あずさ100万% (『ヘイカに尋けっ!!』パイロット版)
混乱ラブコメのパイロット版…9年くらい構想していた長編用設定を、読切りに
アレンジして書いてみました。思い入れの強めな物語であるため、指定がやたら
細かくなってるところはご勘弁ください。(汗)
■登場人物>
明日沙:海寺明日沙/かいじ・あずさ。徹底して感情的、マイペースで傍若無人。
だけどなんとなく憎めないコ。イメージではポニテの元気っ娘。
祟破郎:日立祟破郎/ひたち・すはろう。文学少年風の男の子。明日沙に振り回される。
希美:児玉希美/こだま・のぞみ。双子の妹。明日沙のことが嫌い。
イメージではスレンダーで小柄なツインテールのツリ目っ娘。
惹里:児玉惹里/こだま・ひかり。双子の姉。希美や明日沙の暴走にはらはら。
こちらもツインテールだけど優しい目で区別。
あさひ:谷川あさひ/たにがわ・あさひ。明日沙の級友。祟破郎と同じ図書委員。
イメージでは大人しい黒のストレートのロング。
高槻:高槻拍人/たかつき・はくと。美形の先輩。
明日沙母:明日沙の母親。中年だけどそこそこの健康美人。
明日沙(小):幼児時代の明日沙。
祟破郎(小):幼児時代の祟破郎。
[1]
T「あずさ100万%」
T(小)「『ヘイカに尋けっ!!』 パイロット版」
あおり「ジコチュー・ジコチャー・ジコチュエスト・ヒロイン、登場!!」
[2]
□ 教室
明日沙、めちゃくちゃに嬉しそうに
明日沙「ねえねえ聞いて、すはろー!」「すてきな出会いしっちゃった~(はーと
はーとはーと)」
明日沙、徹底して元気っ娘。うしろに花が飛び跳ねてる。
人物紹介「ヒロイン 海寺明日沙」
□
祟破郎は自分の席で、文庫本を開いたまま、うんっっっざりした表情で見てる。
当然背景はベタ一色。
本のタイトルは「葉隠入門 三島由紀夫」。
人物紹介「その幼なじみ 日立祟破郎」
□
明日沙、構わずルンルン状態で踊ってる。
明日沙「ああっ、この胸の高鳴り♪」「ついに一生に一度の恋に巡り合ったのね~」
祟破郎「・・・・・。」(表情そのまま)
□
希美、後ろで腕組みして
希美「何度めの『一生に一度』かしら、明日沙。」
明日沙「ムッその声は……」
希美の後ろでは惹里がオロオロ。
人物紹介「級友 児玉希美」
人物紹介「双子の姉 児玉惹里」
希美、ツリ目のライバル少女。惹里、希美と同じ髪形だが気がよわそう。
[4]
□
希美「たしか5日前にも、先々週の火曜日にもそんなこと言ってたわよね。」
明日沙「うっさいわね! 乙女が恋して何が悪いのよ!」
□
希美、立ち去りながら
希美「ま、こんどは2~3日でふられないようにすることね。」
惹里「ちょっと、希美ちゃん(ι)」
□
明日沙(ムッ)「児玉希美…イラツキ・イラツキャー・イラツケスト!」
祟破郎「でもさ~明日沙」
□
祟破郎「ある意味、俺も同感だぞ。明日沙の『一生に一度』は一週間もったためしが
ないからな。」
□
明日沙「そっ、それはっ……本物の恋じゃなかったからよ!」「今度は本当なんだ
から!」
祟破郎「A組の向日のときもバスケ部の長岡先輩のときも西校の山崎とかいうやつの
ときもそんなこと言ったよな。」
[5]
□
背景文字「氷の笑顔っ!」
背景はブリザード(大吹雪)。
明日沙「祟破郎、なんか言いたそうね?」
祟破郎(焦)「あっ…いや。」
□
呆れてる祟破郎と、また上機嫌で踊り出してる明日沙。
祟破郎「で、今度は誰?」
明日沙「かっこいい人! 祟破郎、名前わかる?」
□
祟破郎、頭を抱えて溜息。
祟破郎「・・・・。」「それ以外の特徴は?」
(場面転換)
□ 「第二としょかん☆」の札。
□
貸し出し係の机にあさひが座ってる。
祟破郎「谷川~、高槻先輩、来てない?」
あさひ「え? 来てないけど…何か用?」
人物紹介「図書委員 谷川あさひ」
あさひ、まじめな優等生。
[6]
□
祟破郎「いや…明日沙のことでちょっと。」
□
あさひ「……日立ってば、またヘイカのパシリやってるの?」
祟破郎「しょうがないんだよ、あいつは…。」
□
あさひ「いくら幼なじみでも、ちょっと甘やかしすぎじゃない?」「だからワガママ
になって、女王陛下なんてあだ名…。」
祟破郎(激怒)「やめろよ!」
□
祟破郎「あ…ごめん」
焦る。
□
あさひ「・・・・・。」
上目遣いで祟破郎を見ている。
[7]
□
あさひ「で、今度は高槻先輩なの?」
祟破郎「それを確かめたいんだけど。」
声「俺がどうしたって?」
□
祟破郎「高槻先輩、いいところへ!」
高槻「?」
人物紹介「先輩 高槻拍人」
高槻、美形の先輩。
□
祟破郎「えっと…今朝、歩道橋で、転びかけた女子を支えて助けたりしませんでした?」
□
高槻(しばらく考えて)「……そういえば。」「でもそれが何か?」
□
(回想)
明日沙「いい、私のこと相手にバラしたらあんたを殺して私も死ぬからね!」
(回想終了)
祟破郎(汗)「あ、いや…なんでもないんですけどね。」
□
祟破郎「ところで、先輩の女の子の好みって、どんな感じですか?」
高槻「好み? そうだなあ・・・」
[9]
□ 帰り道。
明日沙「本当? 『元気で頭のいいコ』って言ったの?」
祟破郎の声「うん。」
□
明日沙、また踊り出し
明日沙「な~んだ、それって私のことじゃない♪」「運命の出会いだったんだわ♪」
祟破郎「・・・・・。」
□
希美、またまた腕組みして登場。
希美「バカ元気はともかく、『頭のいい』はハズレね。」
明日沙「また出たわね、希美!」
希美の後ろで惹里がハラハラ。
□
希美(嘲笑)「だって中間テストの順位も憶えてないほど頭わるいじゃない。」
明日沙、「-☆」(カチン!)
□
明日沙「何よ、一回くらい私に勝ったからって!」「期末を見てなさい! あんた
なんかケチョンケチョンの、ふんじゃらどちゃぼろっにしてやるから!」
[10]
□
希美、嘲笑しつつ立ちさる。
希美「あらあら、自分がふんじゃらどちゃぼろ、のまちがいじゃないの、ヘ・イ・カ。」
惹里「の、希美ちゃんてば…」
□
明日沙(怒)「なァァァに、あいつ…」「ムカツキ・ムカツカー・ムカツケスト!!」
祟破郎(溜息+心の声)「お互いにストレス与え合ってるんだよな…」
□
明日沙「祟破郎!」
ビシッ! と祟破郎を指さして
明日沙「すぐ帰って試験勉強するわよ!」
祟破郎「…まだ中間が終ったばかりじゃないか?」
□
明日沙、すたすたと行ってしまって
明日沙「備えあれば憂いなし。早く始めるにこしたことはないッ♪」
祟破郎「わ、わかったよ…」
□ 明日沙の家、玄関。
祟破郎が帰り支度。
声「あら、祟破郎くん、もう帰り?」
[11]
□
祟破郎「おばさん…」「明日沙のやつ、疲れて眠っちゃったからそっとしといてあげ
てくださいね」「(書き文字)30分ともたなかったι」
エプロンをした明日沙母、手をふきながらやってくる。
□
祟破郎、背中を向けて靴を履いてる。
明日沙母の声「いつも悪いわね、あの娘の面倒見てもらって」
祟破郎「そういう約束ですから。」
明日沙母の声(さりげなく)「ふたりがケッコンでもしてくれたら、何の問題もなく
なるんだけど。」
□
祟破郎、口から心臓が飛び出す。背景は落雷。
□
祟破郎(激焦)「おっ、おっ、おっ、おばさ・・・!!」
明日沙母(のんきに)「お互いに嫌じゃなかったらだけど。」
□
バンッ!
激しくドアが閉められて
祟破郎の声「お互いに嫌です!」「それじゃ、また!」
明日沙母「あら・・・ふられちゃった。」
明日沙母の背景に、茎の折れた花が一輪、飛んでいる。
[12]
□ マンションの階段
祟破郎、階段を降りる。
□
祟破郎、悩み顔で溜息。
(回想)
喪服の明日沙(小)が泣いている。
ひっく ひっく
□
泣いている明日沙(小)の肩に、手を置く祟破郎(小)。
祟破郎(小)「僕は…僕は……!」
□ (回想終了)
祟破郎、溜息。
[13]
□
そこへ……
タタタタタ
祟破郎「あれ? 児玉・姉?」
□
惹里(半泣き)「あっ、日立くん! 大変なの!!」
□ (場面転換)
川岸の堤防。
びしょぬれで、四つん這いになり水を吐いてる希美。
惹里が介抱する。
祟破郎は後ろで、希美の上着を絞っている。
祟破郎「なんでまた橋から川に落ちたりしたんだ?」
惹里「希美ちゃん、勉強で寝不足になってて、それでふらついて…」
[14]
□
祟破郎「そんなになるまでしなくてもいいのに。」
希美「イヤよ!」
□
希美「誰に負けたってかまわないけど、ヘイカにだけは負けてなるもんですか!」
□
祟破郎「っても、お前らが争ってるのは平均100番あたりじゃなかったっけ?
(書き文字)180人中のι」
希美「国語だけは15番あたりよ!」「とにかくあいつにだけは負けたくないの!」
□
祟破郎、哀しげな顔で見ていたが、
□
ひょい
希美の腕を取り
祟破郎「どっちにしても、無理しちゃあ駄目だ。」
希美「え…」
[15]
□ 町中。
祟破郎、希美を背負って歩く。その後を、惹里が鞄を持って続く。
祟破郎「なあ、なんで児玉・妹と明日沙って、そんなに仲悪いんだ?」
希美「・・・・・。」
□
祟破郎の背の希美、すごく言いにくそうに顔を赤らめながら
希美「・・・・・」「あいつ、私の好きな人をとったの。」
□
祟破郎(呆れ顔)「恋の恨みか…そりゃこわい。」
希美(激昂)「しかも、わずか4日で別れやがったのよ!! あの超弩級の馬鹿メス!」
[16]
□
希美「失恋後のあの人ったら、もう見てらんなかったわ。愚痴ばかりで情けなくっ
て……」
祟破郎「そんな奴となら、つきあわなくてよかったんじゃない?」
□
希美「ちがうの! 私のあの人をあんな情けない男にしちゃったのはあいつなのよ!」
祟破郎(心の声)「逆恨みだ…」
□
惹里、祟破郎の後ろから
惹里「ところで、日立くんはなんでいつもヘイカに従ってるの?」「日立くんなら、
ケンカになっても勝てるでしょう?」
□
祟破郎、天を仰ぐような顔で
祟破郎「女は殴れないよ。それに、明日沙とは……」
□
惹里「ヘイカとは?」
祟破郎「な、なんでもない!」「くされ縁だからさ。」
□
希美「・・・・・。」
希美、祟破郎の背に顔を埋めつつ、…思案顔。
(バブルアウト)
[17]
□ 学校の廊下。(翌日)
休み時間の廊下。
明日沙の声「なんで勝手に帰っちゃったのよ!」
大声が響いてるがみんな気にしてない。
□ 教室。
祟破郎、またも文庫本を読みながら
祟破郎「だってお前、寝ちゃったから……」
明日沙「私が寝たら起こすのがすはろーの役目でしょう!」「この役立たず・
役立たザー・役立たゼスト!」
祟破郎「役目って……ι」
□
希美…今度は一人。
希美「あの……」
明日沙「また出たわね、希美!」
□
希美「ヘイカに用じゃないわ。」「日立くんに、ちょっと話があるんだけど。」
祟破郎「俺に?」
□
祟破郎、希美に促されて教室を出ていこうとする。
明日沙「ちょっと、祟破郎! 話の途中でしょ!」
祟破郎「わかったよ、次からはちゃんと起こすから。」
[18]
□
明日沙、ムッとした表情。
□ 体育館横の花壇。
立っている祟破郎と、しゃがみこんで花を見ている希美。
祟破郎「で、話って?」
希美「日立くんて、ヘイカとつきあってるわけじゃないんでしょ?」
□
祟破郎「ん? べつに…つきあってないけど。だって明日沙は…」
□
希美、ちらっと流し目。
希美「じゃ、私…だめかな?」
[19]
□
祟破郎「……はい?ι」
希美、立ち上がり、
希美「私とつきあわないかっていってんの!!」
□
希美、顔を赤らめて泣きそうな顔で。
希美「私じゃ、だめなの?」
□
祟破郎、たじたじ。
祟破郎「だめって…そ、そんなことは、な……」
□
声「ちょぉっと待ったあぁぁぁっ!!」
おどろく二人。
欄外書き文字「いまどきわかる人いる、このネタ?ι」
[20]
□
今にも手を握りあう寸前だった二人を前景に、集中線を浴びて明日沙登場。
明日沙「祟破郎! 私に無断でそんなオンナとつきあったらゆるさないからね!」
□
祟破郎「おい……」
希美、祟破郎を押しのけて
希美「なによ、日立くんを私物化するつもり!?」
□
明日沙「するつもりじゃなくて、もともと私物なのよ!」
希美「じゃあ、あんたも日立くんのものなわけ!?」
□
タジッ
明日沙「うっ…あっ…ちがうけど。」
希美「じゃあ私と日立くんがつきあったって、ヘイカには関係ないじゃない!」
[21]
□
明日沙「祟破郎…そう、祟破郎よ、問題は! あんたはどうなの!? こんな
ナイクシャぺたんの青首ネギみたいな女があんたの好みなの!?」
祟破郎「ナ、ナイク…ι」「それは言い過ぎだろ、明日沙!」
□
祟破郎、激昂する明日沙を押しもどしながら
祟破郎「児玉・妹、返事は保留にしといてくれ、悪いけど。」
希美「日立くん!」
祟破郎「いちおう前向きに検討するから。」
□
拳を胸に当てながら、顔を上気させて見送る希美だけが残される。
希美「・・・・。」
[22]
□ 他に誰もいない階段
明日沙が掴み掛かろうとしてるが、祟破郎が宥めている。
明日沙「…! …! …!」
祟破郎「明日沙、いいかげんにしろ!!」
□
明日沙、驚いて呆然。
□
祟破郎「仮に俺があいつとつきあったとして、お前と何も関係ないじゃないか!
ちがうか?」
□
明日沙、視線を逸らし、
明日沙「だって…だって…。」
祟破郎「だって?」
□
明日沙、泣きそう。
明日沙「祟破郎が…誰かとつきあうなんて、やだモン!」
[23]
□
明日沙、ぼろぼろと泣き出す
明日沙「だって、だって約束してくれたじゃない……。」
□ (回想)
喪服の明日沙(小)が泣いている。
ひっく ひっく
明日沙(小)「おにいちゃんが…おにいちゃんが…」
□
祟破郎、明日沙(小)の肩に手を置き
祟破郎(小)「僕は…明日沙の側にいるよ! 死んだお兄ちゃんのかわりに、ずっと
明日沙の面倒を見るから!」
□
明日沙(小)、泣きながら
明日沙(小)「ずっと? 一生?」
[24]
□
泣いている明日沙(小)の頭を祟破郎(小)が抱きしめる。
祟破郎(小)「うん! 僕は…僕はずっと、一生!」
□ (回想終了)
祟破郎「約束は守るさ。」「だから涙、拭けよ。いくら女でも、泣いていいときと
泣かない方がいいときがあるぞ。」
祟破郎、ハンカチを差し出す。
□
こくん
明日沙、うなずいてハンカチを手に。
□
明日沙、後ろ向いて
ちーんっ
祟破郎(汗)「…お約束をありがとう。」
[25]
□
明日沙、振り向きつつ
明日沙「そうだ、祟破郎! 大事なこと思い出したんだけど!!」「高槻先輩、
『元気で頭のいいコが好き』って言ったのよね?」
□
祟破郎「うん。明日沙も国語『だけ』は15番くらいだから、希望はあると……」
明日沙「でも、もう好きなオンナがいるからそう言ったって可能性ない!!?」
□
祟破郎、顔を引きつらせつつ
祟破郎「そ、それは…」
□ (フキダシでつなぐ)
祟破郎の声「…言われてみれば、ありえると思うけれど。」
明日沙、すごく真剣な表情。
□
明日沙、祟破郎の手を握って振り返り
明日沙「確かめに行こう!」
祟破郎「え?」(汗)
[26]
□ 図書館。
高槻がモニターに向かっている。ネットで調べ物?という雰囲気。
□
本棚の陰に立つ祟破郎と、その後ろに恥ずかしそうに隠れてる明日沙が。
祟破郎(小声)「確かめるんじゃなかったのかよ?」
明日沙(小声)「だ、だめ…足がすくんじゃって。」「すはろ、聞いてきて。」
□
祟破郎、振り返りながら…。
祟破郎(小声絶叫)「なんで俺がっ……!!」
明日沙、顔を真っ赤にして隠れながら
明日沙「お兄ちゃんなら…きっと尋いてきてくれたわ。私の言うことは何でも
聞いてくれたモン」
[27]
□
明日沙、涙目+上目遣いで手を合わせる。
明日沙「おねがい、祟破郎。」
□
祟破郎、明日沙の方をじっと見て
祟破郎「・・・・・。」
□
何も言わず、「プイッ」という感じで本棚の陰から出て行く。
明日沙「あ…」
祟破郎(心の声)「怒ったり泣いたり、心配したり照れたり…」
□
物陰から、固唾を飲んでこの様子を見ている、あさひ・希美・惹里の3人。
□
祟破郎(心の声)「でも、それが明日沙だから、僕は……」
祟破郎、高槻の席の後ろから。
祟破郎「高槻先輩、調べ物ですか?」
高槻「日立か…いや、最近、ネットマンガにハマッててね。」
[28]
□
祟破郎、覗き込む。
Click Click… (マウスの音)
祟破郎、モニターを見ながら
祟破郎「『脳内派生嘘彼氏』…女性ご都合ラブコメですか。」
高槻「今、これが一番好きなんだ。」
□
高槻「ヒロインの館子ちゃんがかわいいんだよね。頭よくて、元気で…」
□
祟破郎(心の声)「エッ!?」
祟破郎「せ、先輩……ひょっとして、先輩の好みの女の子って……」
[29]
□
高槻、爽やかな笑顔で頬を染めて
高槻「うん。理想の女の子は館子ちゃんだな。」
□(大コマ)
「二・次・コ・ン!!!?」 (背景に砕ける石のようなイメージの文字で)
明日沙、大驚愕して顔は「踊るハニワ」両手は「ムンクの叫び」状態。
(欄外注:マンガやアニメの女の子に本気で恋愛感情を持ってしまう人のこと)
[30]
□ 昇降口。
明日沙、がっくりと膝をつき下駄箱に手をかけてうなだれている。
祟破郎「明日沙、元気出せよ」
□
明日沙、振り返りながら
明日沙(半泣き)「すはろー……」
祟破郎「何度もふんじゃらどちゃぼろになりながら成長していくのが人生なんだ。
『一生に一度の恋』なんて、見つかるのはまだ先だよ。」
□
祟破郎「それまで俺が側にいるからさ。約束しただろ? ずっと、お兄ちゃんの代わり
をするって。明日沙の面倒を見るって。」
□
明日沙、涙がボロボロと。
明日沙「うん……うん!」
[31]
□ 物陰。(以下サイレント)
希美、壁に寄りかかりつまらなそうに腕を組んで溜息をつきつつ見ている。
惹里、「まあまあ…」という感じで宥めている。
あさひも心配そうに明日沙たちを見ている。
□
明日沙、祟破郎の両袖を掴んで胸で泣く。
□
祟破郎、やさしく明日沙を迎え入れれる。
□
明日沙、祟破郎の腕越しに何かを見つけて驚き目を見開く。
(ここまでサイレント)
[32]
□
明日沙、必死の表情で祟破郎の腕を掴んで
明日沙「祟破郎! いま、そこをカッコイイ・カッコヤー・カッコエストな人が通っ
たの! すぐ、誰だか調べてきて! 好みの女の子のタイプも!!」
祟破郎、びっくり。
祟破郎「え?」
□
明日沙、上機嫌で踊り出し、うしろに花が飛び跳ねる。
明日沙「ああっ、この胸の高鳴り♪」「ついに一生に一度の恋に巡り合ったのね~」
祟破郎「・・・・・。」
後ろで今度は祟破郎ががっくりと膝をつき、下駄箱に両手を置いてうなだれている。
希美・惹里・あさひの3人が苦笑しながら祟破郎を取り囲んでなぐさめている。
~終わり
ヒロインの元ネタは昔の彼女(本人承諾済(笑))。本人はこんなに傍若無人ではありませんでしたが、いくつかのセリフは実際に……(笑)