表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

冷めない紅茶と温いジュース

作者: 竹取夜鷹
掲載日:2026/01/28

「ねぇ、聞いてよ」

「なに?ティータイムにちょうどいい話?」

「や。全然丁度良くないよ」

「じゃあ、なんで話すのよ」

「ちょっと語りたくてさ」

「まぁいいや。聞くよ」

「んじゃあ、そーゆーことしようと同人誌を漁ってたんだよ」

「・・・・・・」

「んでさ、NTRの同人誌があって、めちゃくちゃエロかったんだよ」

「・・・どちゃしこ?」

「うん。どちゃしこ」

「・・・今さ、私も君も昼休みにゆっくりしてるじゃん。コーヒーブレイクの最中じゃん。君のそのレッドブル、半分も飲んでないでしょ」

「まぁね。正直、そんなに好きじゃないし」

「じゃあ、なんでそんなもんばっかり飲んでるよ」

「いいからいいから。んでさ、せっかくだしってことで、その作者の本を色々読んでみたんだよ」

「その話、長そう?」

「うん。割と」

「うげぇ」

「いいからいいから。んでその作者でもイケる本とイケない本があるの。なんでだろうなーって。全部NTRなのに」

「・・・え、感想求めてる?んー知らないよ。おんなじ作者なら絵柄も一緒だろうし」

「それで色々読み漁ってわかったんだ。私はさ『何をしたか、してるか、されたかを、説明する、される』ってのが好きなんだ」

「うん。どうでもいい。友達の性癖なんて知りたくなかった」

「ま、数あるエロ本の中で1番興奮したのはさ、女性が両想いだと思ってたのに、実は違ったみたいな感じの本だったの。エロ描写なかったのに、めちゃくちゃ興奮した」

「・・・・・・帰っていい?」

「や、ここからが本題なの」

「えぇ・・・」

「私って恋人がいたの」

「え」

「その元カレとはさ、進学だから別れたんだ。その子は愛知に残るし、私はこっちに来ることになったし」

「ほーん」

「でもさ、別れ話でさ、私が『別れよ』って言ったんだよ。言い訳とか色々用意してね。したらソイツなんて言ったと思う?『わかった』だよ!何がわかったんだよ!」

「それは彼氏が悪いは」

「普通さ、呼び止めたり、理由聞いたりするよね!」

「まぁ、普通なら」

「まぁ、その元カレはさ、幼馴染みなの。私が親の都合から愛知県を7年とかそれくらい離れてたんだ。それでも彼は、ずっと変わらなかったんだ。愛知に帰ってきて、これからは一緒だって思ったら、アイツ、中学受験して、消えやがったんだ」

「んー壮絶。でもさ、中学受験ってことは、その元カレ頭いいの?」

「や、馬鹿だよ。今Fランにいるし」

「え」

「でも、作文とか、文章を書くのが凄い上手だったな。だからこそさ、何も言わなかったのが許せないってわけよ」

「なるほど」

「んで、私がこっちに来るとき、1件だけLINEが来たんだ。『また会ったら、喋ろうよ。ぬるいレモンティーとレッドブルで乾杯しよう』って。ずるいよね」

「うわぁ・・・ずるい。そのレッドブルって?」

「うん。元カレが好きだったレッドブル」

「・・・・・・」

「それで、愛知を出て1年目、私は彼の誕生日に、誕生日おめでとう。ってだけ送ったんだ」

「・・・」

「うるさい。未練がましいなんてわかってる。そしたら、『ありがと』って。『よく覚えてたね。誰にも言ってないのに。2度と祝わないで』って。

「うわぁ、最低じゃん、そのクソ野郎」

「あ、ちがう。これは毎年恒例。私が誕生日を祝って、彼が祝うなって言う恒例」

「へんなの」

「それ見て、笑えちゃったよ。変わんないなって」

「まぁ、見限るよね」

「したらさ、元カレは私に、電話できないかって連絡してきたんだよ」

「・・・」

「浅ましい私は飛びついたよ。朝の6時までずっと喋った」

「やっぱね。そんな気はしたよ」

「電話でさ、元カレは『俺はまだ、あんたのことが好きだよ』って」

「え、キモ」

「どういう意味か聞いたらさ、『さぁね。あんたよりいい女性を探してるけど、中々上手くいかないね。あんたを想ってた時間を何に使えばいいかわからないのさ』って」

「・・・キモいって言うか、重いよ」

「私は、私も好きとだけ言った」

「え、え、え、まだ好きなん?」

「うん。まだ好きだよ」

「・・・ごめん、私には理解できないや」

「したら彼は、相変わらずスカした声で、あんたが恋しいよ。って。俺さ、お前より素敵な女性を見つけれると思う?って。私はなんて言えばいいかわかんなくて、口を閉じたよ」

「そりゃ、なんて言えばいいかわかんないよね」

「最後に彼は『ま、精々祈ってくれ。もうすぐ手術なんだ』とだけ言ったよ」

「へぇ。その手術はどうだったの?」

「私にもわかんない。なんの?とは聞いたけど、目の手術としか言わなかったよ。そんなに重くとらえないでって」

「まぁ、その元カレはきっと不器用だったんだね」

「そうだね。アイツは不器用だった。んで、冬休み、私は彼と相対したんだ。相対して喋ったんだ」

「え、いつ?」

「だいぶ前だけど。1番最初、私もそいつも何も言わなかったし、何も言えなかったけど、彼はレモンティーを渡してきた。相変わらずそいつはレッドブルだった。馬鹿の一つ覚えだね」

「まぁ、バカだしね」

「いつも一緒に座ってたベンチに一緒に座って喋ったんだ。元カレと」

「・・・」

「付き合ってた頃はさ、2人の間にアイツは鞄を置いてたのに、その日は適当に足元に置かれてたんだ」

「よく見てるね」

「まぁね。んで色々喋ったんだ。サークルとか、進学、就職とか他愛のない話」

「まぁ、踏み込まない会話は心地いいよね」

「彼はさ、普段自分のことを全然喋らないんだ。でも、その日はいつも以上に喋ってくれたんだ。目のことだって、左目はもう見えてないし、右目も手術の経過が悪ければ無くなるって」

「なんて病気なの?」

「ん-、本人も病名については言わなかったな。もしかしたら近くに居たらうつる病気だったかもね」

「縁起でもないよ」

「んで、それを聞いた私はさ、何言おうか逡巡してたら、『ストップ、慰めはいらないよ。あんたは自分の人生を謳歌して』って」

「うーん、優しいけど卑怯だね」

「私は、慰める権利も奪われて、溜息をつきそうになったらさ、彼は続けてこう言ったんだよ」

「なんて?」

「大学が終わって、俺の右目が何とかなったら、やり直してくれませんか」

「・・・なんて答えたの?」

「そん時は断ろうと思ったけど、頷くことしかできなかったな。んで、彼と別れて実家で色々考えて、私は電話を掛けたんだ」

「ほん。なんて?」

「私も、君のことがまだ好き。振ってごめんなさい。手術が終わって、目が見えなくても私と付き合ってください。ってね。電話越しにも彼の驚きが伝わってきたよ」

「・・・・・・」

「ちょっと、黙らないでよ。んで、こっちに戻ってくるまでの2週間は、彼の家で暮らしたんだ。スギ薬局でおっかなびっくりコンドームを買ったのに、結局、2人してお酒も飲んでいいムードにもなったのに、セックスしなかったしね」

「ヘタレ」

「うるさい。お互い初めてなんだから。んで、東京に帰ったんだ。それから10日後、彼は、交通事故に遭ったんだ」

「・・・えっ」

「見えてない左側からバイクに激突されて、頭を打って」

「・・・・・・」

「きっと彼は今、両の目で光彩陸離を天国で見てるよ」

「・・・それは、その」

「慰めなくて大丈夫。もう3年前の話だよ」

「・・・まだ、好きなの?」

「うん。愛してる。私の今住んでる下宿には、彼の笑顔の写真と、使えなかったコンドームとひしゃげたメガネが置いてあるんだ。家族に無理言って貰ったんだ」

「・・・そう」

「・・・ごめん、重たい話になっちゃったね。コンビニ行こうよ」

「奢ってあげる。レモンティーでいい?」

「や、レッドブルにしてほしいな」

「・・・そう。じゃあ、私がレモンティーを飲むよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ