悲しき再会9
最後の一行は波打つような文字で解読不能と思われたが志桜里にはその文字が鮮明に浮かんで見えた
あいしてる…
あなたが最後のちからを振り絞り書いた文字は愛してるだった そうなのよね
志桜里は初めて佐々木の想いに涙していた
別れてからあなたは幸せに暮らしていたのね
私が別れ際に願った約束通りご家族と円満な生活を…
頬をつたい流れ落ちる涙を指ではらいながら志桜里は手紙を抱きしめていた
佐々木さん貴方に出会えて良かった
私もあなたに会いたかった ありがとうって伝えたかった...
佐々木が亡くなりひとつきがたったある日
寿里が沈んだ面持ちで店にやってきた
「寿里ちゃんお久しぶりね 元気にしてたのって云いたいけどその様子だと何かあったみたいね」
「そうなの かれのお父さんが亡くなったの」
「だから元気がないのね」
「うん」
「寿里ちゃん彼からしばらく会えないって言われて落ち込んでいたけど彼はお父さんの事で大変だったんじゃない」
「それもあるでしょうけど他にもあるみたい…私にはなんにも言ってくれないから詳しい事はわからないんだけど」
「お付き合いしている寿里ちゃんにしたら何も言ってもらえないのは寂しいわね」
「そうなの これから人生を共にする相手に口を閉ざす彼のことが理解出来ないわ 本当に私の事を愛してくれているのかも疑いたくなってしまう」
「たしかにそう思いたくなる気持ちわからないではないけれど彼からしたら余計な心配をかけまいとする寿里ちゃんへの愛情でもあるんじゃない 彼自身の個人的な問題なのかもしれないけど でも解決したらきっと話してくれると思うから信じて見守ってあげたらどうかしら」
「いま私に出来る事はそれしかないわね ありがとうママ」
「寿里ちゃん彼のお父様の葬儀には行ってきたの」
「斎場ではじめて彼のお母さんにお会いしたけど場所が場所だけに簡単なご挨拶だけで…あの時の彼のお母さんは夫を亡くした人とは思えないほど凛と構えていて圧倒されたわ」
「彼のお母様はしっかりした強い人なのね」
「彼が話してくれたんだけど彼のご両親はとても仲が良くてお母さんはお父さんと結婚した私は幸せ者よねっていつも言っていたそうなの 彼のお母さんは幸せだったから悲しみの感情より感謝の気持ちでいっぱいだったんだわ だから彼のお父さんの遺影を微笑んでみつめていたんだと思うの」
「すてきなご両親に育てられた彼も幸せね そんな彼となら寿里ちゃんも彼のお母様みたいに幸せになれるわ」
「そうなれたらいいな」
「そういえば彼を紹介してして貰ったけどまだ名前聞いてなかったわ」
「え~そうなの わたしママが彼に合格くれたから舞い上がってしまっていたのね ごめんなさい」
「いいのよ でも彼も名前ぐらい自分から名乗っても良かったのに緊張してたのかしら」
「緊張してたと思うわ いま思うとかれ体がガチガチに固まっていたもの」
「そうだったの 落ち着いた雰囲気だったからそうは見えなかったわ」
「遅くなりましたが彼の名前は佐々木秀之さんです 彼は西條病院の医師をしています」
「西條病院…」
「だから彼はお父さんを自分が働いている西條病院に転院させたらしいの」
「ならお父様は西條病院でお亡くなりに...」
「はい、ひとつき前に」
志桜里は体から血が引いていく感覚に襲われていた




