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第十三話

~~~ 昭和5年 10月1日 国防省 統合作戦本部 ~~~


「本日付で統合作戦本部が設立され、本官が統合作戦本部長に就任する事になった末次大将である。統合作戦本部は陸・海・空軍の戦力を効率的に運用する為の作戦を立案する重要な部署である。貴官等の力を発揮してもらいたい。」


新たに作られた統合作戦本部の会議室にて、末次本部長の挨拶が行われている。


満州との交渉はかなり上手く行っているようだ。

満鉄は満州に売却する確約は取り付けたが、その金額を交渉中との事だ。

帝国は高く売りつけたい。満州は安く買いたい。当然だろう。


安く売却する場合は、満州に眠っている資源の開発権利を貰い受ける交渉をしているはずだ。

これは満州に油田が眠っている事に起因している。

"満鉄がこちらの希望額で売れなかった場合は、満州の油田を貰い受ける"と言う案を総理大臣に話してあるからだ。

その他の資源の融通も受けられるように交渉をしている。


満鉄売却交渉が終われば、改めて日満同盟について確認がされる予定となっている。

帝国は第八・九師団を満州に配備予定だ。これを基本防衛兵力として満州と協議をつめる事になるはずだ。


中国に関しては、中国国民党の蒋介石と会談。

中華民国に対して再度支援・同盟を持ちかける事になり、対共産党に対し共同戦線を張る事で基本的に合意できそうな方向になっている。

後はどれだけアメリカの介入を排除できるかによっている。


「……以上で私の挨拶を終わらせてもらう」


「次はワシだな、統合作戦本部、副部長の武藤だ。ワシは情報部長を兼任をする」


そう、情報部長には統合作戦副部長の武藤大将が兼任される。

理由は情報戦に強い将官がいなかった為……なのだ。

副本部長に石光真清中佐が就任、実質情報部を取り仕切る事になる。


史実であれば石光真清は少佐で軍を引退している。

経歴は満州やロシアなので諜報活動に従事していた……とあり、日本の軍の中では数少ない熟練の諜報部員なのだ。

大正17年に隠居しているが、情報部設立に伴い復員していただいた。

この経験は非常に貴重であり、情報部の運営・管理には必要と判断したからだ。


「……であるからして、この統合作戦本部は我が大日本帝国軍の中枢機関である。皆の奮闘を望む」


本部長・副本部長の長い挨拶が終わり会議は終了、業務を開始した。

俺は本部長室に向かい、本部長と副本部長に挨拶を行う。


「本日付で統合作戦本部参謀を拝命いたしまた三好大尉であります。本日からよろしくお願いいたします」


俺は本部長・副本部長に敬礼をする。


「歓迎する。大尉の千里眼を期待しているよ」


答礼する本部長。


「この組織変更でずいぶん働かせられたからな、これから働いてもらうぞ」


と、副本部長。

そのニヤリと笑うのやめてくださいお二方。


「はっ、年内は何もないと思います。しばらくは情報部の育成に力を注ぐのがよいかと思います」


「そうだな、まずは情報が必要だ。石光中佐に指揮をさせるから大丈夫とは思うが、大幅に増員せねばならん。」


「うむ、情報部は副本部長に任せる。よい情報をあげてくれ」


うん、この二人はなかなかいい雰囲気だ。こうやって協力して行く事が大事だ。


「後は統合作戦本部の制服ができるのが楽しみですね」


「そうだな、この歳になって違う軍服を着る事になるとは思わなかったなぁ」


とぼやく末次大将。


「まったくだ。ここはワシらみたいに海軍と陸軍が入り交ざって仕事をする場所だ。お世辞に海さんとは仲が良いとは言えないしな。新しい軍服は意識を変えるのによかろう」


相槌を打つ武藤大将。

統合作戦本部設立に伴い、作戦本部は各軍と違う組織になった。

そこで配置換えをされたとはいえ、元の軍服のまま仕事はしづらいだろうと判断した軍上層部は、統合作戦本部用に新しく軍服を作ることにした。

まだデザインすらできていない為、まだ元の軍服のままなのだが。

なので統合作戦本部と空軍は両軍の軍服が混ざった妙な状態となっている。

まぁ、コストはかかるが軍縮も同時に行っているから予算は大丈夫だろう。


「では本部長・副部長。自分はこれから国防大臣へ挨拶に行ってまいります。その後は陸軍長官、海軍長官、空軍長官に挨拶に伺いますので、本日は一日留守となります」


「うむ、了解だ。今日は特に業務があるわけでもない。そのまま直帰してもらってもかまわない」


俺は書類整理を始めた本部長に今日の予定を報告した。どこでもそうだがホウレンソウは大事だ。


「はっ、それでは本日は失礼いたします」


俺は敬礼をし、本部長室をでた。


現在帝国は水面下で満州・中華民国以外のアジア首脳・有力者も接触を図っている。

国としてはタイ王国。タイ王国は古くからの日本の同盟国であるから、より友好を深める為の確認をおこなっている。

有力者としては英領インド・英領ビルマ・英領ニューギニア(現パプアニューギニア)・英領マラヤ(現マレーシア)・仏領インドシナ半島(現ラオス・カンボジア・ベトナム)・蘭領東インド(現インドネシア)・米領フィリピンの有力者と接触している。

後、チベットのダライラマ十三世や、ウイグル・モンゴルの有力者を探しており、外務省とそれを補助する陸軍・海軍は大忙しらしい。


アジア各国の独立は日本アメリカと戦う上で必須事項となる。

そんな事を考えながら旧陸軍省に設けられた国防省大臣室へたどり着き、受付で官位・氏名を伝え大臣に面会を求める。

あらかじめ面会を申し込んでいた為、すぐに呼ばれ大臣室に入ると、それぞれの次官もいた。


「よく来たね中尉、いや大尉に昇進したんだったな」


答礼をしながら財部次官が話しかけてくる。


「はっ、ありがとうございます、財部次官。国防大臣閣下、始めまして。自分は統合作戦本部参謀の三好大尉であります」


改めて大臣に敬礼をする。


「こちらこそ、国防大臣の岸だ。これから大尉にはなにかと助けてもらう事になると思う。よろしくお願いするよ」


俺は大臣と握手を交わし、応接用のソファーに着席した。

しばらく国防大臣・国防次官と、帝国の国防について話し合いをした。

内容はと言うと。

・常にアメリカ、ドイツ、ソ連、中国共産党の情勢を把握しておくこと。

と言う事だ。しばらくは国際情勢的に大きな変化は無く、いかに国力を蓄えて置くかがミソとなる事を大臣へ話した。


「まずは国防省の体制をととのえる段階です。中核となる情報部も設立したばかりです。慌てる事はありません」


「そうだね。私もこれから勉強しなければならいない事がありすぎます。若輩の私を助けていただけると幸いです」


次官達が一斉にうなずく。


「いえ、自分が一番の若輩の身ですよ」


と肩を諌めながら言うと「そうだったね」と笑い声がでるのだった。

国防大臣への挨拶後、陸軍長官・海軍長官・空軍長官に挨拶を行った。

まぁ、一度顔を会わせてるし、それなりに意見や主張・今後の軍の在り方を会議内で話し合った後なので、終始和やかな雰囲気で会談は完了した。

※ご意見・ご感想お待ちしております。

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