悲しき再会7
渡された封筒をカウンター下の引き出しに入れた志桜里はこの世を去った佐々木の果たせなかった悲しき再会に肩を落としながらも冷静沈着な自分に驚いていた
あんなに好きだった大切なあの人が亡くなったというのに何一つの感情も沸き上がらない…なぜ
志桜里は時計を見上げ気持ちを切り替えランチの仕込みに取りかかった
「ママ今日のランチはなんだい」
「あら、やまちゃんいらっしゃい 今日は早いんじゃない」
「うちのかみさんが朝早くから日帰りバスツアーに行っちまって朝飯まだなんだよ」
「まぁそれじゃお腹ペコペコね 今日はカジキの茸添えソテーとカボチャのサラダ、小松菜となすの煮浸し、キュウリと蕪の漬物、あおさの味噌汁、デザートはパインが入ったヨーグルトよ」
「いいねぇ ここのランチは女房の作るショボイ飯とは大違いでうまいんだよなあ」
「やまちゃんそんなこと奥さんの耳に入ったら大事になるわよ また店で大喧嘩なんてイヤよ」
「そうだよな かみさんの料理もそこそこに上手いってことにしてママ早めのランチをひとつ急いで作ってくれ」
「了解です 腹をすかしたやまちゃんのために美味しいランチ作るから待ってて」
好評な限定10食の日替わりランチはいつもあっという間に終了となり食べられなかった近隣の会社員は後で珈琲飲みに来ますと言って店の並びにある定食屋さんにいくのがお決まりになっていた
定食屋さんの親父さんは
ママのおこぼれ客のおかげで繁盛させて貰って有難いよと顔を会わせる度に高笑いして見せた
いつもと変わらぬ一日を終えた志桜里は店のカウンターに座り珍しいことに自分のために入れたロイヤルミルクティをのんでありし日の佐々木を思い出していた
甘いものが苦手なあなたが唯一、一緒に飲んでくれたのがこれだったわね
飲み終えた志桜里はカウンターの引き出しからハサミと封筒を手にしてテーブル席に座り直した
ハサミで封をあけると中に手紙と共に小切手が入っていた
志桜里はその額面に体を硬直させた
なぜこんな大金を…
小切手を持った志桜里の手は震え出していた




