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第九話

まだまだ御前会議は続きます。


ぜんぜん戦争のせの字も見えない……

山本五十六。史実の日本では三指にはいる有名な帝国海軍の指揮官。いち早く航空機の有効性を認め、大東亜戦争を指揮した男……か。

一点問題はあるがまぁ、まだこの時点であの理論はまだ世にでていないだろうから大丈夫だろう。

またこの人物に活躍してもらう為にも今をがんばらないといけない。


「はっ、現在海軍にて開発している戦闘機はご存知でありますか?」


「たしか中島が開発している吉田ブルドッグ機だったかな?」


「その通りであります、この中島飛行機が開発している物ですが、再来年に正式採用のめどがつきます。その緒元は空冷9気筒エンジンを搭載し、580馬力、最大速度292km、武装は7.7mm機銃2丁を基本武装とします。」


航空本部長と山本五十六少将はなにやら資料を見ながら頷いている。

おそらく次期艦載機の資料であろう。


「陸軍でも現在戦闘機を開発をしていると思います」


陸軍の航空本部長が頷く。


「緒元は空冷9気筒エンジン、520馬力、最大速度320km、武装は7.7mm機銃2丁となっているはずです。」


陸軍航空本部長も資料を見ながらしきりに頷いている。


「すでにお気づきの方が何人かいらっしゃいますが、海軍と陸軍の開発している戦闘機の緒元はほぼ同じなのです。武装に関してはまったく同じ。これでは2重開発になってしまい予算の無駄です」


予算の無駄と断言してしまった俺の言葉に固まる両軍の航空本部長。


「しかし、いくら同じ性能といえども、陸軍と海軍の戦闘機ではだいぶ違ってくると思うが? 」


するどい質問がでた。さすが山本少将。

たしかに通常の戦闘機と艦載機の違いはある。

艦載機は空母からの離艦・発艦ができるように浮力を持たせた機体設計となる。

通常の機体は速度を重視した設計となる為、翼面積が艦載機より小さく設計される。

大きくはこの差なのだ。


俺はこの差を説明し、それでも空軍を創設すべきだと主張した。


・パイロットの育成を一元管理。

・艦載機パイロットは適正を見て配置。

・エンジンや武装等を統一化、整備や補給に関しての簡易化を図る。

・海軍艦載機へは空軍内に艦載機部をつくり、海軍への出向を行う。

・航空機の開発・選定に関しては空軍にて実施する。


等を提案。すると……


「その空軍は自分が任せてももらってよいでしょうか」


スッと立ち上がり、そう主張する。

周りは驚いた表情でその将官を見る。


「ほう……たしかに君は次期航空本部長に内定しているが、まだ空軍の創設の是も決まっていない。少し気早いのじゃないかね? 」


海軍大臣の財部がやんわり釘を刺す。


「……それでこの空軍はどの位置づけになるのだ?」


山本五十六少将が少し考えた後、俺に質問してくる。

おそらく統帥権の事が聞きたいのだと思う。


「もちろんこの空軍は帝国の一軍として、陸軍・海軍と同列の軍とし、統帥権は陛下に帰します」


この言葉で一斉に陛下へ視線が集まる。


「その空軍はこれから必要なのか? 」


「「必要です」」


俺と山本五十六少将の言葉が重なった。

その対応に陛下がひとしきり笑う。


「面白いではないか、山本五十六少将に空軍を任そう。これは勅令とする。職務に励め」


「はっ、ありがとうございます」


山本五十六少将が陛下に対し一礼をした。

あれ? あんた海軍はどうすんだ?

でも前線指揮官タイプじゃないから、むしろいいかもしれないな。

と呆けながら考えていると空軍の創立が決定。

空軍長官は代理として山本五十六少将が内定となった。

尚代理と言うのは、通常大臣職や軍令部・参謀長は大将を宛てている為、代理と言う処置がとられた。

因みに海軍・陸軍大臣は大臣職が廃止となった為、国防次官として職名を変更。

文民より国防大臣が任命されるが、その補佐を行う事となる。

統合作戦本部の部長は海軍軍令部か陸軍参謀部の中から任命される事となるだろう。

今後の話し合いで決まるようだが、こればっかりは国防方針を決めてからがよいでしょうと提案してある。

その時の作戦本部長によって作戦方針が変更になるのも混乱する元だろうしね。

軍の運営・管理に関しては軍令部長・参謀総長がそれぞれの軍の長官として就任する。

空軍は国防次官に海軍航空本部長が、空軍長官として陸軍航空本部長が就任し、実質は山本五十六少将長官代理が運営・管理にあたる方針だ。


「次で軍組織に関しての改革が最後となります」


軍部の集まりが妙に安堵感に包まれている。気がつけばこの会議が始まってから6時間以上が経過しているからだ。この内容でいったん区切りがつくと言う感じだろうか。それほど軍部にとっては刺激の強い一日だったと思う。


「統合作戦本部の下に情報部を創設・設置をいたします」


静まり返る会議室


「情報部なら我が陸軍・海軍にもあると思うのだが? 」


金谷参謀総長が遠慮がちに聞いてくる。


「それでは駄目なのです、閣下。約10年後に勃発する米英蘭との戦争では、我が国の諜報・暗号はすべて米国に筒抜けだった言う報告があがっております。」


今日何度目かのざわめきが広がる。


「情報と言うのは戦争を行うだけではなく、外交を行うにも情報は必要です。自分がいた時代の日本はこの情報を重要さを重視していなかったた為、国際社会からも一歩遅れた地位になってしまいました。果てには中国軍の日本侵攻です。侵攻を直前まだ察知てきなかったのも情報不足が原因です。」


ざわめきが収まらない会議室を見渡しながら俺は続ける。


「この情報部は政府直轄組織にしてもよいでのすが、現在の諜報部員い関しては軍部が運営しているかと思います。その為、国防省の傘下に情報部を設置いたします。そして外務省にも諜報部を設置し、軍・情報部は主に軍事、外務・諜報部は外交に関する情報を取り扱います。この集めた情報は、内閣総理大臣・外務省・国防省と情報を共有し、外交・国防への判断とするべきです」


「が……外交にも情報は必要なんかね?」


幣原外務大臣がおそるおそる聞いてくる。

「必要です。例えば英・米が先日行われた海軍軍縮会議にて事前に日本に不利な条約を協議していたとすればどうでしょうか。日本は何もわからず不利な条約を飲まさざるをえない状況になってしまいます。そうですね……戦国時代、天下を統一した豊臣秀吉、徳川家康は優秀な乱破衆をかかえていました。その乱破衆を敵対する大名に送り、常に見張り・情報を収集していたのです。ようするに情報を有効活用した人間が国取りに勝利したのです」


あちらこちらから「確かに」と言う呟きが聞こえてくる。

こう前例があると人は納得しやすい。後はいかに優秀な情報部に育つかが問題だ。

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