少年達の親
降りようとしたアレックスとリュウはハリーの声で顔を上げ、ハリーが向いてる方向へと顔を向けた。
特等席には村長とハリーの父が座っており、その周りに警備員が二人いる。「まずい」と三人は同時に心で呟いたが既に手遅れであり、マントは見事ハリーの父を覆うように被さっていた。
慌てて警備隊がハリーの父に被さったマントを退かし、ハリーの父は怒りから赤くなった顔を広場に向けた。
「どこのどい……ハリー! そこで何してるんだ!!」
必死に周囲を見渡して誰がマントを飛ばしてきたのかと探すハリーの父は、自身の像に登っているハリーの姿を目に、大声でハリーに向けて問い掛ける。
村の住人達はその声の行先、三人がいる噴水へと注目した。
父親に見付かってしまって動揺して固まっているハリーをアレックスはかつぎ、像のてっぺんから水が浸る場へと飛び降りれば水しぶきが周りにいる住人達にかかる。
それをいい事に開いた道を走り始めた二人。既に後ろには追いかけて来た警備隊がおり、ハリーをかつぎながら走るアレックスにはすぐ追いつきそうであった。
リュウはゴム銃で相手の顔に一発入れようと考えたが、まだ直したばかりのゴム銃には代わりのゴムが無く、先程屋敷で使ったゴムで最後だった。
「リュウ?」
路地を抜けて広場から出たリュウとアレックスは気付かぬ間に村の港へと向かっていた。
そこには花火を打ち上げていた職人達が屋台の食べ物を食べながら団欒しており、その中にリュウの父の姿があった。心優しく穏やかな性格をしているリュウの父は、花火が上がってる最中でも職人達がお腹を空かせていると考え屋台の食べ物を沢山買っていた。
リュウの父は使い終わった皿やフォークを片付けていると、路地から出てきたリュウとアレックスの姿に気付き、立ち上がった。
「父……」
「リュウの父ちゃん! ちょっとアイツらやっつけといて!」
「お前俺の父さんに指図すんじゃねえ!!」
リュウが「父さん」と呼ぶ前にアレックスが声を上げ、リュウはそれに走りながら怒った。
リュウの父は何が何だか分かっていない様子を見せたが、二人の後から来た警備隊を瞳の中心に捕らえると、腰に付けていた銃弾が貫通した跡があるヒップホルスターから銃を取り出し、警備隊の目玉の前を銃弾に言い換えたゴムが通過した。
「ひいぃぃっ!!」
「ただのゴムですよ、ただのね」
その様子を走りながら見ていた二人は顔を赤くして興奮していた。特にリュウはそんな父の姿を見て笑顔になっており、より一層父への憧れが強くなった様子である。
警備隊の一人はリュウの父が撃ったゴムに驚いて尻餅をつき、後ろから来た警備隊複数人は玉突き事故のように倒れていった。
「あれ、アレックス?」
「母ちゃんただいま!!」
「お邪魔します!!」
「あ、お、おじゃまっ…」
港を抜けて森の中へと逃げた三人は、アレックスの家へと向かった。その道中、ハリーが自我を取り戻したがアレックスは下ろさずにかついだまんまで走り続け、アレックスの家が見えると同時に籠に洗濯物を詰めて家へと入ろうとするアレックスの母の姿が。
アレックスの母は走って家の中へと入る二人とかつがれているハリーの姿を見て、ぽかんとした表情を浮かばせている。
アレックスは家の中へと入るなりハリーを下ろし、ソファにどかっと座り込んで息を切らしており、リュウも同様息を切らして床にへたりこんでいた。
「何があったの、お祭り行ってきたんじゃないの?」
「母ちゃん聞いてよ! 俺警備隊に追いかけられたんだぜ!」
「……警備隊ぃ!?」
籠を持って足で扉を閉じ、寝室へと向かおうとするアレックスの母はアレックスが警備隊に追いかけられたという発言を聞いて驚き、思わず籠を床に落としてアレックスの方を振り向いた。
「あんたまた何かやらかしたんじゃないでしょうね」
アレックスの目と鼻の先まで顔を近づけ、目を細めながら嘘を見抜くようにじっと見て問いただすアレックスの母。
床に三角座りをしていたハリーが焦るアレックスとアレックスの母を交互に見ながら一生懸命事の説明をし、アレックスの母はそれを聞いて前かがみの態勢から上半身を起こし、「なるほどね」と腰に両手をついて三人を見る。
「走って汗かいたでしょ、お風呂入っちゃいなさい」
一息ついて三人に優しく声をかけたアレックスの母は落とした籠を持って寝室へと向かった。
三人は「風呂だー!!」と言って脱衣所へ向かい、服を脱ぎ捨てて既に張っているバスタブの中へと飛び込んだ。
一方アレックスの母は楽しそうに騒ぐ三人の声を寝室で聞きながら洗濯物を畳んでいる。
警備隊に追いかけられるなんて普通の生活を送っていればそうそう無いが、アレックスはやんちゃな性格で人一倍に元気がある子な為に、警備隊以外に大人達に追いかけられるなんてほぼ毎週の事。先程アレックスの母が「また何か」と言ったのはそういう事だ。
洗濯物を畳み終えてクローゼットにしまっている時、玄関の扉からノック音が聞こえた。
時計を見ると現在時刻は夜の八時を回っており、アレックスの母自身が営むバーに行かなければいかない時間であった。そんな時に、いやこんな時間に来客だなんておかしいと感じるアレックスの母は、所々に傷があるショットガンを取り出して玄関へと恐る恐る向かった。
「カリオスさん」
「久しぶりですね、セラ・アトルさん」




