悩み多き年頃2
「志桜里ママわたしね、お付き合いしていた人はいたのよ でも終わってしまったの」
「それじゃどんな人か見られないのね残念だわ」
「残念・・そうね、あの人は残念な人だった」
「寿里ちゃんのその残念はいい意味での残念なの」
「いいのか悪いのか、う~んどっちなのかなあ」
「いやだわ、まるで他人事みたいね」
「だってそもそも付き合ったって言える関係だったのか、それさえ疑問なんだもの」
「それじゃ、さっき話していた会社の人と変わらないじゃない」
「全然ちがうわ 結婚してもいいって初めてそう思えた人・・気持ちを口にして確認したわけじゃなかったけど」
「彼の気持ちを聞いてみたいと思わなかった」
「不思議なんだけどわたし彼の気持ちはどうでもよかったの」
「寿里ちゃんは私と似ているわ」
「ママもそうなの」
「相手はどうあれ自分の気持ちを優先してしまうのよね」
「そうそう、自分の気持ちが一番でそんな恋愛をしているときが最高に幸せ」
「寿里ちゃんは別れてもあまり引きずらないタイプなんじゃない」
「そんなことない引きずって引きずりまくっていたわ」
「そんなに引きずりまくった恋話なら聞きたくなっちゃうわねぇ」
「・・・・」
「胸に秘めていたい大切な思い出のようね」
「そんな大層な事じゃないの うまくいかなかった恋愛は話す気にはなれないだけ」
「話す側にとってはそうね だけど聞く側にしたらハッピーエンドじゃない悲恋物語は人生の機微が見え隠れして奥深いものだったりするのよ あっごめんなさい寿里ちゃんの気持ちも考えないで余計なこと言い過ぎたわね もうこの話しは止めましょう」
寿里は別れた男を思い出しているのか愁いを帯びた顔でコーヒーカップの縁を小指で撫で回していた。