笛の音
広場にいる住人達は祭りに集中しており、気付いたとしても直ぐに意識は食べ物や音楽、花火へと変わっていた。
アレックスとリュウは運動神経が良いので難なく登れるが、ハリーは二人と真逆で掴む力ですら弱い。
「祭りの目玉が上がるぞー!!」
広場のどこかで威勢のいい声が響き渡り、住人達は一斉に興奮を声に表した。アレックスは未だ下でおどおどとしているハリーの腕を掴み、歯を食いしばりながら引っ張り上げる。
アレックスの行動に気付いたリュウはハリーの片腕を掴み、同様に歯を食いしばりながらハリーの足が着く部分まで引っ張り上げた。
水しぶきが頭の先から足の先までかかって水の重さが登るのを邪魔してくる、だが三人は「あと少し」と同じ事を思いながらてっぺんを目指す。
「着いた!!」
アレックスは像の首部分に足を引っかけ、リュウとハリーは横に伸ばしている腕に座って花火が打ち上がる方向をじっと見詰めた。
花火が咲く前に奏でられる笛の音。三人の心臓の鼓動はこの日一番の速さを出し、笛の音が消えたと同時に唾を飲み目を見開いた。
赤、青、黄、緑、紫、橙、これ以上にきっと三人がまだ知らない名の色達があの花火にはある。
勢いよく打ち上がった花火は、空を埋め尽くす様に何度も何度も咲き続けた。枯れるという言葉をあの花火は知らない、そう感じさせるくらいに。
「……すっげぇ」
花火が全て打ち終わった時、村は先程の騒がしさを忘れるくらいに静まり返ったが、瞬きをする間もなく拍手と歓声が同時に上がった。
アレックスは未だ花火が上がっていた空を見ながら、落ち着かない心臓を押さえるように胸を押さえて言葉が漏れる。
「……ックス……アレックス!! おいアレックス!」
「あっ」
「早く降りねぇとバレる!!」
リュウはアレックスの脚を揺らしながら声を掛け、ハッと意識が戻ったアレックスはリュウとハリーを交互に見て「お、おう!」と応えた。
だが降りる時、突風が村に吹きかかりハリーが着ていたマントはボタンの糸が切れかかっていたのか、ボタンが風に引っ張られると同時に糸が切れ、マントは広場の奥の特等席が置かれている方へと飛ばされてしまった。
「マントが!!」




