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プロローグ前編④

 戦場と化した祭儀場には、焼け焦げ切り裂かれ打ち砕かれた不死者達の残骸が無数に散らばっている。

 すでに数え切れないほどの不死者を打ち倒しているが、いまだ多数の不死者が群がっていた。

 大剣グレートソードが唸りを上げ大戦斧グレートアックスの一撃が轟き、光剣ソード・オブ・レイが戦場に煌めく。


「これでは埒が開かんぞ!」

「アラム?」

「分かっている、ソフィー!」


 アリスの問いに一つ頷いたアラムは、教主をじっと睨み据えたままソフィアーネに声をかけた。

 対邪サークルオブ護法プロテクション・イービルを張るソフィアーネは、アラムの問いに間髪入れずに答えを返していく。


「教主の魔術ね……あれがバラバラになった死体の使える部分を繋ぎ合わせて、次々と不死者アンデッドを再生してるのよ。だから、教主を倒せれば!」

「ならば、打つ手は決まったわね?」

「ヨッシャァ!そうと決まれば!!」


 後方から迫る不死者からソフィアーネを守る為、アリスが構えていた騎士盾ナイトシールドの影から、小柄な人影が飛び出していく。

 その身に担ぐ巨大な機械式クレンクイン弩弓クロスボウが、ピタリと教主に向けられた。


「フッ、……狙い撃つぜ!」

「「「「「ヤメロ、阿呆!!!!!」」」」」


 バスンッと重々しい唸りを上げて放たれた巨大な太矢クォレルが目の前の不死者の壁を貫き通し、教主にその凶悪な鏃を突き立てんとした次の瞬間……


ズドォン……


 彼等の背後から迫っていた不死者の群れの一角が、爆音を立てて吹き飛んでいった。

 機械式弩弓を構えた男の頭から、千切れた髪がハラリとこぼれ落ちる。

 頭を抱えて奇声を上げる男の姿に、全員揃って溜息をつくのであった。


「フッ、フハハハハッ、ファーッハッハッハッハッ、愚か者めがっ!儂自身・・・に飛び道具など、効く訳が無かろうがぁ!!」


 教主の上げる嗄れた嘲笑に、アラム達全員が渋い顔になる。

 アラムは吐息一つで気持ちを切り替えると、勝負を決めるべく指示を飛ばした。


「ラン、シオン!両翼を抑えてくれ。アリスは中央で押し出せ。ソフィー、援護は任せた」

「アラム、俺はどうする?」

「まずは矢を装填しようか……」

「オォッ?そういえば!」


 ポンと手を打つ男の姿は無視しておいて、ランとシオンが動き出す。

 アラムが半歩引いた空間に、盾を押し立ててアリスが進み出る。

 機械式弩弓の歯車が奏でる弦を巻き上げる轟音を背後に、ソフィアーネは魔術士の杖を掲げ持った。


対象数強化ブースト魔技マジック全能力強化フルポテンシャル

剣技ソードアーツ縦断剣舞バーチカルロンド

斧技アクッスアーツ厄災カラミティ災禍ディザスター

盾技シールドアーツ穿通ペネトレイト盾撃バッシュ


 切り開かれた不死者の群れに、最奥の教主へと至る道が現れる。

 

天地あまつち無窮流むきゅうりゅう絶技マスターアーツ……、霊魔錬成イグニッション!」


 アラムの体から霊力と魔力が噴き上がり、うねり合わさり一つの大きな力となっていく。

 巨大な力の奔流をその身に纏い、アラムは石畳を踏み割らんばかりの勢いで教主へと突進していく。


「絶技、虚空斬こくうざん


 切り開かれた不死者の壁を乗り越えて、アラムの放った光剣の煌めきが教主の守りを切り裂いていった。


 教主の防御魔術陣を切り裂いたアラムは、躊躇することなくそのまま教主の領域テリトリーへと足を踏み入れた。

 アラムと教主の視線が交錯し、アラムがその手の光剣を構え直す。


「馬鹿な、我が防御魔術を打ち破るとはっ!……などと言うとでも思ったか?愚か者めが!」


 瞬間、アラムの足元から紅蓮の炎が噴き上がる。


「フッ、フハッ、ファーハッハッハァ!儂が備えをしておらんとでも思ったか?業火に焼かれて灰となるがよいわ!!」


 教主の顔が、喜悦に歪む。


「フッ、フハハハハ、ファッハッハッハッハッ!……ファ?」


――剣技、奪命蠍針スコーピオンニードル


 紅蓮の炎を突き破り、光剣の切先が教主の胸元を穿つ。

 驚愕に見開かれた教主の眼差しに映ったのは、己の胸に光剣を突き立てるアラムの傷一つ無い姿だった。


「悪いが、俺に炎は効かん……」

「馬鹿な!……あっ、ありえ…………、バ……ケモ……ノめぇ!……」


 パァーン……


 何かが砕け散る音無き音が響く……

 ドサリと音を立てて地に倒れ伏した教主の胸元から、夥しい量の血が流れ出していく。


「我が神よ……この命を、持っ……て…………」


 儀式を邪魔され戦いに敗れたにもかかわらず、事切れた教主の顔には笑みが浮かんでいた事に、彼らはまだ気付いていなかった。


「「「「「アラム!」」」」」


 教主が倒れると共にその活動を止めた不死者達を乗り越えて、仲間達がアラムの元に集まってくる。


「終わったな!」

「分かってはいても、貴方が炎に巻かれるのを見るのは心臓に悪いわね」

「いやぁ、至極残念無念っ!俺の弩弓が大活躍する前に全て終わってしまったか……」


 大戦斧、騎士盾、機械式弩弓を下ろした三人の表情には安堵の色が伺えた。


「「…………」」

「アラム?シオン?」


 二人の様子に、ソフィーが怪訝の声を上げる。

 アラムは己の額の疼き・・・・に眉をひそめ、その様子にシオンも異変を察して警戒の念を強めていく。

 シオンの無言の問い掛けに、アラムは黙って頷きを返した。


「まさか?」


 シオンが教主の亡骸に視線を向けた次の瞬間、アラムの絶叫が響き渡った。


「皆、来るぞ……!全員、プラーナを解放しろぉ!!」

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