本当は
短編です
目の前で泣かれると、弱い。
「ごめん、本当に」
とりあえず謝るけど、彼女の機嫌は直りそうにない。それもこれも自分が悪いのだから仕方ない。
今日は彼女と付き合って3年目の記念日だ。一週間前から彼女には、行きたいレストランがあるとぼんやりとではあるけど促されていた。その店は、3日前からじゃないと予約が取れないから、予定確認アプリにもいれて、ちゃんとチェックしていたのに、仕事の合間の休憩時間に電話をしようと思っていたのに、朝は覚えていたはずなのに・・・すっかり忘れたまま当日になってしまっていた。
鼻をすすりながら顔を真っ赤にして泣く彼女に、かける言葉が見つからない。そんなに行きたかったのなら、もっと細かく連絡をくれてれば、なんて言ったらもっと彼女を悲しませる結果になるのは目に見ているから、言えない。
「あなたっていつもそう・・・すぐ約束破る!」
そんなに言うほど忘れてたかな。
「付き合ってすぐの時も、旅行行こうって言ってくれて嬉しかったのに、飛行機の予約忘れたり」
あぁ、それは覚えてる。飛行機が事前予約制だなんて知らなかったんだよ。新幹線は当日に取れるからてっきり。
「旅行行った先で陶芸体験したいって言ったのも忘れてたし。予約すらしてなかった」
それも、覚えはある。陶芸体験ができる店が多くて、どこにするか悩んでいるうちに忘れてしまったんだ。
「他にもクルージング連れて行ってくれるって言うから、楽しみにしてたのに、それも予約してなくて・・・受付で白い目で見られたの忘れた!?」
忘れてはいない、あれは恥ずかしかった。でも言い訳させてほしい、あれは、予約の直前まではいったんだよ。君に確認するべきことがあって、ソレを確認してからって思ってたんだ。・・・・・で忘れてたんだ・・・ごめん。
「それに去年は私の誕生日に指輪くれるって言ってたのに、ネックレスだったし」
ん?ちょっと待て、指輪って言ったっけ?ネックレスは確かに渡したけど・・・。
「ねぇ、聞いてるの?」
「あ、あぁ聞いてるよ」
「付き合ってすぐの時、私にブランド物のバッグ買ってくれるって言ってたよね!あれはいつになったらくれるの!?」
ブランド物の・・・バッグ?言ったっけ?
困惑が顔に出ていたみたいで、彼女の顔が悲しみから怒りに変わっていく。
「ねぇ・・・信じらんないんだけど!!どうして簡単に嘘つくわけ!?」
「いや・・・嘘ってわけじゃ・・・」
「じゃぁ去年のクリスマスに言ったこと覚えてる!?」
「去年の?」
勘弁してくれ、ほぼ一年前だぞ?俺何言ったんだ!?
「車買うから乗せてくれるって言ったじゃない!いつ納車するの!?」
車・・・は確かに買おうかと思ってたけど・・・それ君に言ったっけ?
「本当に忘れてたわけ!?・・・なんなの!?」
金切り声を上げる彼女を優しく抱きしめて、背中をさすった。
「ごめん、本当に、俺、君にこんなに悲しい想いをさせてたんだね」
「なによ!今更!!」
これは簡単には怒りを収めてくれそうにない・・・さてどうしたものか。彼女の怒りを一瞬にして沈められるような魔法の言葉、何か、何かないか!?考えろ、俺の頭!がんばれ!俺!!
「ごめん、俺は最低な男だ。でも聞いてほしい。車やブランドバッグのように、普通の人が喜ぶものじゃ、もう君を満足させられそうにないと思ったんだ。だから、今準備を進めてたんだけど、ソレが君を不安にさせていたんだね」
「なに!?また言い訳!?」
反論する彼女に優しく口づけをして、静かにさせる。
「結婚しよう。そう言いたかったんだ・・・ごめんね、俺が不甲斐ないばっかりに」
彼女の顔から怒りが消えたように見える。良かった、落ち着いたようだ。
——さて、問題はココからだ——
これは・・・




