艦種です。いずれ性能が上がれば民間の船にも転用ができます。決して無駄ではありません」


この「民間に転用される」と言う言葉で納得したのか、不満はなさそうな感じだ。

これれ蒸気タービンの開発は進むと思われる。

むしろ蒸気を作り出す缶の性能の方が重要と判断しているのだが。


「続いては建造の際の溶接技術の確立。これは鉄鋼会社と共同で技術確立をおこなわければなりませんが、今後艦の強度に大きくかかわってくる事や、建造期間にも影響がでてくるはずです」


「ワシは今でも溶接を取り入れておるが、リベットより強度が落ちるとしか思えないがね」


異議がでた。

平賀中将だな。


「おそらく鋼板と溶接剤の相性が悪いのだと思います。自分は専門家ではありませんので詳しくは言えないのですが、一言にも鉄と言ってもいろんな元素が混じっているのです。それを的確な材料で溶接してやらないと上手くくっつかないと言う資料を見た記憶があるのです。現在帝国はアメリカよりくず鉄を購入しており、自前では鉄を精製しておりません。まずこれをどうするかを国レベルで考えなければいけないかと思います」


「なるほど、そこまで説明してくれるならば納得がいく。ワシの方でも調査をしてみよう」


「はっ、ありがとうございます」


なんと、癇癪平賀中将の協力を得られた。

これはさらによい軍艦の建造ができる可能性ができた事を意味しないか。


「この三点の技術向上により、戦艦30ノット以上の速度を出せるようにいたします」


30ノット以上。

ざわめく会議室をよそに俺はその数字を反芻するように考える。


「戦艦で30ノットも出せるのかね」


ふいに声をかけられた。

声の方に視線をやるとそこには第一艦隊塩田参謀長がいた。


「出ます。出せないと戦艦は本当の意味で対地攻撃への砲台としてか役に立ちません。30ノットの高速性を維持できて、初めてその戦艦の分厚い防御力とその巨体が役に立つのです」


そう、アメリカ海軍の正規空母や最後の戦艦・アイオワ級等は33ノットを記録していたと言う資料がある。実際はもっと出ていた可能性もある。今はすべて退役しているから本当かもしれないが。

なので、第二次世界大戦に入るまでに、金剛級と長門級は30ノットは出せるようにしておきたい。

と戦艦の説明が一通り完了した。


「ふむ、君の提案は了解したが、扶桑級と伊勢級の話しがないが、どうすべきなのかね? 」


はい、ごもっともな意見です。艦政本部長。


「あえて議題にあげてなかったのは、正直扶桑級と伊勢級はどうすべきなのか悩んでおります。扶桑級・伊勢級は砲塔を6つ積んでおり、36センチ砲を12門と攻撃力に関しては申し分ないのですが、問題速力の遅さと防御力の低さです。砲塔を6つあると言う事は、危険箇所が長門級や金剛級より多く、速度も20ノット強しかでません。これでは今後の活躍はしづらいと自分は考えておりますが、どうも現状では後一歩な感が否めません」


俺が現状このような状況だと打ち明け、艦政本部員も一言もでない。

その沈黙した状況を打ち破ったのは伏見宮閣下だった。


「ではこうしないか? 扶桑級・伊勢級を鉄くずにするのはあまりにももったいと思う。そこで大尉が満足いく改装ができるだけの技術が備わるまで、この4隻は練習艦として使うとはどうかね」


「ふむ……大尉はどうかね? 」


「自分はそれに依存はありません。では扶桑級・伊勢級に関しては宿題ですね」


「そういう事になるかな? せいぜい励みたまえ」


伏見宮閣下がこう締めくくり、笑い声が聞ける雰囲気になり小休止となった。

※ご意見・ご感想ありましたらよろしくお願いします。


追記12/05

いまさらながら誤字を発見orz

専門化→専門家


追記12/25

金剛級の対象改装艦を霧島から比叡に変更

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