悩み多き年頃9
寿里は借りを作りたくない女、相手が誰であれ同等に向き合っていられる関係を望む女。可愛げがないと言われようがそれが私なのだといつも強がって見せる寿里
どこかミステリアスで年齢に似合わぬ色気を醸す寿里そんな寿里とは真逆なもう一人のうら若き女性凜子が顔を見せたのは寿里が訪れた数日後だった 寿里より少し年若い凜子は無邪気で幼子のような黒々とした大きな瞳がとても愛くるしい子だった そんな印象にそぐわない凛子の豊満な胸元にだれもが驚きを隠せなかった。無邪気な子供のまま大きくなったような凛子は男性なら守ってあげたいタイプなのだろうと志桜里は思った 家族や友人に凛ちゃんと呼ばれている凜子はこの店で自分のことを凛と呼んだ。
「ママ、さっきデパートのバーゲンで素敵なワンピースを見つけたの もうすぐお給料日だからそれまで我慢しようと思っていたらバーゲンは今日が最終日だったの」
「それは残念だったわね」
「でもねデパートの買い物に付きそってくれた先輩がそんなに欲しいのなら今買えばいいじゃないかって・・でもやっぱり諦めようと洋服を戻そうとしたら僕が買ってあげるってその服を持って会計に行ってしまったの」
「一緒にいたその先輩が買ってくれた? もしかしてさっきから大事そうに手にしている箱の中にその欲しかったワンピースが入っているのね」
「ピンポーンママ大当たりよ 大当たりといえば朝テレビの占いで今日はラッキーな一日って言ってたわ」
凜子のその少しハスキーな甘い声でおねだりされたら世の男性たちはなんでも聞き入れてしまうのだろうなと志桜里はひとり笑いながら思った。
「立て替えてもらったお金はいつだってちゃんと返すつもりでいるのよ。だけどみんな受け取ってくれないの だから凛は買ってくれた人たちのお誕生日にお財布とか名刺いれとかを贈ってお礼しているの だけど不思議ね凜がこれにしようと手にした洋服は一緒にいる誰かが必ず買ってくれるんだもの 凛がここでいま話したことをもし会社の女子たちが聞いてたら凛は男に媚びる悪い女だって嫌われるのかな」