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異世界転生?いえ、元世界転生です!  作者: 剣原 龍介
少年の章

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第四十話・四年後

 大陸統一歴2317年、3月下小月一日

 ローランディア選王国、王都セントラル

 王立アウレアウロラ学園、大講堂にて――


 アレックスがアウレアウロラ学園初等部に入学してから、四年の月日が経っていた。

 今日は、王立アウレアウロラ学園の卒業式である。

 この日、卒業を迎える学生達の数は五百人強であり、式典に参列する保護者を合わせて入学式の半分程の人数が集まっている事になる。

 その大講堂内の空気は、卒業の喜びにより明るい雰囲気に満ちていた。

 卒業式の開始時間が近付き、大講堂に徐々に卒業生や参列者たちが入場していく。

 アレックスも、第一組の学生達に混ざって大講堂へと入った。

 大講堂に入ると、係員が入場する学生や保護者達を座席へと整理、誘導しているのが見える。

 すると、大講堂に入って来たアレックスの姿を認めた係員が、アレックスの元へと歩み寄って来た。


「第四学年総代のアレクサンダー・アリス・スプリングフィールドさんですね。お席にご案内しますのでこちらにお越しください」


 係員の誘導に従って、アレックスは自分の席へと移動していく。


「こちらです」

「えぇ、案内ご苦労様です」


 係員の案内に労いの言葉を掛けて、アレックスは席に着いた。

 その席は大講堂一階最前列の中央であり、四年前の入学式でアレックスが座ったのと同じ席であった。

 席に着いたアレックスは、辺りを見回して周囲の状況を窺った。

 他の卒業生達も職員の案内で整理されて次々と座席に着席しており、もう間も無く卒業式が始まろうとしているのが分かった。

 一階席の前列には卒業生達が座っており、後列が一般人の保護者達の席となっているのは入学式と同じだ。

 二階席にも同様に、卒業式に参列する貴族のために席が用意されていた。

 そこには、アレックスの両親の姿もある。

 そして、アレックスが驚いたのは三階席だった。

 三階席には、数名の騎士が警護のために配置されているのが見える。

 徽章は王都騎士団、その中でも最精鋭であり王家の警護を任務とする近衛騎士隊ガーディアンズだ。

 それが意味する所は、今年の卒業式には女王陛下がご臨席なされるという事だった。

 これは異例な事である。

 入学式もそうだが、この卒業式でも普段ならば大臣級の来賓が国王の名代として出席するのが常だ。

 去年も一昨年もそうだったし、アレックスの知る限りでは女王陛下が王立アウレアウロラ学園の式典にご臨席されたのはアレックスの入学式の時だけだ。

 アレックスが席に着いてからしばらくして、舞台上に卒業式の司会をする学園職員が姿を現した。


「皆様、ご静粛に!これより、王立アウレアウロラ学園初等部アウロラの卒業式を開始いたします」


 司会の女性が舞台上で声を上げると舞台端に控えていた楽団が奏楽を始め、大講堂は徐々に静かになっていった。

 頃合いを見計らった司会の声を、拡声魔道具マイクが大講堂の隅々まで届けていく。


「ローランディア選王国国王、ロザリアーネ・ジャネット・ローランディア女王陛下の御臨席です」


 大講堂の灯りが落とされ、三階席にスポットライトが当てられる。

 舞台上では、スクリーンが展開されて三階席の様子が映し出されていた。

 スポットライトの灯りに照らされたその姿は、アレックスの予想通りローランディア選王国国王であるロザリアーネ・ジャネット・ローランディア陛下であった。

 ロザリアーネ女王陛下のご臨席に大講堂内が万雷の拍手で出迎える。


「ローランディア選王国万歳!」

「女王陛下万歳!」

「ローランディア選王国に栄光あれ!」

「女王陛下に栄光あれ!」


 ロザリアーネ女王陛下は、拍手喝采を送る参列者達に向かって片手を挙げると笑顔で歓声に応えた。

 ロザリアーネ女王陛下が手を下げて人々に静まる様に促すと、潮が引くようにスッと歓声が鳴り止み楽団による奏楽もピタリと音を止めてロザリアーネ女王陛下のお言葉を待った。

 ロザリアーネ女王陛下は、その様子に満足したかのように一つ頷くと、用意されたマイクを手に語り出した。


「今日、この良き日に王立アウレアウロラ学園の卒業式に参列する事が出来て、大変嬉しく思います。この場にいる皆が、栄えある今日という日を迎えられたことを、心より祝福したいと思います……」


 大講堂の隅々まで、祝辞を述べるロザリアーネ女王陛下の声が響き渡る。

 アレックスが振り返って三階席を見上げれば、滔々と祝辞を述べるロザリアーネ女王陛下の姿が良く見える。


「……。皆が、このアウレアウロラ学園の学び舎にて学んだ事を、今後の人生に大いに役立ててくれる事を期待しています」


 やがて、ロザリアーネ女王陛下の祝辞が終り、万雷の拍手が巻き起こる。

 それに片手を挙げて応じると、ロザリアーネ女王陛下は席に着いた。

 それから、大講堂の灯りが再び灯されて司会が声を上げる。


「続きまして、アウレアウロラ学園学園長イザベラ・ケレスによる卒業証書授与!」


 司会の紹介を受け、ケレス学園長が登壇した。

 ケレス学園長は壇上に上がると、一度三階席を見上げて一礼した。

 ケレス学園長が姿勢を正すと、司会の女性が声を上げた。


「王立アウレアウロラ学園初等部アウロラ卒業生代表、アレクサンダー・アリス・スプリングフィールド!」

「はい!」


 司会の声に、アレックスは元気よく返事をして立ち上がる。

 そうして、舞台袖から階段を上がって舞台に上がると、ケレス学園長の待つ演壇の前に歩み出た。

 ピシリと背筋を伸ばすアレックスは、壇上のケレス学園長を仰ぐように見上げる。

 ケレス学園長は決して大柄な女性ではないが、対するアレックスは同年代の子供達と比べても一回り背が低い。

 そのため、相手が大人でなくとも、アレックスの場合は基本的に見上げる格好になる事が多いのだ。

 ケレス学園長が卒業証書を読み上げ、アレックスに差し出してくる。

 アレックスは一歩前に出ると両手をそろえて卒業証書を受け取り、一歩下がって礼をした。

 ケレス学園長が頷くように答礼を返す。

 卒業証書を手にしたアレックスは、そのままキビキビとした動作で壇上を後にした。


「続きまして、アウレアウロラ学園学園長イザベラ・ケレスによる祝辞!」


 司会の声に、壇上のケレス学園長は大講堂を一度見回した。

 そうして、祝辞の言葉を述べていく。

 静かな大講堂に、ケレス学園長の声が響いていった。



……

…………

………………



「……。学園長先生を初め先生方、諸先輩の方々の温かいご指導、ご鞭撻のおかげで、今日私達は無事卒業の日を迎える事が出来ました。今日まで本当にありがとうございました。以上をもちまして、卒業生代表の挨拶とさせていただきます」


 アレックスは、答辞を述べ終えると一礼をして踏み台を降りた。

 そうして演壇を降りたアレックスに、大講堂にいる参列者達から拍手が沸き起こる。

 アレックスはその拍手に応えて再度礼をすると、静かに舞台を降りた。

 アレックスは、そのまま真直ぐに前を向いて自分の席へと戻っていった。

 席に座ると、隣の席に座るエドウィンが小さく声を掛けてきた。


「アレックス、お疲れさん。しっかし、良くまぁあんな大層な挨拶が出来るよな」

「エディ、まだ卒業式は終わっていませんよ?」


 アレックスは、前を向いたままエドウィンに答えた。


「そうだよ、エディ。もう少しで終わるんだから静かにしていないと……」


 アレックスを挟んで反対側の席に座るヴァレリーが、エドウィンに注意する。


「二人とも静かに。ほら、先生が睨んでますよ……」

「ゲッ、マジかよ」


 アレックスの言葉に、エドウィンは姿勢を正した。

 幸いにも、三人の会話は先生の注意を受ける事は無かった。

 三人が遣り取りをしている間に、司会の女性が舞台上に進み出ていた。


「ローランディア選王国国王、ロザリアーネ・ジャネット・ローランディア女王陛下の御退席です」


 司会の口上を合図に、楽団が奏楽を始めた。

 大講堂にいる卒業式の参列者は、揃って席を立ち上がり、首を垂れて一礼した。

 楽団の奏楽が続く中、ロザリアーネ女王陛下は静かに席を立つ。

 ロザリアーネ女王陛下が退室して楽団の奏楽が終ると、司会の女性が舞台の袖から進み出てくる。


「それでは、以上を持ちまして王立アウレアウロラ学園初等部アウロラの卒業式を終了いたします。卒業生はこの後各教室で卒業証書の授与がありますので、担任教師の誘導に従って移動してください」


 その後、アレックス達は担任教師の誘導で教室へと移動し、既に卒業式で卒業証書を授与されているアレックス以外の生徒達は無事に卒業証書を授与されていったのだった。



……

…………

………………



 卒業式の後、教室での卒業証書の授与も終わりアレックスは帰り支度を始めていた。

 そんなアレックスに、隣の席のエドウィンが声を掛けてきた。


「なぁ、アレックス。お前、これからどうするんだ?」

「なんですか、エディ?これからって、この後は学生寮に帰るのですが?」


 アレックスは、そう言って隣の席のエドウィンを仰ぎ見た。

 初等部アウロラ入学時から殆ど背丈の伸びていないアレックスと違い、エドウィンはこの四年で大きく背が伸びていた。

 そのため、今では話をしようと思うと見上げる必要があるのだ。


「いや、そうじゃなくて!卒業式が終ったら、高等部アウレアの入学式まで半月あるんだぞ?その間はどうするのかと思ってさ!」

「あぁ、それなら、一度家に戻ります。ですから、王都に戻ってくるのは四月中小月の四日目ですね」


 エドウィンは、アレックスの言葉に大きく頷いた。


「そうだよな。四年も帰ってないんだもんな……。うちも、帰って来いってさ。北方領の領都ウィンターヒルまではヴァレリーと一緒なんだ。けど、面倒くさいんだよなぁ」


 そう言って、エドウィンは小さく溜息を吐いた。

 それに対して反応したのは、ヴァレリーだった。


「何言っているんだい、エディ。四年も帰っていないんだよ?特に、君は領地の跡取りじゃないか!たまには帰って家臣たちの顔も見ておかないといけないんだから、しっかりしないと……」


 ヴァレリーの言葉に、エドウィンは嫌そうに顔を歪めてこれ見よがしに溜息を吐いて見せた。


「それで、アレックス君は何時頃向こうへ帰るの?僕達は、今日の夕方の魔導飛行船の便で北方領に戻るんだけど……」

「それなら、私もそうですね。学生寮に帰って荷物を取ったら、直ぐに父様や母様と合流してそのまま空港に向かう事になっています」


 アレックスの予定を聞いて、シェリーが会話に入ってくる。


「あら?随分と急ぎなのですわね。私やヴァレリーさん達はそれぞれの領都からさらに自分の領地まで移動しないといけませんから急ぎなのは分かりますけれど……」


 シェリーの疑問に、アレックスは苦笑を浮かべて答える。


「領都に戻ったら色々とやる事があるみたいですから、そのせいでしょうね」

「アレックス様は、選公爵家としてのお勤めもおありでしょうから、お忙しいのですね」


 アレックスの答えに、マリーがウンウンと頷いていた。

 入学時には学術第二組だったマリーは、アレックス達と一緒に勉強する様になって学術第一組に組が上がっていたのだった。


「へぇ、そうなのか……、アレックスは大変だな。それじゃ、俺達も家に帰るとするか」

「そうだね、エディ。夕方までに空港に行かないと、魔導飛行船に乗り遅れたらいけないしね」


 そうして、アレックス達五人は、揃って教室を後にした。

 学生寮に戻ったアレックス達は、それぞれが初等部アウロラの学生寮を引き払うために荷物を取りまとめるべく部屋へと戻っていった。

 部屋へと戻ったアレックスは、予め準備していた荷物の入った鞄を手に持った。

 最後に、初等部アウロラの四年間を過ごした部屋の中を見回して、一つ頷くと部屋を出る。

 部屋を出ると、もう振り返る事は無い。

 こうして、アレックスの初等部アウロラでの四年間は終わりを告げたのだった。

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