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対魔王人類同盟  作者: 茅ヶ崎栄太郎


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第2話 出征

朝靄の中、城壁の上から東を見つめる。


地平線の向こうに広がるのは

かつて穀倉地帯だったはずの平野だ。

今やそこは禍々しい瘴気が立ち込め

おぞましい魔物どもの巣窟と化している。


第二騎士団が国境付近のこの砦に待機して数日。

侵攻準備を整える間、あの忌まわしい光景を毎日見てきた。

城壁の下では兵たちが慌ただしく準備を進めている。

槍の穂先を研ぐ音、馬のいななき、

荷車の車輪がきしむ音が朝の空気に溶けていく。


副官が駆け寄ってきた。


「団長、第一騎士団が到着しました。

 これで全隊集結完了です」


第一騎士団からの伝令が国王陛下からの勅令を携えてきた。

封蝋を切ると国王陛下の直筆で書かれている。


「魔物に蹂躙されし共和国を解放し

 民の安寧を取り戻すべし」


ついに来たか。


半年前に国境のあの平野を渡る風が変わった。

麦の香りを運んでいた風がいつしか

腐臭と獣の匂いを纏うようになった。


我が第二騎士団が守る国境の内側は

魔物の侵入を阻止できているが

隣国である共和国は魔族の侵入を許してしまい

いまや完全に魔物の領域になってしまった。


昨年末に締結した対魔王人類同盟により

共和国とは共同戦線を張るべく準備中だったが

魔王国に侵攻するより前に共和国が魔物に占拠されてしまった。

状況を知るべく派遣された斥候隊は国境付近の村がどこも魔物だらけで

人間がどこにも見当たらなかったと報告している。


「魔王軍の本隊が動いている様子もないのに

 わずかな期間で占拠されてしまうなど共和国らしい有様ですな」


「嘆かわしいことだ。せめて足を引っ張らないように

 自国の領土だけでも守れないのか」


共和国は我が国の東にある商人の国だ。

我が精強なる王国と並びようのない存在だが

魔王の脅威に対抗する為に同盟を結んだ以上

救援に向かわないわけにいかない。


五騎士団、歩兵八個連隊、魔法部隊三個中隊。

王国の全戦力を投じた救援部隊だ。

これだけの戦力が一度に動くのは先々代の大遠征以来だ。


俺は城壁から東の平野を見下ろす。

地平の彼方に蠢く黒い影が見えた気がした。


---


出撃前夜、陣幕の中で隊長たちを集めた。


地図を広げる。

国境線から東に広がる平野部には

赤い印がいくつも記されている。

斥候が確認した魔物の集結地点だ。


「正面から押し通る」


俺は地図を指で叩いた。


「街道沿いに進軍し、敵の主力を引きつける。

 第一騎士団が右翼から回り込み側面を突く。

 我が第二騎士団は中央突破を担う」


隊長の一人が手を挙げた。


「敵の数はどの程度でしょうか」


「斥候の報告では、街道の要衝に

 相当数が集結しているとのことだ」


別の隊長が口を開く。


「魔物にしては妙に組織だっていますな」


「いくら共和国が脆弱と言えど

 短期間に制圧するのは容易ではない。

 それを為せるほどの魔物の群れだ

 油断すれば我々も食い破られるだろう」


隊長たちの顔に緊張が走る。

だが怯えはない。

この男たちは皆、国境で魔物と対峙してきた歴戦の騎士だ。


「明朝、夜明けとともに出る。各自、部隊の準備を」


隊長たちが敬礼して陣幕を出ていく。


一人残った俺は地図を見つめた。


東の平野を超えるとその先には共和国の街があり

多くの人間がそこに暮らしていたはずだ。

そのすぐ近くにこれほどの魔物が集結しているということは

街が無事であるとは考えられないだろう。


---


夜明け。

俺は馬上から全軍を見渡した。


鋼の鎧が朝日を弾いて光の波を作っている。

槍の林が地平線まで続いていた。

これが王国の全力だ。


傍らに副官が馬を寄せる。


「団長、兵たちの士気は旺盛です」


当然だ。

彼らは自分の家族を、故郷を守るために戦うのだ。

魔王国の禍々しい魔族共が我が国に押し寄せる前に

奴らを打倒しなければならない。


俺は剣を抜き、東の空に向けて掲げた。


「王国騎士団! 我らの使命はただ一つ!

 民を脅かす魔の勢力を打ち砕くことだ!」


地鳴りのような鬨の声が応える。


「進め!」


大地を揺るがす蹄の音とともに

王国の全軍が東へ動き出した。

陽光の下、無数の軍旗がはためく。

正義の戦いだと誰もが信じていた。


俺もまた、一片の疑いもなく

剣を握る手に力を込めた。




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