悩み多き年頃20
父親から真実を聞かされた寿里は真相を志桜里に教えてくれた
寿里の父親は医療器具会社の営業で行った取引先病院で当時研修医だった寿里の実母と出会い付き合うようになった。妊娠がわかり一人で育てる覚悟をした実母は友人を頼り一人日本を離れ異国で寿里を生んだ。子供を抱いて帰ってきた実母に家族は憤慨し妻帯者の男(寿里の父親)を訴えるため弁護士を呼びだしていた。さすがに若かった実母には為す術もなく寿里の父に連絡し事の全てを話した。妊娠していたことも知らず連絡が途絶えた実母を案じていた寿里の父は瞬時に里子に出されてしまうなら自分が引き取ると伝えた。
そして弁護士に抱かれた寿里が両親のもとに・・その時、寿里の母は何も聞かされていなかった。事前に父は弁護士になにも知らない妻に事情を話して納得させてほしいと頭を下げて頼んでいた。
母は怒りより弁護士に抱かれ安らかな寝顔の赤ちゃんに心が奪われた。子供が欲しいと願い続けていた母は父が承諾書にサインする事を黙認し自分の手で育てる決心をした。その日はじめて夫の不倫を知り相手が年若い女性で子供まで産んでいた事を母は知らされたが母は考える時間さえ与えられぬまま父が愛した女性の子供を胸に抱きしめていた。その話しに寿里は嗚咽し泣き濡れてしまったと話してくれた。寿里も両親への気持ちをさらけ出し両親はこれ迄の不仲だった殺伐とした家庭環境を詫び今日から再出発しようと和解できたと初めて笑顔を見せ帰って行った。
志桜里は話しを振り返り寿里が一度だけ口にした聞き覚えのある名前に気がついた。
まさかそんなことあり得ないわ
ゆりこ・・この名前は凛ちゃんの・・