第十六話
ぬわ、キリのいいところで止めたらえらい短い事に……
次話も書き始めてある程度書けて来ているので、近いうちにアップできるかも?
「戦車砲は海軍の方で用意ができますよ」
俺の言葉に呆然とする技術士官。
この技術士官は元陸軍出身であり、俺の言った意味をまだ理解できていないようだった。
「大尉、海軍で採用している艦砲は12センチ以上になるが……」
海軍出身の技術士官が疑問を投げかけてくる。
「いえ、12センチ砲ではありません。砲戦車で使えるかもしれませんが、主力戦車としては重過ぎる砲です。8センチ高角砲を利用したいと思います」
「……四〇口径三年式八糎高角砲か」
「その通りです、海軍はこの四〇口径三年式八糎高角砲は1916年に採用しており、すでに運用実績もあります。これを元に開発する事で開発期間の短縮を狙います」
「なるほど!それはこちらで検討をしよう」
がぜんやる気がでてきた技術士官と陸軍担当者達。
後は俺が何もしなくてもやる気を出した軍・民間の技術者達の熱い議論が交されるのであった。
~~~ 昭和5年 10月15日 国防省 統合作戦本部長室 ~~~
「大尉、一昨日はご苦労だったね。報告書は読まさせてもらったよ」
「なかなか興味深い会合だったようだな。吉田中将」
「まったくです、うちの部下もやる気満々で今日も朝早くから図面と格闘していますよ」
上から本部長・副部長・技術部長の順だ。
当然ニヤニヤしながらこちらを見ている。
なんでかって質問しても罰は当たらないだろう。
「……お三方、なにか楽しそうですね」
聞いてみた。もう後には戻れない。
「できる部下を持つとこうも仕事が楽しくなるとは思わなかったよ」
「そうですな。最初はこの小僧としか思わなかったのに不思議なもんですな」
本部長と副本部長はお互い頷きあっている。
うん、ほっとこう。俺は吉田中将に技術部の様子を聞いてみた。
「吉田部長、技術部の様子はどうですか」
「前に君から貰った報告書を元に若い連中に研究させている。あの報告書を見た連中は元陸・海と言う肩書きがなかったかのような雰囲気になってるよ」
「それは良いことですね」
俺と吉田中将と一つ頷き、話しを続ける。
「報告書に記載させて頂いています各分野の技術会合の件はどうなっていますか」
本部長が吉田中将に目で合図をしている。
「それは現在、統合作戦本部名義で各分野の企業・大学研究機関へ目的と会合の案内を発送しているところだ。年内には一回目の会合が開けると思っておるよ」
こうして大日本帝国の基礎技術の開拓が始まったのだった。
~~~ 昭和5年 10月16日 国防省 海軍会議室 ~~~
この日は海軍の艦隊編成や軍艦・装備についての会合を開く日となっており、俺は旧海軍省へ来ている。
会議室へ向かう途中の廊下にて、見知った人物が歩いていた。
「山口中佐」
俺は敬礼をしながら山口多聞中佐に近づく。
「お、三好……大尉になったんだな、昇進おめでとう」
簡単に答礼をしながら挨拶を交わす俺と中佐。
「ありがとうございます。昇進と言ってもあまり実感はないですね。所で中佐も会議に? 」
「そうだよ」と頷く中佐。
「私は今、連合艦隊・第一艦隊の参謀を拝命していてね、今回の艦隊編成の会合に出席せよと命令を受けているのだ」
「なるほど」
「時にこの会合は大尉の主催だというのだが、本当かね? 」
俺は苦笑いをしながら「まさか」と言うしかなかった。
「もちろん会合の主催は統合作戦本部ですよ。自分は技術部員として出席する予定になっています」
「……大尉、嘘はいかんな、嘘は。正直に言いたまえ。君がこれだけの面子を集めるように言ったのだろう」
俺は肩を竦めただけにした。
そのしぐさに山口中佐は「やれやれ」と言う表情をしただけだった。
「そういえば大尉は今どちらに宿をとっているので」
「今は陸軍の宿舎で寝泊りしてます。いかんせん宿無しな身分なので」
俺は軽く笑いながら答える。
「そうか、なにかと不便だな」
「いいえ、とんでもない。同じ敷地内に出仕先があるのです。楽なものですよ」
気の毒そうに尋ねてくる山口中佐に、俺は明るく答えるのだった。
なにせ、海上自衛隊に所属していたときは年の半分は護衛艦で暮らしていたのだから。
その答えに山口中佐も笑って答える。
「そうだね。我々も軍艦に住んでいるようなものだからな。さて、会議室に到着だ。また後ほどな」
簡単な挨拶を交わし、それぞれの席に向かう。
先にきている技術部の士官と最終的な打ち合わせをおこない、会議の開始が合図されるのであった。
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