悩み多き年頃18
寿里の闇の真実を明かされた志桜里は団体で入ってきた客の応対に忙しくなり話しどころではなくなっていた。しかし重苦しい空気を変えてくれた団体客は寿里にとって救いの神のようで有りがたいことだった。
「寿里ちゃん待たせてごめんなさい はいミルクティーよどうぞ ところで寿里ちゃんは家に帰ってから伯母さんとの経緯をご両親には話したの」
「両親がずっと隠してきたってことは話したくなかったからでしょう だから二人には何も言えなかった」
「そう、本当ならご両親の口から全てを話して欲しいでしょうけれどね」
「志桜里ママ、わたしは今までお母さんと信じてきたお母さんの子供じゃなく・・お父さんの不倫相手の子供だった
だったら父は伯母さんが言った最低な男よね 愛人の子供を母に育てさせるなんて・・いくら母が子供がもてない体だったとしても私が母の立場なら耐えられないわ それなのにお母さんは実母のように私を育ててくれた 血が繋がっていないなんて疑う余地さえないほど私を愛してくれた
でもお父さんはなぜ私を引き取ったの 産んだ人が・・実母が私を望まなかったから・・だったらどうして私を誕生させたの どうして堕胎しなかったのどうしてわたしを」
「寿里ちゃん落ち着きましょう ほらミルクティー飲んで少し落ち着きましょう あっ寿里ちゃんちょっと待っててね」
団体客が席をたち始めていた。会計を済ませた客人を志桜里は店のドアを開けて見送っていた。
志桜里が戻るのを待ってましたとばかり寿里は話しを始めた。
「昨日うちに伯母さんが来たみたいなの お母さんに口を滑らしてしまったことを謝りにきたのだと分かったわ 寝ようと電気を消そうとしたときお母さんが部屋にきて、全てを話してくれたの」
「お母さんの口から聞けたのね」
「今まで一番辛かったのはお母さんなのにお母さんは強い人・・私の気持ちを真摯に受け止めて話をしてくれたの 最後に私をきつく抱きしめながら寿里が生まれ墜ちたその時に神様がお母さんが願っても叶わない愛すべき大切な宝物を授けようとあなたをこの手に抱かせてくれたのよ これからもずっとあなたはお母さんの一番大切な宝物よって」
「とっても素敵なお母さまね」
「うん、志桜里ママには勝てないけど見た目は志桜里ママみたいに若くて美形の自慢のお母さん」
「それじゃ寿里ちゃんも美形だから親子で歩いていたら皆んな振り返るでしょうね」
「私お父さんにはちっとも似ていないから産んだ人に似てしまったみたい お母さんは成長して父の愛人に似てくる私を見てどんな思いでいたのかな お母さんの気持ち考えると私ごめんねお母さんって・・いつも泣きそうになるの」
「確かに成長の過程で寿里ちゃんがお父さんの相手に似てきたとしたらお母さんは複雑だったでしょうね でもねそれでも変わらず愛して育ててくれたお母さんは本当に凄いわ 感謝して親孝行なさいね」
「お母さんにはいっぱい恩返ししたいと思ってるでも父のことは・・」
志桜里は白黒ハッキリした思考を持つ寿里にとって母を苦しめ続けた父は黒以外の何者でもないと糾弾する寿里の気持ちもわからないではなかった。