悩み多き年頃17
寿里は両親の秘密が自分の出生にまで及んだことにショックを隠せなかった。伯母にとっては悪戯なきたわごとだったかもしれないが寿里には信じがたい話だった。
「小さかったあの寿里ちゃんが大学生だもの私が老けるのも当たり前ね 久しぶりに寿里ちゃんを見てあなたのお母さんはよくぞこんにちまで耐えてきたと思うわ 寿里ちゃんはどんな時もお父さんでなくお母さんの味方でいてね お母さんの事を悪く言ったら罰当たりよ 罰を受けるべきはあなたのお父さんなんだから」
何のことなのか分からない伯母の話に寿里が固まっていたとき一緒にいた伯父(寿里の母の兄)が口を開いた。
「もうやめなさい きみはいつも一言、いや二言三言多い 寿里ちゃんはもう子供じゃない、いっぱしの大人なんだからちゃんと理解してるよなぁ寿里ちゃん」
伯母の話しが読めないまま寿里は仕方なく伯父に笑顔を返すしかなかった。
「わたしは血を分けた身内じゃない嫁だから余計な話しはするなってことね 貴方は男だから寿里ちゃんのお父さんの見方なのね」
「そんなことはない、僕が知る彼、寿里ちゃんのお父さんは聖人君子のような人だ どんな人物だろうが誰でも生きていれば一つや二つ過ちや間違いはある」
「善人そうに見えた彼(寿里の父)も所詮は女の敵みたいな男だったってことよね あなたが言う聖人君子の彼は妻ある身でありながら他の女に入れ込んで子どもまで・挙げ句にその赤ちゃんを子どもが出来ない貴方の妹(寿里の母)に育てさせて」
「やめろ、やめるんだ
寿里ちゃんの前で親を悪く言うのは止めなさい 寿里ちゃん悪かったね 伯母さんのこと許してやってくれ おい何をしてるんだ お茶なんか飲んでないで早く寿里ちゃんに謝りなさい」
伯母は親に叱られた幼子のように頭を下げた。
「伯母さん、わたし今日ここに来られて良かったわ ずっと不可解だった父と母のことがわかったから 直接両親から聞けたらよかったけど・・ 伯母さん話してくれてありがとう わたしショックだけどこれ以上のことは両親がいつか話してくれるのを待つわ」
「・・寿里ちゃんは今日まで何も知らなかったんだね・・妻が話したこと・・本当に申し訳ない許してくれ つらい思いをさせてしまったね」
伯父の言葉に今にも泣き出しそうな寿里を目にした伯母は両手で自分の口を覆いながら震え出していた。
「寿里ちゃん許して・・私とんでもないこと・・本当にごめんなさい」
自分の浅はかな言動を詫び続ける伯母を背に寿里は足取り重く自宅に戻った。