悩み多き年頃13
「彼はね高校のとき仲良しだった友達が通う大学の医学部の先輩だったの 彼女に誘われて行った飲み会で私その先輩に心を奪われてしまって彼女に思いを話したら1ヶ月位経ったある晩に憧れのその先輩から電話がきて時間があるときにまたみんなで食事会しようってなってそれが始まりだったの 私の一途な女心など知らない先輩とは友達以上恋人未満の関係が一年くらい続いたけどいつしか連絡が途切れそれっきりになってしまったわ」
「それっきりって、寿里ちゃんは彼に連絡しようとは思わなかったの」
「彼に会いたかったわ 声だけでも聞きたくて連絡したかったけど医学部の先輩たちは今大変なときだから飲み会にはもう参加出来ないらしいって聞いて学業の邪魔したくなくて連絡しなかったの そしたらいつの間にか疎遠になって会えなくなったの」
「寿里ちゃんは自分の気持ちを優先して行動する子だけど相手の立場も考慮する女性だったのね だけど昔から相手の気持ちを確めることだけは苦手みたいね」
「そうなんだけど・・ 高校の同窓会で医師になった先輩の近況を聞いて彼のことが忘れられない私は自分でも信じられないんだけど彼に気持ちを伝えようと電話をかけたの」
「その電話で結婚相手がいると言われたのね やっとさっきの話しが少しずつ見えてきたわ」
「彼にそんな人がいるなら私はあきらめるしかないでしょう だからきっばり先輩のことは消し去っていたのに突然電話がきて」
「電話はあこがれのその先輩からね」
寿里は志桜里を見据え大きく頷いた
その電話で彼の結婚話しが白紙になった事を寿里は知った
「電話で結婚話がなくなったことを聞かされたのね でも彼はどうして今になって寿里ちゃんにそんなことを伝えてきたのかしら」
寿里は顔を赤らめなから話しを続けた。
「先輩も私のことが好きだったって、私が忘れられなかったように先輩もわたしを忘れず思っていてくれていたの」
「寿里ちゃん水をさすようで申し訳ないけどおかしいと思わない だったら他の人と結婚の約束なんかしないで寿里ちゃんに告白してお付き合いすれば良かったんじゃないの」
「ママの言うようにそうなんだけど人にはそれぞれ色々事情があるでしょう きっと彼にもなんか訳があったと・・」
「寿里ちゃんがそれでいいのなら構わないけど」
「ママわたし、そういう事・・先輩が話したくないことを無理じいしてまで聞きたいと思わないの 彼が話したくなったとき話してくれたら・・私はそれでいいの」
「そうね、寿里ちゃんは自分が納得出来ていれば相手を追及したり問い詰めたりする性格じゃないからそれで良いのかもしれないわね とにかく好き同士で付き合う事になったのだもの良かったわ 寿里ちゃん彼とのご縁を大切にしてね」
「ありがとうママ 必ず彼を連れてきますから会って下さいね」
「えぇ、楽しみに待っているわ」
志桜里は初めて来店した寿里に感じた重苦しい影が薄れているような気がした。口にはしないが寿里がひとり胸に抱えている闇に気ずいていた志桜里は重くて辛いに違いない闇を背負う寿里の帰る姿を見つめ続けていた。
寿里が抱えているであろう重荷を取り払える日が来ることを願いながら愛する彼と幸せになって欲しいと志桜里は思った
寿里が苦しんでいる原因が何なのか・・以前に寿里が発した言葉を思い出した志桜里には思い当たることが一つあった