ブラック・アウト
知らない戦場で、闘っている。
吸った息は浅くて薄い。手の先までも血の気が引いて冷たい。
ざらつく唇には砂埃の一部がひたりと付いている。
無線からは耳障りな甲高い音がしている。耳鳴りは未だ止んでくれなかった。
一人、また一人と、仲間は倒れていく。
ついぞ味方は消え去って、皆の期待がのしかかった。
自分が進むしかなくなって、最後にひとつ、息をついて歩いてゆく。
この手は正確無比に撃ち抜いていく。
からっぽな道を踏みしめてドアへと向かう。
真っ白な部屋には父が待っていた。そのまま壁にもたれて頭をついた。
ゆっくりと、力を抜いて、少し俯く。
熱い涙が一筋通って、深呼吸をする。
表情を変えぬ父は数歩歩いてなにやら呟く。
鋭く太い、針の、ぬるりとした感触が脳の中に入ってくる。
全身に恐怖が蔓延していく。
そのまま不快感を受ける。
意識はとうとうと、落ちていった。
ブラック・アウト