悩み多き年頃15
「今お客は凛ちゃんだけだから一旦お店を閉じてしまいましょう」
「お店閉めたら常連さんたち困るわ」
「いいのいいの、馴染み客みんな心根が優しいから許してくれるわよ」
「ありがとうママ、凛のこと心配して待っていてくれたのね」
「えぇ本当に心配して待っていたわ 凛ちゃんの未来が変わるかもしれないんだもの」
「凛ねあれから色んなこといっぱい考えてお祖父ちゃんに結婚のことは仕切り直して欲しいってお願いに行ったの」
「お祖父様はご立腹だったんじゃない 凛ちゃん大丈夫だった」
「ママが言ってたようにお祖父ちゃんは支配的な所があるけれど頭ごなしに怒ったりする人じゃないの 院長じゃない自宅にいるお祖父ちゃんはどちらかと言うと温厚な部類にはいる優しい人 だから凛はこれまでお祖父ちゃんの言うことを聞いて来られたのだと思う でも今回初めて自分の気持ちを伝えた時お祖父ちゃんの顔が一瞬変わり怒りが見えてものすごく怖かった・・それでも凛にも意地があったからこれからの自分の生き方やこれまでの気持ちを洗いざらい伝えたの」
「凛ちゃんは自分の人生をちゃんと考えて何かが・・未来が見えたのね」
「うん、凛ね語学力を身に付けたいと思ったの 会社で語学が堪能な人はみんなイキイキ仕事していてすごく輝いて見えるの 凛は雑務というか誰かに頼まれた補助的な仕事をこなしてそれなりに充実して楽しく仕事出来ているけどこれは誰ても出来る仕事なんだって考えたら凛でなければできない仕事を任せてもらえるようになりたいなって思ったの そのためには語学を身につけないと・だから留学しようと」
「日本を離れるってこと」
「そのつもりで上司に気持ちを話して辞表をだしたらちょうどニューヨーク支店で総務の人員要請があるから行ってみるかと言われて行くことにしたの」
「良かったわね 凛ちゃんは自分の人生を自分の手で掴んだのよ 新しい一歩が始まるのね 嬉しいわ」
「ママありがとう とりあえず結婚の件は凛の決意をわかってくれたのか昨日お祖父ちゃんに呼ばれて病院に行ったら凛の好きなようにやってみなさいってお許しが貰えたの 凛すごく嬉しくてお祖父ちゃんに抱きついてキスしてしまったわ」
「まぁキスを お祖父様ビックリしたでしょうね」
「ものすごく驚いていたけど凛に頑張れって言ってくれた」
「話がもどるけど結婚するはずだった彼に・・凛ちゃんはちゃんとお話し出来たの」
「もともと彼とは病院のお祖父ちゃんの部屋で合うだけでいつもお母さんかお祖父ちゃんが側にいたの 外で会うのも家族と一緒の食事くらいだったからお祖父ちゃんから彼の事は心配しないでいいって言われたの」
「言われるまま結婚を承諾した凛ちゃんだけどいま振り返ってなにか思うことある?」
「彼の事かな 彼は凛と同じ似ているなって思ったの だから彼にも凛みたいに勇気を出して誰かの言いなりじゃない自分の望む人生を歩んでもらいたいと願ってるわ」
「そうね」
「ママわたしね気になる話しを聞いてしまったの お祖父ちゃんの部屋に忘れてきた携帯を取りに行ったらドアのすき間から電話していたお祖父ちゃんの声が聞こえて
「百合子の子を探してくれ」って・・百合子は凛のママの名前なの たしかに百合子の子って言っていたけど聞き違いかな」
「いらぬ詮索は駄目止めておきなさい 今は余計なことは考えないで 凛ちゃんは自分のやるべき事に集中なさい」
「そうね、ママのおかげで明るい未来の扉が開いたんだもの夢が実現できるように凛、頑張ってくるね」
「凛ちゃんと会えなくなるのは寂しくてたまらないけど帰って来た時は顔を見せて約束よ」
「まだお別れは早いけど大好きなママとの約束は必ず守るわ」
凛との二時間ほどの会話が終わり店を開けると次から次と常連客が入ってきた。閉まっていたから心配したよと言ってくれる常連客らの気持ちが志桜里は嬉しかった。
「ご心配かけたお詫びに私から珈琲一杯みんなにご馳走するわ~」
常連客の歓声が上がりいつもの賑わいに志桜里は感謝の笑みをかえしていたが凛の祖父が口にした言葉が頭から離れなかった