#1
はじめまして。浅野東西線と申します。
切ない系の小説が書きたかったので書きました(直球)
初投稿作品となりますので、温かい目で見守ってくれるとありがたいです。
それでは、どうぞ。
ある街のある小学校。
子どもたちの甲高く楽しそうな声が、晴天に木霊する。心地よい初夏の春風が、もうすっかり花が散った桜の木の葉を撫でる。校舎の窓ガラスには、雲ひとつない青い空と、輝く太陽が映る。小学校はちょうどお昼休みだ。
周りの生徒たちがグラウンドでドッヂボールやかけっこをしたり、教室で誰かと話し合ったり、くだらない遊びをしたりしている中、勝は一人でぼんやりと外を見ていた。
勝には、友達がいなかった。
勝は、周りの子よりコミュニケーションが上手ではなく、いつもだんまりだった。小学校の初めの自己紹介でも、うまく自分のことを言葉にできず、黙り込んでしまい、笑われてしまった。
それからというもの、勝は自分に自信を無くし、いつも一人だった。笑われることも多くなった。
下校時間になり、勝は一人で家に帰る。みんながさよならの言葉を交わしているところを、勝はそそくさとその場を去る。変な奴らに見つかって、笑われたりしたらしんどい。そう思いながら、走るようにスタスタと歩く。誰とも顔を合わさずに。
「ただいま」
勝は誰もいない家の玄関を開け、つぶやくように言った。
家に帰っても、勝は一人だった。両親が共働きで、帰る時間も遅い。一応休日は母が一日中いるが、在宅ワークとかいう勝にはまだわからない理由で、仕事をしている。勝が両親と一緒に遊びに行くのは、一年に一回程度だ。
「勝へ お母さん、今日も遅くなりそうだから、ここにあるお金で買って食べてね」
そう書かれたメモとともに、テーブルに千円札が置かれている。勝はそれを握りしめ、近所のコンビニで夕飯を買って、家で食べる。お弁当やサンドイッチは高いので、いつもおにぎりを買う。
いつもと同じ、海苔で巻かれたおにぎり。中には鮭のほぐし身、もしくはツナマヨが入った、代わり映えのしない味の夕飯。それを買って、ダイニングのテーブルで一人で食べた。
誰もいない、ダイニングキッチン。蛍光灯の少し弱い明かりが、そこにある一つの大きなテーブルを照らす。椅子は三つあるが、そのうちの一つの椅子に勝が座り、もくもくとおにぎりを食べる。もう二つの椅子には、お父さんとお母さんがそれぞれ座る。家で三人でダイニングテーブルの椅子に座って食事をするのは、今はほとんどなくなった。
食事を終えて、勝は自分の部屋に籠もる。部屋には昔遊んでいたおもちゃや、埃をかぶったゲーム機、自由研究で作った得体のしれない粘土でできた何か、お父さんもお母さんもいなかった授業参観で発表した作文など、いろいろなものがある。
勝は、部屋に入っても特に何もしない。ただ、ベッドに横になったり、ぼんやりと天井を見たりするだけで、長い時間を呆然と過ごす。ゲームはあるものはほとんど遊び尽くしたし、おもちゃで遊ぶ気も全くない。テレビも勝にとって面白いものはやっていない。今の勝には、退屈と感じる気持ちはほとんどなかった。かと言って楽しいというと、そうでもない。勝はただ、虚無のような毎日を過ごすことが当たり前だと思っている。
適当に風呂に入り、歯を磨いたあと、勝はまた自分の部屋のベッドに横になる。部屋の明かりを常夜灯に切り替え、布団にくるまって、明日を待つ。
眠ってしまう前に、勝は毎日、ぼんやりと考え事をする。
勝だって、本当は寂しい。
学校でも家でも、ずっとひとりぼっち。そんな生活を毎日続けていたら、寂しい以外の言葉では表せない気持ちになるのも、当たり前だ。
でも、勝にはどうすることもできない。
学校で周りの誰かと話して、笑われたりいじめられたりしたら怖い。家にはお父さんもお母さんもいないから、一人にしないでと言う術もない。
そんなことを考えては、眠りに落ちる。しかし、今日はなかなか寝付けず、心がぎゅってなり、静かな声で泣いた。
勝はもう、耐えられない。ずっと一人でいることに疲れ、心の中に封じ込めていた寂しさがついに爆発して、溢れだした。
勝は泣きながら、いるかどうかわからない神様に心の中で願った。
(ぼくに友達をください)
勝の意識は、段々と落ちていった。