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異世界転生?いえ、元世界転生です!  作者: 剣原 龍介
少年の章

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第二十話・試験の終わりと家路

 魔術試験を終えた最後の受験生が、衝立の向こう側から戻って来た。

 それと同時に、待機席へと戻る受験生の後から試験監督の女性が姿を現した。


「皆さん、これにて魔術試験は終了です。一旦筆記試験を行った教室に戻って、試験終了後の諸注意を説明します。ですので皆さん、私の後について教室に移動してください」


 受験生達は、試験監督の言葉に頷くと次々と立ち上がった。

 アレックスも彼らの後に続いて席を立ち、試験監督の後に続いて筆記試験を行った教室に戻っていった。

 筆記試験を行った教室に戻ってくると、試験監督が受験生達を振り返る。

 試験監督の後に続いて教室へと入って来た受験生達に向かって、試験監督は言葉を掛けてきた。


「それでは受験生の皆さん、午前中に行った筆記試験を受けた席に再び着席して下さい。席が分からなくなった子は、こちらに来て座席の位置を確認してください」


 試験監督の言葉に、受験生達は次々と自分の座席へと移動を開始した。

 何名かの受験生は、試験監督のもとに行って自分の座る座席の位置を確認している。

 アレックスは、そんな受験生達の様子ををちらりと見やってから、自分に割り当てられていた座席へと移動していった。

 受験生達が座席に着くと、試験監督はざわついた教室内の注目を集める様に手を叩いて合図した。


「はい、受験生の皆さん、静かにしてください。それでは、これより入学試験終了後の諸注意を説明します。先ずは、こちらの書類を配りますので、後でしっかりと保護者の方、お父さんお母さん達と確認してくださいね」


 試験監督は、そう言って教壇の上に準備されていた書類の束を受験生達に配っていった。

 アレックスの元にも前の座席に座る受験生から書類が回って来たので、アレックスは一束の書類を手に取ると残りの書類を後ろの席の受験生に回したのだった。

 暫くして受験生達に書類が行き渡った事を確認すると、試験監督は教壇に立った。


「それでは皆さん、手元の書類を見てください。一旦、ここで皆さんに説明をします。大事な事が書いてありますので、後できちんと保護者の方、お父さんお母さん達にも渡してください。それと、皆さんが胸に着けている受験番号札は、入学の際にも必要となりますので、絶対に無くさない様にして下さい。それでは説明を始めますよ」


 そう言って、試験監督は書類の説明を始めた。

 アレックスは書類に目を通しながら、注意深く試験官の言葉に耳を傾けたのだった。

 試験監督の説明は、その内容を簡単に要約してしまえば、入学式に関する案内だった。

 その内容は、入学式の日取りについての説明から始まり、入学式の日にクラス分けが発表される事、クラス分けの際には受験番号を用いるため番号札をなくさない事といった入学式当日の注意事項。

 その他には、入学後は寮生活となるので必要と思う物は事前に準備しておく事、学園が最低限必要と判断して準備する様に促している物品に関する事等だ。

 つまり、この書類は学園に入学するにあたって必要な事柄をまとめた入学案内書である。


「……これで入学に関する案内を終わります。皆さん、我々学園は貴方方を歓迎しています。次に会うのは入学式以降となるでしょう。それまで元気に過ごして下さいね。今日はお疲れさまでした。これで、入学試験の全日程を終了します。保護者の方、お父さんお母さん達と一緒に気を付けて帰ってくださいね」


 そう言うと、試験監督は受験生達に向かって一礼して教室を出ていった。

 教室の外で、試験監督が待機していた大人達――保護者や付添人、従者など受験生の事情によって様々だ――に入学試験が終了した事を告げる声が聞こえた。

 そうして、外で待っていた大人達が続々と教室に入ってくる。

 アレックスの元にも、スプリングフィールド選公爵家の執事が近づいてきた。


「アレクサンダー様、お疲れ様でございました。ただいま帰りの馬車の準備を行っている最中でございます。大変申し訳ございませんが、馬車の準備が整うまで今しばらくお待ちいただけますようお願い申し上げます」


 執事の言葉に、アレックスは頷きを返した。


「そうですね、分かりました。確かに、支度に時間が必要な事は仕方の無い事です。それに今直ぐ動いても、他の受験生の方々の帰りの混雑に巻き込まれてしまいますからね。混雑が落ち着くまでは、しばらくこのまま待つのも方策の一つでしょう。ならば、後はよしなに……」

「畏まりました、アレクサンダー様。それでは早速ではございますが、馬車の準備状況を確認してまいりたいと思います。暫しお待ちくださいませ」


 そう言って、執事はアレックスに一礼すると踵を返して教室を出ていった。



……

…………

………………



 そうして、アレックスが入学試験を終えて家路に着く事が出来たのは、時間ももう夕方になってからだった。

 見上げれば、日暮れの太陽が空を美しく茜色に染め上げている。

 アレックスを乗せた馬車は、王都セントラルの西地区を抜けて中央区へと入っていた。


「ふぅ、今日は少し疲れましたね」


 アレックスは、大きなため息を吐くと馬車の車窓から茜色に染まる街並みを見つめた。

 もう時刻は夕方、間も無く日も暮れるというのに、大通りは多くの人が行き交い賑わいを見せていた。


「もう夕方だというのに、王都は賑やかなものですね」

「はい、アレクサンダー様。王都セントラルも、領都スプリングフィールドと同じ様に町中のいたる所に魔術による灯り、街灯が整備されております。そのために、街灯の整備されていない地方の農村部とは違い、王都の住民の夜は長いのでございます」


 アレックスの呟きに、執事が言葉を返した。

 執事の言葉に、アレックスはそうでしたかと頷いた。

 馬車の外に目を向ければ、確かに通りのあちらこちらに街灯の柱が立っており、忍び寄る夜の闇をはねのける様に煌々と光り輝いていた。


持続コンティニュラル灯火ライトですか?」

「左様でございます。持続灯火の魔術マジックはそれ程難度の高いものではなく、また魔力マナの消耗もさほどではありません。何より、持続時間が非常に長いのが特徴でございます。何しろ、一度使えば一月は効果が持続いたしますから。お屋敷でも、主要な場所の灯りは街中の街灯と同じく持続灯火を用いたものでございますよ」


 アレックスは、執事の説明に頷いて見せた。

 ここ、ローランディア選王国では、王都に限らずある程度の街であれば少なくとも主要な通りには魔術による街灯が整備されている。

 本当に街灯が一本も整備されていない場所などは、辺鄙な地方の農村くらいである。

 とは言え、これにはある程度の資金が必要だ。

 これが近隣国の神聖カルディア王国あたりだと地域による差が大きく、場所によっては街灯などない地域もある。

 ローランディア選王国では、インフラ整備や治安対策の一環として王家直轄領で街灯の整備が進んだ。

 各地の貴族もそれに倣って、街灯の整備に努めているのである。

 そういう意味では執事の言葉は間違っている。

 王都セントラルが領都スプリングフィールドと同じなのではなく、その逆であるのだから。

 とは言え、それをわざわざ指摘するようなことはしない。

 だから、アレックスは話題を変える事にした。


「少しお腹が減ってきましたね。帰ったら夕食が楽しみです」


 アレックスの言葉に、執事は笑顔を浮かべた。


「左様でございますか。今日は入学試験が無事に終わった事を祝して、料理人が腕によりをかけて晩餐をご用意させて頂く事になっております。どうぞ、楽しみになさってください」


 たかが入学試験とは言え、対外的にはアレックスの初仕事でもあると言える。

 アウレアウロラ学園の入学試験は、クラス編成のための実力試験だ。

 入学試験を受けた段階で、入学そのものは確約されたものだった。

 だから、入学試験の終了自体が入学とイコールである。


「そうなのですか?それは楽しみです」


 そういうわけで、その日の夕食は内輪の事ではあるがアレックスのアウレアウロラ学園の入学祝いという意味を持つ事になる。

 その日はアレックスの入学祝いとして使用人の食事にも大きな肉料理が供され、甘味が振る舞われたのであるが余談である。

 ともあれ、そうこう話をしている間にも、アレックスを乗せた馬車は王都の中央区を通り抜けて自宅のある王都北東部の貴族街へと向かっていった。

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