悲しき再会6
「彼女が…彼の奥さん」
私など来るべき場所ではなかったのだと志桜里は痛感した
たとえ愛したあの人が自分の命火が消えるまえに私に会いたいと痛切に願っていたとしても断わるべきだったと志桜里は肩を落とし病院を後にした
数日後店に再び興信所の男性がやって来た 志桜里は佐々木が亡くなったのだと直感した
「いらっしゃいませ」
「珈琲を御願いします あれから病院に行かれたのですか」
「はい貴方が店に要らした翌日に」
「そうでしたか ありがとうございました だとしたら佐々木様とはお会い出来なかったのでは」
「えぇ会うことは出来ず帰ってきました」
「…私がこちらに来たのは佐々木様がお亡くなりになった事をお伝えするためです」
「貴方が入って来たときにそんな気がしていました あの日帰ろうとしていたとき偶然にエレベーターから慌てた様子でおりてきた女性が看護師さんと話していた会話を聞いてその人が佐々木さんの奥さんだと…そして彼は深刻な病状なのだと察しました」
「残念でなりません 貴方を見つけた事をお伝えしたとき佐々木様は本当に見つかったのですか 彼女に会えるのですねと大層喜び楽しみにしていましたから」
「報告のためわざわざ足を運んで下さりありがとうございます」
「報告もそうですがわたくしが今日来ましたのは佐々木様からお預かりしていたこちらをお渡しするためです」
「あの人が...わたしに」
「はい、あなた様に届けるようにと」
興信所の男性が鞄から封筒を差し出した
「これは佐々木様に自分が亡くなった後に渡して欲しいと託されたものです これでわたくしのお役目は終わりますが本当に残念でなりません」
言い終えた男性はすっかり冷めきった珈琲を美味しいですねと飲み干しお釣は結構ですと千円札をカウンターに置き足早に帰って行った




