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異世界転生?いえ、元世界転生です!  作者: 剣原 龍介
幼年の章

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第十話・お披露目を前に

 大陸統一歴2312年、9月

 ローランディア選王国、東方領領都スプリングフィールド

 領主館、アレクサンダーの居室にて――


 今日も今日とて、アレックスはいつも通りに起きて朝の日課を熟した。

 だが今日は、部屋にやって来たメイド達の雰囲気が違っていた。

 皆、何時にも増してアレックスの身支度に対して気合が入っているのである。

 その理由は簡単だ。

 メイドの一人が代表して、アレックスに言葉を述べる。


「アレクサンダー様、いよいよ今日がお披露目会でございますね。私達一同、心よりお祝い申し上げます」

「ありがとうございます、皆さん」

「今日は、一同気合を入れて、アレクサンダー様の身支度を整えさせていただきます」

「はい、わかりました。よしなに……」

「お任せくださいませ。とは言え、先ずは朝食に行かれるための準備をいたしましょう。お披露目会のための準備は朝食後に行わせていただきます」


 アレックスと話していたメイドが下がり、代わりに服を持ったメイドが進み出てくる。

 そうしていつもの様に上質ながら飾り気のない質素な短衣チュニックと長ズボン、ベストを着用する。


「アレクサンダー様、御髪は後程改めて整えます。ですので、今は単純に纏めさせていただきます」

「えぇ、お願いします」


 いつもの様に担当のメイドが髪を梳り、首の後ろでリボンを結んで髪を纏めてしまう。

 朝の準備が整う頃合いで扉がノックされ、メイドが扉の外を確認すれば、やはりいつもの様にアランがやって来ていた。


「おはようございます、坊ちゃま」

「はい、アラン。おはようございます」


 アレックスは、一礼するアランの横を通り過ぎて部屋の外に出た。

 その後にアランが静かに続く。


「本日の午後は、いよいよお披露目会でございます。大変申し訳ございませんが、本日は朝の稽古も昼の勉学の時間もお休みとなります」

「えぇ、わかっています」


 二人は今日の予定を確認しながら、食堂へと向かった。

 食堂の前まで来ると、レスリーと鉢合わせた。


「アル君!今日も可愛いわねぇ」


 レスリーは、アレックスを見るとガバッと抱き着いてきて頬擦りを始める。

 きつく抱きしめられたアレックスがレスリーの腕をポンポンと叩くのだが、レスリーは一向に気にした様子もなくますます強くアレックスを抱きしめた。


「おはよう、レスリー、アリー。ほら、レスリー、アリーが苦しがってるぞ」

「おはようございます、兄様。でも、アル君はあげませんからね」


 ランドルフがレスリーを宥めていると、三人の両親――フレデリックとキャサリンが食堂へとやって来た。


「おぉ、おはよう、我が息子マイホープ我が娘マイスィーティ我が愛し子マイエンジェル。朝から元気な様で何よりだ」

「あなた、『朝から元気な様で何よりだ』ではありません。ほら三人とも、食堂の前で騒いでいないで早く中に入りなさい」


 母キャサリンのお小言に素直に従い、三人は食堂の中へと入っていった。

 後に続くように、フレデリックとキャサリンも食堂へと入っていく。

 食堂に入れば、自然と話題は今日のイベント――お披露目会の話になった。

 ローランディア選王国の貴族の間では、子供が8歳になったら他の貴族に向けて子供をお披露目する事が習慣となっている。

 なぜ8歳かと言えば、この世界は乳児死亡率が決して低くはなく、ある程度成長するまで安心できないからである。

 このお披露目会を無事に乗り切って、初めて対外的には正式に貴族の子息令嬢として周知されるのである。

 また、社交界へのデビューはそれとは別の話で、女性は11~15歳、男性は14~18歳で社交界にデビューする場合が多く、これを持って成人同等とみなされるようになる。

これらの習慣は、他国であっても似たようなものである。

 ちなみに、ランドルフとレスリーは2年前にそれぞれ14歳と12歳で、揃って社交界にデビューを終えている。

 とは言え、アレックスが社交界へデビューするのは少なくともあと6年は先の話である。

 そこで、話はアレックスの話題に戻っていった。


「今日の昼食会でアレックスのお披露目を行う事になるが、アレックスは緊張していないかね?」


 フレデリックが思案に耽るアレックスに話を振った。

 アレックスはそのフレデリックを見返して、にっこり微笑んだ。


「はい、いいえ、父様。楽しみにはしていますが緊張はしていません。だって、これまでしっかり準備してきましたから」


 アレックスの答えに、フレデリックは鷹揚に頷いて見せる。


「そうだったね。ロテリナからも礼儀作法は完璧だと太鼓判を押されていたな。ふむ、楽しみにしているか……随分と頼もしい答えだ」

「フフフッ、本当に頼もしいですね、あなた」


 フレデリックの頷きに、キャサリンが言葉を重ねる。


「ランディやレッシーの時には、ガチガチに緊張していましたからね」

「もう、母様。言わないでください」


 キャサリンの発言に、レスリーは顔を赤らめた。

 レスリーの様子に、食堂には朗らかな笑い声が起こる。

 そうして、和やかな空気の中で朝食の時間は過ぎていくのだった。



……

…………

………………



 朝食が終って、アレックスは自室へと戻っている。

 自室には、既に準備を終えたメイド達がアレックスの戻りを待ち受けていた。


「それでは、アレクサンダー様。お披露目会のための準備に入らせていただきます」

「はい、わかりました。よろしくお願いします」


 アレックスが椅子に座ると、メイドが美容道具一式をカートに乗せて寄せてきた。


「まず初めに、お肌の手入れから始めさせていただきます」

「お肌の手入れですか?……お手柔らかにお願いしますね」


 まずは洗顔、続いて化粧水、美容液、乳液……

 一つ一つ丹念に肌の手入れがなされていく。

 肌の手入れが終ったら、次は髪の手入れに移っていく。

 丁寧に櫛で梳られた後、メイドが数人掛かりで髪を編み込んでいく。

 そうして編み込んだ髪は、さらに纏めて後頭部で平たく円盤状に結い上げてられていた。

 服も、この日のためだけにわざわざ仕立て上げたスーツが用意されている。

 こうして、メイド達の手によって丹念にアレックスの身支度は整えられていくのだった。

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