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異世界転生?いえ、元世界転生です!  作者: 剣原 龍介
少年の章

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第三十話・魔術の授業

 翌日も、午前は基礎的な教養科目の授業が行われ、午後からは魔術の授業の初日となった。

 アレックス達学生は、午後からは午前中の授業の最後に通達された通り、魔術の授業の組み分けに従って各教室へと移動していた。

 とは言え、アレックスは教室を移動する必要はなかった。

 と言うのも、学術第一組の使用する教室と魔術第一組の使用する教室とは同じ教室だったからだ。

 教室の掲示板には、昼休みの間に魔術第一組の座席表が掲示されていた。

 それによると、アレックスの座席は学術第一組と同様に教壇の正面の席だった。

 そのため、アレックスには教室だけではなく、座席を移動する必要すらもなかったのである。

 昼休みも終わりが近づき、教室には少しづつ学生達が集まりつつあった。

 皆、教室に入ると真っ先に掲示板の座席表を確認していく。

 掲示板の前にはちょっとした人だかりが出来ていた。

 そうして座席を確認すると、それぞれに座席へと散っていった。

 既に自分の席に着いているアレックスは、掲示板を見ている学生達の様子を見ていた。

 そうしていると、人だかりに見知った人物――小柄な少女の姿を見つける。


「マリーさん!」


 アレックスは名を読んだ少女に向けて軽く手を振る。

 それに気付いた少女は、オドオドと周囲を見渡していた顔にパッと明るい笑顔を浮かべた。

 アレックスの姿を認めたマリーは、駆け出さんばかりの勢いでアレックスの席へとやって来た。

 肩まで届く金髪が、マリーの気持ちを表すかの様にふわりと広がってキラキラと輝いて見える。


「アレックス様!お久しぶりです。お会いできて嬉しいです!」

「えぇ、マリーさんも、お元気そうで何よりです」


 アレックスは、立ち上がるとにっこりと笑顔を浮かべてマリーを迎えた。

 マリーは、そんなアレックスの笑顔に顔を赤らめた。


「アレックス様、第一学年総代、おめでとうございます。流石ですね、憧れます」

「マリーさん、ありがとう。マリーさんも、魔術第一組なのはすごい事ですよ?おめでとう」

「あぁ、アレックス様。ありがとうございます」


 アレックスは、マリーの左胸の徽章にちらりと目を遣る。

 マリーの徽章には『2・11・1』と記されていた。


「マリーさんは、学術は第二組なのですね。もしかしたら、夏の試験の結果次第では、同じ組になれるかもしれないですね」

「そうなれたら、嬉しいです」

「もし何かあったら、言ってください。できる限り、力になりますよ」

「ありがとうございます、アレックス様」


 そうしてアレックスとマリーが話をしていると、二人の元に近付いてくる人達がいた。


「よう!アレックス。なんだ、友達か?」

「この教室にいるという事は、同じ魔術第一組なんだね。友達なら、僕達にも紹介して欲しいかな」


 アレックスが振り向くと、エドウィンとヴァレリーの二人が近づいてくるところだった。


「あぁ、エディ、ヴァレリー。そうですね、紹介します。こちらは、マリー・タルックボさん」

「マリー・タルックボです。実家は、東方領スプリングフィールドで商家を営んでいます。どうぞ、よろしくお願いします」

「おう!俺は、エドウィン・ストームエッジ。西方領のストームエッジ子爵家の第三子だ。よろしく」

「僕は、ヴァレリー・ヒューエンデンスだよ。西方領のヒューエンデンス侯爵家の第十子なんだ。こちらこそ、よろしくね」

「お二人とも、貴族様だったのですね?」


 エドウィンとヴァレリーの自己紹介に、マリーは慌てて畏まる。

 そんなマリーの様子に、二人は苦笑を浮かべた。


「そんな事、ここじゃぁ気にしなくて良いんだぜ?」

「そうだよ。エディの言う通りだね。学園の中では、身分は関係ないよ」

「そうは言っても……」


 困ったマリーは、ちらりとアレックスの方に目を遣った。

 アレックスは、クスリと笑ってマリーに言葉を掛ける。


「二人の言う通り、学園では身分は関係ありません。ですけれど、いきなりは難しいでしょうから少しづつ慣れていけば良いですよ」

「はぁ、ありがとうございます」


 四人で話しているうちに、始業の鐘が鳴った。

 鐘の音を聞き、アレックス達は指定の座席に着席した。

 周囲で雑談していた生徒達も、皆自分たちの座席に移動していく。

 エドウィンとヴァレリーの座席は、アレックスの座席の両隣だ。

 マリーは、アレックスの後ろの座席に着席した。

 始業の鐘が鳴りアレックス達が席に座ってから程無くして、魔術の授業を担当する教師が教室にやって来た。

 学術第一組の担任で、学術第一組の魔法学の講師も担当しているオールソン先生だった。


「はい、皆さん!おしゃべりはやめて、席について下さいね。……、学術第一組の生徒は私の名前を知っているけれど、他の組の生徒もいるので自己紹介をしておきます。私が魔術第一組を担当するフローレシア・オールソンです」


 オールソン先生は、教壇の立って教室をぐるりと見まわして言った。


「さて、魔術の理論的なお話は、学術の授業の時間に各組で行う事になります。ですからこの時間では、主に魔術の実践に必要な事柄の習熟等を目的とした実技を中心とした授業を行います。手始めに、今日は簡単な座学と基礎鍛錬に関して講義します。次回以降は、武術の授業でも使用する鍛錬場を利用する事になりますからね」


 オールソン先生の話に、学生達からははいと元気の良い返事が返ってくる。

 その返事に満足したオールソン先生は、早速授業を開始した。


「まず、皆さんに覚えておいて欲しい事があります。それは、これからの四年間で魔術第一組の皆さんが目指すべき所がなんであるかです。魔術第一組の皆さんには、これから四年間で最低でも下級魔術を一つは習得してもらう事を目標としています」


 オールソン先生は、話しながら黒板に書き込んでいく。


「下級魔術と言っても、その種類は多岐に亘ります。基本系統に分類されている魔術には、ウッドファイアウィンドアクアソイルメタルライトダークの八系統が存在します。特殊系統であれば、精神マインド精霊スピリット特異ユニークの三系統がありますが、こちらは少々特別な所があるので考えなくて良いでしょう」


 黒板に書き込みをしていたオールソン先生は、学生達を振り返った。


「今第一組にいる皆さんの中には、既に下級或いはそれ以上の魔術を習得している人もいますね。ではそういう人達は、どうするかと言うと……」


 オールソン先生の視線が、ちらりとアレックスに向けられた。


「より上を目指すのは当然として、今使える魔術の魔力制御や詠唱短縮といった技術力の向上を目的にしてもらいたいと思います。『使う』と『使いこなす』では、まったく意味が違いますからね?」


 学生達のはいという返事に、オールソン先生は大きく頷いた。


「先程、下級魔術を一つは習得してもらうと言いました。この魔術の階級に関しては、全部で十段階に分かれています。初級、下級、中級、上級、達人級、導師級、聖人級、王級、帝級、神級の十階級です。これらは魔術の力量を区別するための区分けです。皆さんが習得を目指すのは下から二番目の階級という事になります」


 オールソン先生は、そこで話を区切り、学生達の目に理解の色が浮かぶのを確かめた。

 そして、一つ頷くと話を続ける。


「この魔術の階級とは別に、魔術を使う者特有の称号というものもあります。一系統以上の初級魔術が使える者全般を指す呼称である魔法使いマジックユーザー。ただ、普通は魔術の才能がある者ならば、きちんとした勉学と修練を積めば下級魔術は使える様になります。ですから、この言葉には『学んでもろくに魔術が使えない者』、『才能の無い者』という意味の蔑称として用いられる事がありますので使わない様に注意しなさい。良いですか?下級魔術を使えるようになってから、『魔術を使える』というのが普通です。気を付ける様にね」


 そうして、オールソン先生は学生達を見回した。


「二系統以上の下級魔術を使えるようになって、魔術士メイジと呼びます。他にも魔術を使う者の称号には、魔術師アークメイジ魔導師ウィザード賢者セージといったものがありますが、ここでは割愛します。……、それではここからは魔術の実技に移っていきましょう」


 オールソン先生の言葉に、学生達から歓迎のざわめきが起こった。


「とは言っても、いきなり魔術を使ったりはしません。今日は、魔術の基礎となる魔力の制御と保有量の増大、放出量の増加の訓練についてお話します。この訓練には大きく分けて動的訓練と静的訓練の二つがあります」


 そう言って、オールソン先生は呪文を唱えた。

 呪文を唱えたオールソン先生の掌の上に、小さな炎が生まれる。

 それは、揺らめきながら1、2、3と数字の形を模っていく。


「例えば、この『火炎操作コントロールファイア』で、炎の形を様々に変えて維持する訓練。これが動的訓練になります」


 オールソン先生のデモンストレーションに、学生達の間から感嘆の声が上がった。


「それに対して、今回皆さんに教えるのは静的訓練になります。一般には、瞑想法とも呼ばれている訓練です。良いですか?……それでは、気持ちを落ち着けて、楽な姿勢を取ってください」


 オールソン先生の言葉に、学生達は各々姿勢を整えていく。


「緊張しなくていいですからね。先ずは、ゆっくりと深呼吸しましょう。そして気持ちを落ち着けたら、自分の体内の魔力を感じ取ります。そうしたら、その魔力を体の隅から隅まで、ゆっくり循環させるようにして流していきます」


 学生達は、静かに瞑想を始めていった。

 先程までのどこか浮ついた雰囲気は鳴りを潜め、教室を静寂が包んでいった。

 そうして、午後の授業の終業の鐘が鳴るまでの間、学生達はオールソン先生の言葉に従って瞑想を続けたのだった。

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