第十四話
リハビリ更新です。
そういう訳かわかりませんが、短いです。。。
~~~ 昭和5年 10月7日 国防省 空軍長官室 ~~~
今日は空軍長官・次官との会合がある日の為、海軍内に設けられている空軍長官室にいる。
どうも山本次官が空軍発足にあたって空軍のあり方を相談したいとの事らしい。
俺的には「まさかあの理論にたどり着いたと言うのか……」とか内心びくびくしながら長官室のソファーに座っている。
「大尉、今日はご苦労だね。忙しい中時間を割いてくれた事を感謝するよ」
と長官に挨拶される。
「いえ、これが自分の役割と考えておりますので問題はありません。お気になさらずに」
俺は軽く一礼をしながら答える。
「さて、さっそくだが大尉。これから航空機はどのようになるのだろうか」
山本次官が身を乗り出すように質問してくる。
「確実に主力兵器になります。制空権を得ればより有利に戦えると考えます」
あごに手を当て、考え込む次官。
「制空権……制空権は必要なのかね?私としては敵に打撃を与えるべく、一機でも攻撃できる機をそろえた方がいいと思うのだがね」
「それは対戦闘機は不要をお考えですか」
「極論を言うとそうなるかな」
なんと。やっぱりこの理論にたどり着いていたか。
これは片っ端から折ってやる必要があるな。
「どうして戦闘機は不要とお考えになったのでしょうか」
山本次官は一冊のレポートを俺に差し出した。
「これはね松永中佐を言う人物が書いた航空兵器に関する報告書なのだが、まずはこれを読んでくれたまえ」
俺は『戦闘機不要ト考察スル』と書かれたレポートをめくり始める。
ふむ、なるほど大型爆装機による制圧と言う結論にいたっている。要点はこんな感じだ。
・現状戦闘機は速度・航続力に難があり、又武装も貧弱である為航空機の撃破は難しいと判断せざるをえない。
・現在開発中である大型双発機であれば単発機からの追撃は受けにくい。又後方機銃を備え付ければ撃退も可能である為、戦闘機の護衛が不要と考える。
とかだ。
俺はレポートを読み終え、どう論破しようかと考えている声をかけられた。
「どうかね大尉」
「はい、この大型攻撃に多数の武装を載せ、戦闘機を寄せ付けないと言う構想ですが、実際次の大戦末期でアメリカ軍がとった戦法の一つでありました。ただしこれには条件がついてでしたが」
条件と言う言葉を聞いて小首をかしげる長官と次官。
「その条件とは、日本機が到達できない高高度を飛行できる事、12.7mm機銃程度では落とされない防御力が備える事でした」
「なん……だと……」
そう終戦までに日本軍機は、1万メートルに到達できる機が少なかったのだ。
「その『攻撃されない』『攻撃されても十分に防ぎきれる』条件を揃えて、初めて『戦闘機不要』が成り立つのではないでしょうか」
「むぅ……」
唸る次官。
「もし我が国がそのような重爆撃機を開発できたとしても、アメリカは必ず迎撃機を開発してきます。あの国はそういう国なのです、それならばいかに制空権を確保できるか。確保する為にはどのような兵器が必要かを考える必要があります。戦闘機不要と言うは妄想でしかありません」
呆然とする長官と次官
「……君はどんどん辛口になってくるね」
俺は無言で頭を下げるのだった。
一度休憩を挟み改め兵器としての航空機の案を議論し始めた。
「まず空軍の編成案になるのですが、空軍は陸上機と艦上機と分ける事となります」
二人が頷くのを待ってから続ける。
「陸上機と艦上機は違う部分はありますが、発動機・武装・胴体の設計は一つとして開発すべきかと思います。これは予算の削減や開発期間の短縮に繋がるはずです。武装に関しても統一した武装を搭載すべきでしょう。補給の容易さに繋がります」
「うむ、これは空軍発足についての一つの提案だったね」
長官が頷きながら答える。
「はい、我が国の技術者は優秀ですが多くはありません。それだけ開発するものを限定せざるを得ないのです」
「それに関しては今度、国内の航空機産業の技術者達を呼んで会合を持たないといかんな」
次官が腕組みのままそう洩らす。
「そうですね、発動機・機体設計はもちろんの事ですが、航空機を作る上ので素材の開発をしないといけませんからね」
素材と言う言葉に二人が見合わせる。
「素材? 素材とはなんだ?」
今度は俺が呆然とする番だった。
「……まさかお二人は発動機と完成された飛行機の形しか頭になかったとか……ですか」
俺は長官達を見る。
長官達は目を合わせようとはしない。
三人に沈黙が訪れる。
しばらく時計が刻む音しかしなかった。
~~~ 昭和5年 10月13日 国防省 統合作戦本部 自室 ~~~
その後、それはもう説教に近かった。
戦艦や自動車・戦車を作っている物はなんだと言う話しから、エンジンや砲の話しになり、しまいにはそれを作る『鉄』の話しにまでなった。
例えば、戦艦であれば何故、舷側や砲塔を鉄鋼で包むのか。
こんこんと1時間程説明をした所で「う、うむ……よくわかった」と額に冷や汗を流しながら答えさせた。
これは予定を早めて、技術本部主体で各研究者と会合を開く必要があるな。
と、今日の報告書をまとめるのであった。
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