アレックスの提案
二人に手を貸してもらい、体を起こして汚れた膝を叩いて本を抱えれば、二人を交互に見ながら問い掛けた。
「まあな、お前は?」
「僕は父上に行くなって言われてるからダメなんだ、だからその分たっくさん本を読もうって!」
「でもハリーの父ちゃん、奥の方で村の皆と話してたぜ?」
アレックスは先程広場を見渡していた時に、ハリーの父親が村の人間達と話しているのを目に入れていた。ハリーはそれを知っても驚きはせずに当たり前かのように微笑んだ。
「父上は、良いんだ」
微笑んでいるが、背中を丸めて少し俯くハリー。二人は「ハハハッ!」と大きな声で笑う父親の方を振り向き、ほんの少し、拳を握り締めた。
その時、アレックスは急に何かを閃いた様に口を大きく開けて目を見開き、「ちょっと待ってろ!」と言ってどこかへと走り去る。
残されたリュウとハリーはポカンとした顔でアレックスの背中を見詰めていた。
「なあハリー、アレックスの奴が何考えてるか分かるか?」
「五歳の頃から一緒にいるけど、全く分からないよ」
しばらくしてアレックスは大きな布を抱えて戻ってきた。その間リュウは祭りの準備を手伝い、ハリーは父親に見付からぬ様、先程二人がいた建物の影に潜み本を読んでいた。
リュウとハリーはアレックスが抱えている布を覗き込み、首を傾げる。
「マントだ!」とバッと広げて見せたアレックス。ハリーは瞳を輝かせて興奮しているようだが、リュウはポカンとした表情で髪をかき「マントがとうしたんだよ」と言った。
「ハリー! このマントを着て夜六時に家で待ってろ!いいな!」
「うん! 分かった!」
ハリーはマントを受け取れば満面の笑みを浮かべてアレックスに感謝した。アレックスは満足そうに歯を出して笑っているが、リュウはアレックスとハリーの能天気な頭に吹きかけるようにため息をつく。
マントを気に入ったハリーだが、奥で村の人間と話終わった父親の姿を目にすれば、本を強く抱き締めて「僕帰る、アレックス、リュウ、今夜楽しみにしてるね」と言って父親に見つからないルートへと走って向かっていった。
そんなハリーの後ろ姿を見えなくなるまで見詰めていたアレックスとリュウは、また大人達に注意されまいとリュウは元の持ち場へとつき、アレックスは大人達へと混ざっていった。
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最初の花火が薄明の空へ飛び上がる。
丘の上を目指して登っている最中のアレックスは花火が咲いた時に出る光と音で振り向き、橙色の瞳が煌めいた。
早く二人と祭りに行きたい、そう思ったアレックスは丘を駆け上がる。




