悩み多き年頃4
寿里は珍しいことに翌日も顔を見せた。同じ週に二度やってくることなど今までなかった。
「昨日は彼のこと吐き出したからか久しぶりにぐっすり眠れたの 志桜里ママ今日も彼の話ししてもいい」
「えぇいいわよ お客様が来たら中断するけど吐き出してすっきりして帰りなさい」
寿里が残念と言ったその男性と出会ったのは通勤で利用する電車だった。たまたま隣に乗り合わせた彼が寿里の置き忘れた荷物を届けてくれたのが縁。それから同じ電車で幾度か顔を合わせた二人はアドレスを交換し食事をする間柄になっていった。彼は多忙な人らしく帰宅は深夜に及ぶことが多かった。寿里が彼と初めて会った日も再会した時も会社や同僚との飲み会帰りの遅い時間帯だった。一度だけだったが寿里は自宅に招かれ彼自慢の手料理カレーを御馳走になったことがあった。彼の身なり同様に整理整頓された部屋に通された寿里は自分の部屋を思いだし恥かしくなった。その日彼は寿里に合鍵をくれた。
「たまにはこうして僕の手料理を誰かに食べてほしいと思って 君が美味しそうに食べてくれたから嬉しくて」
彼はそう言うと合鍵を寿里の手に握らせた。まだ手も握らない関係だったが寿里はその合鍵が彼の愛の告白のように思えていた
それからほどなくして彼の長期出張が決まり寿里は空虚な日々を過ごしていた。休日の午後行く当てのない寿里は彼から渡された合鍵をバッグにいれてマンションにむかった。恋しい彼の香りに浸たり癒されたい、ただそれだけだったが事態は思わぬ方向に流れていった。
「志桜里ママわたし彼から渡された鍵でドアを開けたらね、玄関にあるはずがない見たこともない女性の靴があって・・・わたし金縛りにあったみたいに動けなくなってしまったの そしたら誰かいるのって声がして・・女の人が出てきたの」
「得体の知れない女性と鉢合わせしたのね」