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第十一話

やばい、ちょっとぐだぐだになってきました。

気合入れなおさないといけないですねー。

そう、第二次世界大戦終結までのドイツは困ったちゃんなのだ。

第一次世界大戦の敗戦にて多額の負債をかかえ、国自体が絶望してしまった時のパンドラの箱がドイツ労働党だったんじゃなかったのか。

ドイツ労働党は事実、国を富まさせた。独裁政治と戦争と言う手段を使って。

その反面、独裁政治による弾圧もあってけっして国全体が幸福になったわけではないのでので、その評価は分かれるだろう。


「ドイツ労働党が政権を取得したドイツは世界的に孤立していく事となります。そこで我が国はドイツ労働党の思想の一つである「反ユダヤ主義」に目をつけ、ユダヤ系ドイツ人の技術者を今から日本に呼び寄せるのです」


「技術者を?」


外務大臣の幣原大臣が尋ねてくる。


「はい。技術者を招聘し技術を開発、日本人技術者の育成をさせるのです。ドイツは自動車大国です、これから自動車技術は必要な技術となります。よい自動車が作れれば国内流通は速度が上がり、活発になります。又、自動車技術が上がれば戦車等の開発も容易になるでしょう、これは航空機にもあてはまります」


「なるほど」


大きく・深く頷いたのは商工大臣の俵大臣や陸軍・吉岡少将。


「すぐにこの件を研究させるようにしよう、我が帝国の国益に繋がる事だ」


総理大臣と外務大臣が頷きあっている。


「しかし、帝国も来年に満州の地から波乱がおこります」


俺は徳利を置き、姿勢を正す。

この話しも会議の場で言うべき案件の為、緊張感を全員に持たせる必要があるからだ。

俺の態度を見た政府・軍の重鎮はその空気を読み取ったのか、こちらに注目する。


「史実では1931年、満州の権益を狙った関東軍が満州で満鉄爆破事件をおこします。これを機に満州国を傀儡国家として設立。国連から非難声明を受け、日本はドイツと共に国連から脱退する事から第2次世界大戦が勃発いたしました」


「すると我々は張作霖を暗殺した事が間違っていたと言うのかね?」


陸軍・金谷大将が単刀直入に聞いてくる。


「その通りです。張作霖を日本が暗殺した事は息子の張学良は知っており、現在の通り反日政策をとっております。これが悪い方向へ向かう事を修正する目的とした関東軍の謀略が敗戦のきっかけを作ったと言っても過言でありません」


関東軍司令の菱刈大将を見るとしきりに額の汗を拭いている。

これはフォローを入れておかないと後が怖い。


「なにも菱刈大将の責任ではありません。この事件は関東軍将校の独断だったとも言われております」


「ど、どうすればよいかね?中尉」


菱刈大将が藁にもすがる表情で尋ねてくる。


「関東軍は先の会議で解体しております、これがどう影響するかはまだわかりませんが、満州をもう一度日本に近づけたいと思います」


「どうややってだね?張学良の日本への不振はかなり強いぞ?」


と濱口総理。

前の総理大臣が張作霖を引き立てた事は知っているのだろう。


「満鉄を満州に返します」


俺のこの言葉で何度目かの静寂が訪れたが、俺は問答無用で続ける。


「もちろんただでは返しません……売却と言う形で満鉄を返します。満鉄の売却、これは張学良へ日本が本気で支援するという意思表示をするのです。」


「し、しかし満鉄は今の日本の大事な収入源だぞ?」


商工大臣・俵大臣の声が震える。


「俵大臣、目先の利益より、長期的な利益です。満州でいくら利益をあげようと、満鉄は現在爆弾をかかえているのです。満州国・満州権益を狙う中華民国・欧米の各国。こんな爆弾を抱えている満鉄は高値で売れる時に売ってしまい、その資金で国内の改造するのです」


考え込む総理・外務・商工大臣と菱刈大将。


「満鉄はトランプで言うジョーカーなのです。利益をもたらしますが、同時に破滅へと導くカードなのです」


しばらくの沈黙が場を包む。


「……よかろう。ワシがその交渉にあたろう。先代の尻拭いみたいな物だからな」


濱口総理大臣が覚悟を決めた声で答える。

この総理大臣の発言で、この長く続いた一日が終了した。


~~~ 昭和5年 9月10日 海軍省 ~~~


一夜が明け、俺は海軍省大臣室へ出仕した。


「おはよう中尉。昨日は君にしてやられたよ」


開口一番財部大臣にこういわれる。

昨日は日本とってはおおきな改革の道標となった。決定した案件は今日から準備期間に入り、施行は10月1日からとなった。ちょうど下半期の改革になるからちょうどいいとか。

だけど残り20日くらいしかないけど、大丈夫なんだろうか。

きっと政府・陸軍・海軍は大忙しになる事だろう。


「いえ、閣下にもご英断頂き感謝しております」


深く一礼し、感謝を表す。


「海軍はそれほど大きな組織変更はないが、陸さんは大変だろうな」


「そうですね、海軍も海上警備隊の設立に伴って、誰を長官にするのでしょう?」


そう、海軍はここが重要なのだ。

海上警備隊、現代では海上保安庁の位置づけになる隊だが、その活動範囲は広い。

その事をちゃんと理解できる人物でないと、警備隊の運営は難しいだろう。


「まだ人選をしていないからなんとも言えないな。中尉のお目にかなう人物がいるかどうかを調査せねばならんかな」


と半分ジト目で言われる。


「あはははは……」


俺は冷や汗を流しながら、乾いた笑いをする事する事でごまかすことしかできなかった。


「まぁいいだろう。中尉には組織が整った後に海軍の軍備について色々考えてもらう。そのつもりで職務に励んで欲しい」


「はっ、ご期待にかなうよう職務に励みます」


俺は大臣に敬礼をし、海軍省内に借りた部屋へ向かうのだった。

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