悩み多き年頃12
凛子は半月経っても姿を見せなかった。凛子は自らの意志で自分らしく生きる道を選んだに違いないと志桜里は思っていた。そしてもう一人顔を見せなくなった寿里を志桜里は案じていた。
寿里ちゃんどうしたのかしら・・
10月に入ったというのに暑い日が続いていた この暑さはまだ続くと新聞の天気予報に載っていたがお昼過ぎから恵みとも言える雨が降り始め夕刻には夏から秋へ季節は一変していた。雷が鳴り響き雨足が強くなったそんな時真っ赤な大輪の花柄の傘を閉じて店に入ってきたのが寿里だった。
「まあ寿里ちゃんお久しぶり」
「ご無沙汰でした やっぱり志桜里ママの顔を見ると元気が出るわ」
「お仕事忙しかったの」
「仕事じゃなくプライベートの方でいろいろと」
「そうだったの でもまた来てくれたってことは万事解決したそういうことね」
「万事ではないけど・・そうね」
「寿里ちゃんの笑顔が見られて嬉しいわ」
「志桜里ママ、わたしママに会ってほしい人がいるの」
「寿里ちゃん私に会わせたい人って・・彼氏」
寿里は頬を赤らめながら頷いた。
「寿里ちゃん喜んで会わせて頂くわ」
「ありがとうママ」
「寿里ちゃんのお目にかなった彼なら間違いなく素敵な紳士なんでしょうね 楽しみだわ」
「紳士的ではあるけど完璧な人間なんていないでしょ、だからこの先彼の嫌な面も見えてくると思うわ」
「最初から互いを分かりあえる恋愛なんてないんじゃない 好きだからこそ何でも知りたくなるし分かり合いたいから嫌でも相手の懐に入り込まざる得ないって事もあるんじゃないかしらね」
「だとしたら私おかしいのかな あまり相手の事を知りたいとは思わないの みんなは好きな人のことを知りたいって思うものなの」
「寿里ちゃん前に言っていたわよね 相手のことより自分の気持ちを優先するって 今回もそうなの」
「今回はちょっと違うかな 彼は大学時代に交際していた人なの 別れてからもずっと忘れられない人だった 就職してしばらくしてから彼にもう一度気持ちを伝えたくて勇気を出して電話した事があったの そしたら彼が僕には決まった結婚相手がいるからゴメンって・・」
「ちょっと待って、その彼にも結婚する人がいたの まさか寿里ちゃんその彼とお付き合いしているの」
「志桜里ママ安心して 彼は結婚なんかしていない今も独身よ ママは正直だからすぐ顔にでちゃうのね わたし笑顔の志桜里ママが大好きだけど困り顔の志桜里ママも可愛いくて好きだわ」
「好きだわって寿里ちゃんは暢気に笑っているけど話がまったくよめない私にしたら笑うどころじゃないわ」
「そうよね、ごめんなさい 彼と私のこと志桜里ママに分かるように話すわね」
この寿里の話が後々もう一人の女性を巻き込み驚きの思わぬ展開を見せる事になろうとは志桜里は知るよしもなかった。