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少年達の冒険記  作者:
9/11

母は強し

「こんな時間に何の御用で?」

「いやね、私の息子がこちらで御用になっていないのかと思いまして」


 扉を開くとそこに居たのはハットを被ったハリーの父と両隣りに警備隊。腕を後ろに組んで瞬きもせずにアレックスの母の目をじっと見つめて問い掛ける。

 アレックスの母は腕を組んで微笑み「いませんよ」と呟いた。


 その時ハリーの父はニヤッと笑い、一箇所だけ金歯になっている部分を輝かせる。それが合図だったのか両隣りにいた警備隊は背中にかけていた剣を取り出し、アレックスの母に向けた。


「セラさん、嘘を言っちゃあいけませんよ、ここに居るのは分かってるんです」

「証拠はどこにあると?」

「偶然にもうちの犬はどうやら鼻が効くようでね」


 ハリーの父の脚の間からマントを羽織ったビッグがゆっくりと顔を出して歯を向ける、それはまるでハリーの父と同じ様にこちらに笑顔を向けているようだ。

 アレックスの母はハリーの家の事もハリーがどんな教育を受けてるのかも知っており、昼間にアレックスがマントをハリーに貸すと言って持ち出して行ったのも、寝起きながらその光景を記憶している。


 ビッグはきっとマントについたハリーの匂いを辿ってここに来たのだろう。


「……おいアレックス、どうする」

「くっそ……」


 その様子をお風呂から上がった三人が脱衣所の扉の隙間から見ていた。


 服を着たものの、今静かにこの場から出てもビッグの耳でバレてしまう、飛び出して走ったとしてもアレックスとリュウは逃げ切れたとしても、ハリーは確実に捕まる。


 この状況、かなりピンチだ。


 アレックスの母はこちらを見ている三人にどうやら気付いたようで、後ろに腕を持っていき、人差し指で三人に見えるようにある方向を指した。

 アレックスがそれに気付き、指が指す方を見ると地下へ続く戸がそこにはある。


「で、私の息子はどこに」


 ハットのつば越しにアレックスの母を見るハリーの父。アレックスの母は指していた指を戻し、三本の指を出した。

 アレックスはカウントダウンをしてるのを瞬時に気付き、後ろにいる二人の方を振り返り「出るぞ!」と声を掛け、指の方に再度注目すれば一本となっている。


 その時、アレックスの声を耳にしたビッグが立ち上がり吠えた。指が閉じられた瞬間、三人は飛び出し、三人の道を塞ごうとするビッグをアレックスの母は一蹴りいれた。


 キャンッと鳴いて壁にぶつかって崩れ落ちるビッグ。三人は構わず無我夢中で戸に向かった。

 警備隊の一人は走るハリーを見つけ、アレックスの母を押し退けて捕まえようとするが簡単にはいかず、お腹に勢いが付けられた膝を打たれれば床に倒れ、剣を振りかざすもう一人の警備隊には一度剣の攻撃を避け、空気を切る様に顔を蹴り上げた。


「お前の母ちゃんやっぱやべー……」

「この世界で一番強ぇ生き物だぜ」


 地下に入った三人は入って直ぐに古いランプを見つけ、隣にあったマッチで火をつけて暗闇を明るくさせた。

 昔この近くには採掘場があったらしく、ここはその堀跡でできた地下通路。


 以前アレックスはその話を長老から聞いた事があり、二人にもその事を話した。当てもなくただ三人は進んで行くが、その道中ハリーが立ち止まった。


「ハリー?」

「……僕のせいでアレックスのお母さんを危険な目に合わせちゃって……ごめんなさい」

「何言ってんだよ、お前は何も悪くねえよ」

「そうだよハリー、俺の母ちゃんすっげぇ強ぇんだぜ!! ハリーの父ちゃんなんかボッコボコにやっつけるに決まってんだろ!!」

「アレックス、それってハリーの前で言ってもいいのか?」

「あ、ハ、ハリー! これはその、そうじゃ……」

「良いんだ、僕は父上の事が好きじゃないから、むしろアレックスのお母さんにコテンパンにやられちゃえ!! って思ってるよ!!」


 ランプを持つリュウは後ろで立ち止まるハリーにランプを向ける。アレックスは自分の母の強さを既に分かり知っている為、謝るハリーの両肩に手を置いて笑顔を見せた。


 ハリーはそんな二人に今まで打ち明けられなかった事を話し、ハリー自体はとても爽快感があるようだが二人はぽかんとしながらハリーを見る。

 

 二人はしばらくして顔を俯かせて、ハリーは二人に「どうしたの?」と焦りながら聞いた。


「ハハハッ! ハリー! よく言った!!」

「ハリー流石だ! それでこそ男だ!!」


 二人は顔を上げて口を大きく開けて笑った。リュウはお腹を抱えながら笑い、アレックスはハリーの肩を叩きながら笑っている。


 ハリーはしばらく放心したように二人を見ていたが、釣られてハリーも笑い、地下はランプ以外の何かでまた更に明るくなった。

 三人はその後もしばらく歩き続け、光の先にある物を見つけた。


「これなんだ?」

「これトロッコだよ!! 前に本に写真付きで載ってたんだ!! 確か採れた石とか土とかを入れて、この線路を走ってどこかへ運ぶんだ!!」


 三人はトロッコの前を囲むように立ち、不思議そうにトロッコの中を見たり触ったりとするがピクリとも動かない。

 子供三人は余裕で入る大きさのトロッコ、石で作られている為に錆び付いてはいないが少し表面はボロついている。アレックスは「動かねぇのかよ」と言ってトロッコの中に入る。


 リュウはランプを足元に置いて近くにあった大きな石に腰をかけ、ハリーは動かない事に残念がりながら地べたに座った。

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