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【完】私はちゃんと幸せだよ


ゆりも、大吾と残りの人生を一緒に歩むことを望んだ。

それは、優人への想いも全てを受けいれてくれる大吾がゆりを救ったのだ。


それからデートにいったり、同棲をはじめたり、もちろん優人のお墓参りにもいったり。

2人のペースでお互いを想い合い、思うことがあればその都度向き合った。


“きちんと言葉にして伝えること”

それは勇気がいることだけれども、大吾なら私を受け入れてくれる。

そう教えてくれたのが大吾だった。


……ねぇ、大吾。私を好きになってくれてありがとう……


付き合いはじめて、すぐに杏と優人のご家族へ挨拶に向かった。


~仕事上がりのご飯屋さんにて~

「実は付き合うことになりまして!」真っ赤になりながら大吾から報告をする。


その話を聞いた瞬間、杏は隣に座っているゆりに抱きついた。

「おめでとう!!」泣きながら杏は喜んでくれた。


「ゆりちゃんを絶対に幸せにしなさいよ!」杏は大吾の足ぎゅっと踏んだ。

「いたっ!杏ちゃん痛いよ!」

そのやりとりを見てゆりは笑った。


「大吾、ありがとう。」帰り際にそっと杏は大吾に言った。

その言葉に大吾は涙がでそうになった。

「杏ちゃんこそ、いつもありがとう!」


~優人の実家にて~

『おばさん、おじさん、お久しぶりです!お元気でしたか?』

「ゆりちゃんに大吾くん、今日は来てくれてありがとう!あがって~」

今日は2人で優人の実家へご挨拶にきた。


『おばさん、おじさん…私大切な人ができました。』

『でも、一番は…優人なのは変わらなくて…』

伝えたいことが上手く言葉にできなくて…ゆりは言葉に詰まった。


すると優人の母がそっとゆりの手を握った。

「よかった…!本当によかった」泣きながら優人の母は言う。


「ゆりさんは、私たちにとって大切な家族なんだ。だからずっと幸せになってほしかった。」隣に座っていた父が優しく言う。


「優人のこと愛してくれてありがとう。」父は頭を深く下げた。


「ゆりちゃんを心から愛してくれる人と出会えてよかったわ。

優人も安心してるんじゃないかしら!」母は、仏壇に飾られた優人をみる。


2人からの優しい言葉にゆりは涙がとまらなかった。

『ありがとうございます…

私にとって優人さんは特別な存在です。それはこれからもずっと変わりません。』


『私だけが幸せになることを優人や皆さんが許してくれるかって不安で…

でも、私のことを家族だって言ってくれて…そして幸せを心から喜んでくれて…

優人を好きになって、おじさん、おばさんに出会えて、本当に…本当に幸せです!』


「許すだなんて…自分の息子をこんなにも愛してくれて本当に嬉しいわ!」

「大吾くん、ゆりさんを頼んだよ。」


その日は久しぶりに、目がパンパンになるぐらい泣いた。

それは悲しみの涙ではなくて、大切な人たちの温かさから流れた涙だった。


“ねぇ、優人。私は幸せになるからね。”



……それから時は過ぎ、2人は大事な日を迎えた。

身内と大切な人だけを呼び、ささやかながら小さな結婚式を挙げた。


ゆりの父と母は、娘の新たな幸せに心から喜んでくれた。

大切な人に囲まれお祝いをしてもらい、大吾と幸せになると誓った。


大吾のご両親も、とても温かい人たちだった。

結婚のご挨拶へ行ったとき、優人のことを包み隠さず話した。

大切な人のご両親だからこそ、噓をつきたくなくて、優人の存在と想いを伝えた。


『……大吾さんは、そんな私を全て受け入れると言ってくれました。本当に素敵で優しい人です。これまでも、これからも大吾さんが私にくれる愛や幸せを少しずつ、返していきます!』


隣にいた大吾は、緊張で震えるゆりの手をぎゅっと握った。


それを見た大吾の母は微笑み、そっと答えた。

「ゆりさん、実は大吾からたくさんお話を聞いていたの。

きっと優しくて素敵な人なんだなぁって。

実際に今日会ってお話を聞いて、思っていた以上に、愛で溢れる人なのだと確信したわ。

大吾を選んでくれてありがとう。手を取り合うことができる2人なら、きっと大丈夫よ!」

陽だまりのような優しい人だった。


「これから息子がたくさんご迷惑をおかけするかもしれません。ですが一度決めたらやりきる子です。ゆりさんを絶対に幸せにします。これからもどうぞよろしくお願いいたします。」


大吾の父はポロポロ泣きながら言った。


大吾が涙もろいなのは父親譲りなのかもしれないと、ちょっぴり思った(笑)


そっと寄り添ってくれる人たちに出会えて、私は幸せ者だ。



結婚式が終わった後、ドレスのまま優人に会いにいった。

もちろん、大吾と優人のご両親と一緒に。


ゆりはそっと墓石に手をあて、優人へ話しかけた。


『優人…これまでたくさん心配かけてごめんね。

会いに来る度に泣いて…。優人がいない世界で生きていくのが苦しかったの。』


『でも、大丈夫。隣には大吾がいるから。大吾が受け止めてくれるって知ったから。』


『だからね。私は今、ちゃんと幸せだよ!』笑顔でゆりは優人に想いを届けた。


優人の母が持つ遺影に映る優人は、まるで安心したような…優しい表情だった。


皆には見えないけれど、優人はそっと墓石から姿を現した。


―よかった…ずっと心配していたんだよ!

何もしてやれなくて、ごめんな。こんなにも俺のことを愛してくれてありがとう。

ゆり、心から愛しているよ。

でも大吾くんならゆりを任せられるよ!

ゆり、大吾くん結婚おめでとう!―


安心した優人はそっとゆりの頭をなでた。

そして青い空へと消えていった。

この作品を最後まで読んでくださりありがとうございました。

いつか消えてしまう大切な人との時間をどのように歩んで未来へ紡いでいくか。

ゆりも大吾も、周りの人も、治療方法がない心の痛みに苦しかったと思います。

前を向くことも、人をもう一度好きになることも、とっても難しことです。

それでも、幸せになってほしい。全てを受け入れ愛してほしい。


大吾、ゆりを幸せにしてくれてありがとう...!

優人、ちゃんと幸せだよ。心配しないでゆっくり休んでね。

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