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少年達の冒険記  作者:
4/11

番犬ビッグ

「アレックス」


 丘の上に着くと大きな屋敷がそこには建っていた。部屋の光はポツポツと付いているが、きっとそこには家主はおらず、メイドや執事の使用人達が祭りでも構わず働いているのだろう。


 何度も見ている屋敷だが、やはり見蕩れてしまう。その気持ちを言語化する程の脳をまだアレックスは持ち合わせていないが、アレックスの表情を見れば皆察する事ができる。

 そんな時、屋敷の物陰にある草むらの中にリュウがいた。


「早いなーお前」

「お前が遅いんだよ、ハリーも待ちくたびれてんぞ、ほら」


 屋敷の表から見て一番右の一番上の階、二人がいる場所から一番遠い小さなベランダが付いている部屋、既にマントを羽織って夜風にあたるハリーの姿がそこにはあった。


 ここからあの部屋の近くまで行くのは屋敷の使用人、そして番犬ビッグに見つかってしまう。

 この番犬、ビッグは飼い主や使用人が辞めろと言うまで執拗に追いかけてくる。高い壁があっても乗り越え、障害物があっても猪突猛進。追いつかれれば最後だ、コテンパンにやられる。


 アレックスは隣にいるリュウに「どうする?」と聞こうと顔を向けると、既にリュウは腰につけていたヒップホルスターから、昼間直していたゴム銃を取り出していた。


「アレックス、俺が三つ数えたら勢いよく出ろ」

「え、で、でる?」

「いち、にの」


 リュウはゴム銃を構え、数え始める。アレックスは慌てふためきながら「さん」と聞いた瞬間、草むらから飛び出した。

 パチン、と音がすると同時に殺気がアレックスに伝わる。リュウのじゃない、いや、人間じゃない。

 

 嫌な予感がつま先からゾクゾクと頭の先まで上がってくるアレックスは、殺気がする方へゆっくりと視線を向けた。

 月の光が中にギリギリ届かない小屋がそこにはある。だが、中に入ってる奴は小屋に似合わない程の大きさを持つ生き物。前足を一歩、また一歩と小屋の外に出し始めたその生き物は、歯を剥き出しにしてアレックスを見ていた。


 ビッグ、この屋敷の番犬だ。


「リュウーー!! お前ーー!!」

「まだ走れ! アレックス! できるだけ屋敷の近くを走れバカ!」


 アレックスの足はこの村で一番速い、と言っても、逃げ足の方の足だが。

 逃げるのに夢中なアレックスは屋敷から離れるように丘を下り始めてしまう。それに気付いたリュウは引き戻すように大声を上げてアレックスを誘導する。


 この時、アレックスが出した叫び声に気付いたハリーはマント越しに飼い犬ビッグに追いかけられているアレックスと、大声を出すリュウの姿を目にし、パッと顔が明るくなった。

 それに気付いたリュウはハリーに手を振り、ハリーも振り返す。リュウは人影が一番多い部屋に銃口を向け、少し開いている窓の隙間から奥にいる使用人の頭を目掛けて撃ち込んだ。

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