すべての始まりと今までの努力の初披露
茶眼金髪にピアスというギャルの見た目に反さず、中身も優しいけど芯をしっかりもったしゃべり方も考え方もギャルよりの女の子、橘美織。
そんな彼女は過去の出来事から恋もせず、彼氏もつくらずの人生を歩んでいた。
そんな時、彼女にとある依頼がくる。
小学校の時からの親友に好きな人ができて、振り向かせたい、どうしたらいいという依頼という名の相談だった。
美織はその依頼を快く引き受けた。ー条件も丁寧に提示して。
「美織、今日は、ありがとね」
ひょっこりとドアから顔を出したのは、依頼をした親友、優紀結衣だった。
その名前の通り優しい子で、話方もおっとりでふわっとした声が特徴の女の子だ。
実は美織はこの見た目に反し、友達は優しい大人しめの女の子の方が多いのだ。…元気な子もいるけど。
「こちらこそっ!さぁさぁ、上がって上がって!早くやりましょ!」
ぐいぐいと靴を脱いだ結衣の背中を押して、二階にある自分の部屋へと連れ込む。
かちゃっという音と共に開いたドアの先には、青中心のさわやかな部屋が広がっていた。
どちらかというと観葉植物が部屋の半分ぐらいを占めていて、他は漫画やら小説やらがぎゅうぎゅうに詰まっている本棚がずらっと壁を覆っていた。
もちろん机も椅子もあるけれど、基本的にあまりこの部屋に美織は居ることはない。なぜならー
「あれ?ねえ、ここには道具もなにもないけれど、どこかにしまってあるの?」
不思議そうに結衣が尋ねると、私は目をキラーンッと光らせて、ガッと結衣の肩を掴んだ。
結衣は顔を引きつらせ、これは美織の何かを焚きつけてしまったと、後悔していた。
「あ、あのぉ…お、お手柔らかにしてもらえると、嬉しいんですが…」
美織はその言葉ににこっと本当に嬉しそうな笑顔で返し、そのまま肩を押して結衣の部屋のある一つの本棚の前に立たせた。
そして美織がポケットから何やら言葉が書かれたカードを取り出し、本棚についているキャッシュレス決済の時に使うような決済端末っぽいなにかにそのカードをかざすと、ロックが外れる音がして、美織は本棚に手を置き、ぐっと力を入れて押した。
「へっ…!?」
押された本棚はそのまま後ろへ移動し、本棚があった場所から広い広い部屋が出てきた。
「シークレット・ブドワールへようこそ!」
手を広げながらにこにこと微笑む美織に、私は唖然として、そのまま美織にぐいぐいと押されながらその部屋に足を踏み入れたのだった。
私達が部屋に入りおわると、私はすぐさま本棚のドアを閉め、鍵をかける。
「そんなに秘密にしたいの?この部屋」
結衣に尋ねられ、私は苦い顔をしながら、事情を説明した。
「実は子供の頃に一回引っ越ししてて…その時にこの部屋、両親に秘密基地をほしいっていったら家を建てる時に作ってくれてさぁ。私、上と下に兄弟いるんだけどねぇ。こういう部屋、上と下の兄弟も持ってるけど、兄弟は両親にその部屋の秘密話しててさ。んで、飛び火で私にもその話が来ちゃって。秘密って言ったら両親が勝手にカードの複製のやつでこの部屋に入っちゃって。...そこで、私の部屋が美容とかメイクの部屋で、私がそういうのできるって知られちゃってさぁ。兄弟にもそのこと知られちゃうし、それから私がこの部屋に入る時に家族が全員で突撃してくるから、素早く入って素早く鍵かけてんのよ。あ、ちなみに複製のカードは私が盗んでこの部屋の中に閉じ込めてあるし、自分のカードは私が肌身はなさずもってるよ♪」
これ、私やってもらったらご家族からすごい恨まれるのでは?...まずいんじゃ…
結衣、きっとうちの家族に恨まれるんじゃないかとか考えてるんだろーなぁ。そんな事させないって。
「そーもそーも!私は恋する乙女の味方であって、家族の味方ではないから!ま、兄弟が恋した時は手伝ってあげるつもりだから気にしなーい、気にしなーい♪」
と、噂をすれば家族がばたばたと階段を駆け上がってくる音がする。
「おねーちゃあぁんっ!僕にもやってよぉ!」
「私もやってほしいー!すーいー!」
「美織ちゃーんっ!お母さんたちにもやってぇ~?美織ちゃんがお肌綺麗なの知ってるから~!」
「そーだそーだーぁ」
「う、噂をすれば、だね…」
「…ごめん」
私はげっそりした顔でそう言って、ドアの前にたって叫んだ。
「やらないって言ってんでしょ!?伊織と詩織お姉ちゃんは本当に恋したらやってあげるって言ってるん!お母さんたちはやる必要ないでしょ!?私は恋を応援してるだけですのでっ!!」
そういうと反論は帰ってこず、とことことしょぼくれながら帰る足音が聞こえてくる。
「はー。ごめんね、結衣。ちゃーんっとあとで言い聞かせてくるからね」
おでこに青筋を浮かべながら微笑んで言う私に結衣は顔を引きつらせながら早く、よろしくね、と言って鏡の前の椅子に座り、私を手招きする。
「あーそーだったそーだった。ごめんごめん」
てへっと私は笑って、壁面棚にある必要な物をかたっぱしから集めて小さめのおしゃれな籠に入れていく。
「にしても。さっきの部屋もそうだったけど、やっぱりおしゃれだよね、部屋…」
結衣は部屋を見回してきらきらと目を輝かしながら言う。
「そーねぇ。おしゃれなのかは知らんけど、自分好みに仕上げてるし、整理整頓は頑張ってるから、片付いてる方なのかも」
部屋の壁にはおしゃれ?な棚がだいたい貼り付けられていて、他は天井から植物が吊る下がっていたり、クローゼットがあったり、結衣が今座っている椅子と洗面所みたいなのと引き出しのセットがあったり。こちらも落ち着いた淡い色でそろえられていて、青か緑、それか白でそろえられている。
おしゃれなのか…?この部屋。…好みの物を置いただけだから、罪悪感…
そんな事を話している間にだいたい必要な物はそろえ終わり、結衣の所に戻って、籠を置いてから、まず最初に洗面所をシャンプードレッサーに使用に変えて、椅子もそれに合わせて寝かせる。
「じゃあ、最初のお客様として、よろしくねっ、結衣♪」
「うん」
結衣の首元に温めたタオルを軽く巻き、ゆっくりと寝かせる。
水を出してシャワーヘッドを頭に当てながら、指の腹で頭皮の表面を優しくなぞるように指を小刻みにジグザグに動かす。
「わぁ…なにこれ、気持ちい…!」
ほかほかな笑顔で言う結衣に私は笑顔でコツを教える。
「これから髪を洗う時は、爪を立てないで、指の腹で頭皮の表面を優しくなぞるようにジグザグに動かして洗うといいよ。あとはー」
私はすこしぐッと力を入れてある場所をマッサージする。
「ふぉぉぉ!?えぇ、なんか、なんかすごいきもちいい…」
今にも溶けちゃいそうな結衣に苦笑いを返しながら、私はマッサージしながらマッサージした場所を教える。
「こめかみを人差し指と中指の腹を当てながらなら後ろに引き上げるように円を描きながら優しくマッサージすると、気持ちいいよー♪」
相変わらずふわふわとほへぇぇと溶けてる結衣を横目に、同じようにしてシャンプーをして、シャンプーが残らないように念入りに流してから、左右に分け、根元から毛先に向かって手でギュッと挟むようにして水気を切る。
「この時は優しくね。左右に分け、根元から毛先に向かって手でギュッと挟むようにして水気を切る。髪に水分が残りすぎているとトリートメントが薄まって流れちゃうからねー」
そして次に、トリートメントを手のひらに広げたら、まずは毛先10〜15センチにしっかり揉み込み込む。そのあと、手に残った分で髪の中間へと伸ばしていく。
「これはー。もういいやぁ、あとでメモしとくからちゃんとこれからも家でやるんよぉ?」
「はぁぁーいっ…ふぉぉあ」
もう眠そうで、溶けている結衣を見てここで教え込むのは無理だと判断し、私はあきらめて結衣の髪の手入れを続けた。
その後、トリートメントをつけた状態で、洗面ボウルや手桶に少しだけぬるま湯を溜める。その「トリートメントが溶け出したお湯」を何度も髪にかけ流す。仕上げにコーム(目の粗い櫛の事)で髪を梳いて、お湯で濡らして温めた「蒸しタオル」を頭に巻いておく。
「よしっ!結衣、結衣!起きて。次は服選ぶから!」
5分タイマーをセットしてから、結衣の肩を叩いて結衣を起こして椅子を起こし、クローゼットを開け放ち、結衣に似合いそうな服を探してソファに次々に放り投げる。
ぽやぽやしながら重たい瞼を開けた結衣は、普段は比較的温厚なのにばっと飛び起きて珍しく声を荒げた。
「ちょ、ちょーっと!!そんな短いワンピースなんて無理無理無理!!!!」
私はびっくりして一回目を見開いて固まったが、すぐに満面の笑みに変えた。
うわっ…恐ろしいほど清々しい笑顔…これは、勝負あったな。
「あのね、結衣?…相手の気ぃ引きたいんだったら、女なんだから足だすんだよっ!!男はし出せないんだからねっ」
ふんすと、私に負けた結衣は、がっくりとうなだれて、されるがままになった。
さてさて。結衣はスタイルがいい上に綺麗な黒髪だから、髪型は、緩いお団子とかが似合いそう。んじゃ、これにしましょ!
服を決めた後、私は棚の引き出しを開け、ガサゴソと結衣に似合いそうな丸めがねを探し、タイマーが鳴った所で、1つのめがねを手に結衣のもとへ戻る。
「?美織?…す、すごい悪い顔してるんだけど…」
「ん?あぁ、気にしないでぇ。ちょぉっと考え事してただけだから」
「…絶対ろくでもない内容だ…」
「何か言った?」
「いえなにもっ!?」
他愛もない会話をしながら、巻いていたタオルをほどき、籠の中に入れてそのまま椅子を倒してトリートメントを流す。少し毛先にぬるつきが残る程度で流すのをやめる。
流し終わって髪をやさしく絞ってから椅子をぐるりと一回転させて、そのまま背を起こす。
なんだかわけがわからないまま、結衣は頭の中にはてなをたくさん浮かべたまま、タオル越しに頭をマッサージされる感覚に、またもほへーと溶ける。毛先はタオルで軽くぽふぽふと叩いて水分を取る。
「さぁ、ここからが正念場だよん♪」
「へ?正念場?」
その時もまたはてなマークが結衣の頭に浮かぶのだが、そのはてなマークは一瞬にして極楽に押し流されることになった。
「わあぁぁ~」
髪をかき分け、ドライヤーの風を「頭皮(根元)」に向けて当てる。襟足や耳の後ろなど、乾きにくい場所から始め、ドライヤーを頭より高い位置に持ち、上から下に向かって斜め45度で風を当てていく。
8割ほど乾いたら、指で髪を少し挟んで、下に向かって優しくピンと引っ張りながら風を当て、仕上げに、ドライヤーを温風から冷風に切り替え、上から下へ髪全体に風を当てておしまいだ。
「気持ちよかったぁ。あれ?もうおしまい?」
その言葉に苦笑いを返し、準備ができた髪を軽くまとめ、前髪をピンでとめる。
「さてと。ここからが腕の見せ所だ。結衣、これから好きぴとデートでしょ?メイクもばっちりしてかなきゃ!」
のりのりな私に押され、結衣は顔を泡で洗い、ティッシュで水を拭き取ると、すぐに私に迫ってきて、この洗顔フォームはどこで買ったんだと問いただされる。
「え、えっとぉ」
「ねぇ、教えてぇ!!こんなにすぐ泡立って、きめ細やかで、水で流して拭き取ったらこんなにすべすべになるの!?ね、ね、ねー!!?」
ぐいぐいと詰め寄ってくる結衣に私は負けて、その洗顔フォームについて自白した。
「そ、それは、私の、手作りで、ね?」
これは私の前世、魔法のある異世界で過ごしていた時に研究して作ったものだ。
…言っていなかったけれど、橘美織は転生者だ。
不運にもその時居た婚約者?彼氏?に裏切られて別れたすぐ後、車に引かれて私はその短かくも長くもない人生の幕を閉じた。最後、大好きな美容関係の事を、もっと研究し、他の人にふるまってやりたかったと、後悔を残して。
すると次に目覚めた時は天国ではなく、目の前に飛び込んできたのは白い天井。手を伸ばしてみると視界に移るのは赤ちゃんの幼い小さくて真っ白な手。
その時私は転生し、また美容関係の事をたくさんできるのだと思ってうれしくなった。
それと同時に。
もう二度と男に構うものか。男は裏切るもんだ、関わってやるものか。と決意を固めたのであった。
そして私は無事今、16歳になって、恐ろしいほどの美容に関しての知識を持っているのだった。その後前世と同じく美容、美容用品の研究などにも飽きるほど注力したが、美容だけでは足りず、この16年間メイク、服、ネイルなどにも手を伸ばし、結果、異常な美に関しての知識を身に着け、初めてこの自分の今までの研究などの努力を、人に振る舞う。
「…は?美織が作った?」
あぁ、やっぱ信じないし、怒るよね…
けれども結衣は美織の予想に反し、嬉しそうな声を上げた。
「すごい、すごい!ねぇねぇこれ、私に少し譲ってくれない?もちろんタダでとは言わない。ちゃんとそれ相応の料金は払うから」
ありゃ、大分いい案件だわ。うん、それなら受けた方がこっちも得ねぇ。私だってずっとこれを隠しておきたいわけじゃないからねぇ…
おばあちゃんみたいな語尾になりながらも、自分で勝手に納得して、料金の相談をする。
「おーけー。いいよ。ただ価格は素材の価格に上乗せで制作料入るから。いい?」
「いいよいいよ!こんなにいい物2000ぐらいしてもおかしくないよぉ!」
「いや、そりゃもりすぎでしょ…」
そう。この世界、前世のオリジン(その星?の名前)では、これはそんなに高価なものではなかった。
まぁ、あんの馬鹿野郎様が私のレシピをいろんな所に流したからですけどね!?
にっこりと腹黒い笑みを浮かべながら、私は引き出し歯磨き粉入れるチューブみたいなやつを何個か取り出し、結衣に渡す。
それにはおしゃれ文字でシークレット・ブドワールと書かれていた。下の所には美に悩んだ時は相談受け付けています、メイクなどもおまかせくださいと書いてある。
「…美織、あなた、用意がいいのね」
その言葉に私はにこっと笑って返すと、結衣ははーっとため息をつく。
「これを数個私に渡したってことは、他の人に宣伝をしろということ?」
「初回だから、それはお金はとらないよー♪その代わり、男以外の私が嫌いじゃない女子に渡してくれる?同じ事を渡した子に言ってくれればいいから。よろしくぅ」
すっかり私にはめられた結衣は、その後化粧水やらメイク道具やらにも同じ話を持ち掛け、結局同じ事を何回もしたのであった。
「さーさー。早く着替えて愛おしいすきっぴーの所へいってらー。…くれぐれも香水はつけんなぁ?いいね?せっかくかわいい顔してんだから」
したり顔で微笑む私の前には、さっきまでの彼女はどこへやら、サイドみつあみ団子に茶色の丸眼鏡をかけて、ちょっと短めのふんわりとした水色のスカートを着た美少女が立っている。
私は大きな扉を開け、扉の外へと手を伸ばす。
「いってらっしゃい。またの来店をお待ちしてます♪次回もどうぞ、シークレット・ブドワールへ」
ゆっくりと頭を下げる私を横目にありがとう、と感謝だけ伝えて、好きぴの所へと向かっていった。
私がふふ、と微笑みながら好きぴの元へ嬉しそうな顔で歩いていく結衣を見ているとき、どこかから、私の人生をひっくり返す天敵が私を見ていることも知らずに。
「…やっぱり。美織、君は僕の—」
始めましての人は初めまして~!前作で見ている方はお久しぶりです!
二作目!!
ひょんなことから思いついた作品ですが、美容に貪欲な美織を暖かい目で見て頂ければ幸いです。
次回でも事件が起こって、正面から突撃していく美織です。
まさかの再会を果たす、次回もお楽しみに!




