悩み多き年頃14
寿里は翌週彼を伴って店にやって来た。彼の第一印象は生真面目な医師そのもの。話を交わした志桜里は彼が医師として真剣に医療に取り組んでいる姿勢が垣間見えて寿里の男性を選ぶ目は確かだと感心していた。責任感と義務感を背負い医師として使命と真摯に向き合い信用を得てきたに違いない彼
しかし好きで忘れられない寿里に思いを告げぬまま他の女性と結婚を決めたという彼に自分の信念に忠実で他者にも偽りなく接する実直な人とは異なるような気がした。しかし志桜里は好感触の彼に合格点をつけた。寿里が店に入ってきてすぐそっと手渡してきた一枚のメモを志桜里は調理場に入り開き見た。書かれてあった合格と不合格の合格の方に花丸を付けた志桜里は帰り際の寿里の手に握らせた。寿里には志桜里の答えが分かっていた。なぜなら常連客のほとんどが志桜里は嘘などつけず表情に出てしまう事を知っていたから。
寿里は志桜里に駆け寄りの耳もとでそっと囁いた。
「志桜里ママ今日はありがとう ママの顔で答えが分かったわ 彼は合格だったのよね」
志桜里は静かに頷いて笑顔を返した。
寿里を優しく見つめながらこれからも宜しくお願いしますと頭を下げた彼に志桜里も同じように寿里ちゃんを宜しくお願いしますと母親のように深く頭を下げた。
頭を上げた志桜里は寿里の目からこぼれ落ちた涙を見逃しはしなかった。志桜里は寿里のその涙が闇に繋がっているそんな気がしてらなかった。志桜里は肩寄せて何度も振り返り帰って行く二人にいつまでも手を振り続けていた。
寿里ちゃんには幸せになってほしい だけど今のままじゃ幸せは・・闇を全部吐き出させなきゃ寿里ちゃんはいつまでも楽にはなれない・・
志桜里は寿里の重荷を取り払い楽にしてあげたいと心から思った。
寿里が来た三日後待ちに待ったもう一人の女性客凛がやって来た。凛はいつもの愛くるしい笑顔でカウンターに駆け寄ってきた。
「ママ~会いたかったわ」
「わたしも凛ちゃんが来るのずっと待っていたのよ」
「本当にほんと?凛のこと忘れないで待ってくれた」
「本当よ、まだか、まだかと待っていたわ」
「ママの気持ち凛すごくうれしいな」
「凛ちゃん今日は私にいいお話を聞かせてくれるためにきたのよね」
「ママは凛のことどうしてわかるの」
「だって凛ちゃんの事が大好きなんだもの当然でしょ」
「凛もママが大好き、だからいの一番に報告しなければって急いで来たの」
「嬉しい知らせなのね聞きたいわ」
「とてもいい知らせよ、あのね凛ね」
「あっ凛ちゃんちょっと待って」