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【完結】若きベルディオの悩み  作者: 知己


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8/10

第8話 僕と?????

 ————翌朝、いつもよりたっぷりめに朝食を食べた僕はリュックにおやつと水筒にタオルや着替え、ロープや地図を詰めて木剣を握った。

 

 

「よし、これで準備は万端だ……!」

 

 

 今日の夕方には父上たちが帰ってくる。それまでに任務を完了しなければいけない……!

 

 僕はそろりと部屋を出てキョロキョロと辺りを見回した。

 

 

「————あら、ベル様。リュックなど背負われて、どちらへお出掛けですか?」

「‼︎」

 

 

 ドキンと心臓が跳ね上がり声のした方を振り向くと、若いメイドがモップを持って立っているのが見えた。どうやら掃除中だったらしい。でも、見つかったのが執事長でなくて良かった。

 

 

「う、うん。ちょっとね、剣術の秘密特訓をするんだ」

「そうでしたか。では、誰か人を————」

「————ダメダメ! 秘密特訓って言ったでしょ! 人に見られたら秘密じゃなくなっちゃう!」

「ですが……」

「敷地内からは出ないから大丈夫。それと執事長には絶対内緒でね。特訓の成果を見せてビックリさせたいんだ!」

「かしこまりました」

 

 

 若いメイドはクスリと笑って掃除に戻っていった。

 

 

「……ウソついちゃった……」

 

 

 少しキリリとした胸を押さえて僕は人に見つからないように(やしき)を後にした。

 

 

 

 

 ————邸を飛び出した僕は北へと向けて歩を進めていた。

 

 ウソをついてまで邸を出た僕の目的は一つ————。

 

 

「絶対に『虹色の花』を手に入れるんだ……!」

 

 

 昨日、アントニオが言っていたカルチェ山の頂上に咲いているという『虹色の花』。それを一人で摘んで帰ることが出来たら僕は変われる気がする。母上にプレゼントして、今まで訊けなかったことを正面から訊いてみるんだ……!

 

 

         ◇

 

 

 ————太陽が真上に昇った頃、僕は小高い山の麓にたどり着いた。

 

 

「……ここがカルチェ山。この頂上に『虹色の花』が……!」

 

 

 カルチェ山の標高は500メートルくらい。子供()の足でも充分に登れるはずだ。

 

 僕は持って来たおやつでエネルギーを補給して頂上目指して歩き出した。

 

 上空から僕を見下ろすモノ(・・)の気配に気付くこともなく…………。

 

 

         ◇ ◇

 

 

「————着いた……!」

 

 

 持ってきた木剣をストック代わりにしてなんとか到着したカルチェ山の頂上は開けた場所になっていて、頂上を証明する石碑の他には小さな東屋(ガゼボ)が建っていた。僕の他には人影は見えない。

 

 頂上の中心に立って四方を見渡すと、邸や昨日買い物に行った街が小さく見えた。その景色を見ながら飲んだ水は、今まで飲んだどんな飲み物よりも美味しい気がした。

 

 自分の足でここまで登って来たと思うと小さな高揚感と達成感が湧いてきたけど、僕の目的はこれで終わりじゃない。

 

 

「アントニオは頂上にある崖に咲いているって言ってたよね……」

 

 

 僕は頂上から滑り落ちないように用心しながらグルリと崖を見下ろしてみたけど岩肌には虹色どころか、よくある黄色や赤といった花の一輪も咲いておらず、見えるのはツタやコケの緑色ばかりだった。

 

 

「……ど、どういうこと……⁉︎ 花なんて咲いてない……! ここはカルチェ山で間違いないのに……」

 

 

 目当ての『虹色の花』が見当たらなくて少しパニックになってしまった僕だけど、頭をブンブンと振って自分のほっぺたをパチンと叩いた。

 

 

「————もう一度しっかり確認しよう……! きっと見落としているんだ……!」

 

 

 気を取り直して立ち上がった時、背後から『バサバサ』という余り聞き慣れない音が僕の耳に届いた。

 

 とても嫌な予感がして出来れば振り返りたくなかったけど、そうも言っていられない。僕は意を決してゆっくりと振り返った。

 

 

「……きっと、大きな鳥が羽を休めに来ただけだよね……⁉︎」

 

 

 でも、そんな僕の希望的観測は(もろ)くも崩れ去ってしまった。

 

 僕の視線の先にいたのは、子供の僕のことなんか簡単にペロリと丸呑みにしてしまいそうな翼竜(ワイバーン)だったんだ……‼︎

 

 

 

 ————この時の僕には想像も及ばなかったんだ。あの時、アントニオが意地悪でウソをついていたことに……。

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