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ひとりではできないみたい

「あっ、もう一つ方法を思いついたよ」

「痛いのはダメだぞ」

「この方法なら痛くは無いよ。

冷蔵庫の中に肉が入っているはずだ」

冷蔵庫を開けて見ると鶏のもも肉のパックが入っている。


「たかし君はネクロフィリアって知ってるかな?」

「PCエンジンのゲームか何かか」

「それは忘れていいよ。日本語で言えば屍姦だね。

死体とセックスがしたいって言う嗜好だね。

カラスとかイルカもやる事あるし、割とメジャーな性癖なんだけど」


たぶんこいつは今かなりテキトーな事を言っている気がする。

「俺は人間だし、また嫌な予感しかしないんだが」


「あともう一つズーフィリアってのもあってね。

まあ動物とセックスがしたいとかそう言う性癖」

はじめて聞く単語ばかりだが、それがどうやってセックスにつながるんだ。


「それで、そのネクロマンサーとズーラシアがどうなるんだ?」

「ネクロフィリアとズーフィリアね。

冷蔵庫の肉を使ってオナニーしたら

この2つの性癖によるセックスとして反応して

セックス判定が成功しないかな?」


今までの人生で一度も聞いたことの無い日本語だな。

「冷蔵庫の肉を使ってオナニーしたら

この2つの性癖によるセックスとして反応して

セックス判定が成功しないかな」だとさ。


「するかあああああああああああああああ!!」

「ええっ!? なんでたかし君怒ってるの?」

「泣いとるんじゃああああああああああああああああっ!!」


俺は泣きわめき床で手足をじたばたさせながら転げまわった。




ひとしきり泣きつかれてから、テンキチとの会話を続ける。


「まあ、生の鶏肉と粘膜接触するのは避けた方が良いもんね」

「別に火を通してもやらんぞ」


「物理的なセックスが無理となると、精神的な方面での成功を目指すしかないね」

「と言うと?」


「セックス判定AIは心と心のつながりを重視するんだ。

ふとした心の触れ合いって言うかさ。

これもう実質セックスじゃん!!

ってAIが判定すればそれはもうセックスなんだよ!!」


両手を大きく広げて100万の大衆を前に演説する独裁者みたいにテンキチは宣言した。


「あっ、そう」

「逆に言えば行為に意味は無いんだ。

愛の無いセックスはセックスとは言わないんだよ」


何を利いた風な口を。

だとしたら今までの提案はなんだったんだ。


「で、どうするんだ?

この部屋には俺しかいない訳だが」

「うん、例えば今すぐたかし君がビリーミリガンみたいな多重人格者になってどうこうって言う線も考えたんだけど」


お前はどうしてそう街のマラソン大会に勝つ為に、

とりあえず世界陸上に出られるレベルになってみるみたいな事ばかり考えるんだ?


「それはちょっと厳しいので、このモニターを通じてたかし君には精神的なつながり、

触れ合いをしてもらう事で実質的なセックスを目指してもらう」


実質セックスと判定されるような精神的なつながりなどと言うものが、

単なる童貞高校生が出来るモノなのだろうか。


だが、この部屋から出る方法が他にないのであれば、頑張るしかないか。

「だけどそれは誰とやるんだ? お前か? 男同士なんてのは俺は勘弁だぞ」


仮に俺かテンキチのどちらかが女だったとしても。

俺かこいつのどちらも同性愛者だったとしても。

こいつとだけは絶対に嫌だ。


「そんな風に言われるかもと思って、愛子ちゃんを連れてきました」

「おっおい! そんな急に!! まだ心の準備がだな」


テンキチが画面から離れると入れ違いに、愛子の顔が映し出される。

「よ、よう」


そこには俺が期待していたような心配するでも無く、笑顔とかでも無く、

ひたすら不機嫌そうな愛子の表情だった。

「あー、うん。

あのさあ、佐藤君さ」

愛子は心底嫌そうに。

まるでゴキブリとムカデが盛りあってる所でも見たかのような目つきで話し始める。


「これはどんな状況なの?

佐藤君が死にそうとか言って金山君が言うから仕方なく連れてこられたんだけど、

別に佐藤君元気そうじゃん。一体なんなの?

イタズラにしてもよくわからないよ。

私、帰ってもいい?」


テンキチが愛子を引き留める。

「いやあ、帰っちゃダメだよ。愛子ちゃんにはお願いしたい事があるんだから」

「お願いって言われても」

「実は愛子ちゃんにはたかし君とセックスをして欲しいんだよね」


愛子は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにして椅子を立とうとする。

「えっ……はあ!? なに言ってくれちゃってんの!?

バカじゃないの!! バカじゃないの!! 信じらんない!!」


「いきなりどストレートで言う奴があるかああ!!」

俺は叫んだ。

愛子のこの反応は、ちょっと可愛いらしくはあるのだが、

今回は場合が場合だ。

逃がしてしまうのは避けたい。


「愛子! 違う! 違うんだよ!

俺は今本当に困ってるんだ!!」

モニターを通してすがりつくように俺は叫んだ。


「困ってるって何よ」

「金山が作った妙な部屋に閉じ込められているんだ。

そいつが今まで色々イタズラとかバカな事ばっかりしていたのは知ってるだろ?」


「……まあね。それで?」

「この部屋から出る為には、ちょっと特殊な条件が必要なんだよ」

「特殊な条件って?」


「はあああああああい!! セッッッッッックスをする事でーーーーす!!」

テンキチが嬉しそうに大声で吠えたてる。


「わたし帰るわ」

「違う! 違うんだって!!

実際の行為はしなくても大丈夫なんだよ!」


なんとか引き留めて

「精神的なつながり? 的な? 判断をAIがしてくれれば良いんだって!!」

「そんなん私に言われたって困るわよ。

別にたかし君、私の事好きって訳でも無いんでしょ」


「えっ」

「えっ?」


「あっ、うーん。

いや、その。

実は……?

的な。事もないかも、みたいなさ」

「えっ? えっ?

……そうなの?」


しばらく沈黙が続いてから、愛子が言葉をつなぐ。

「ま、まあ私もたかし君は昔から、知ってるしさ。

どちらかと言うと友達にしか見えないけど、

高校生になってから、結構、うん。

……悪くはないかもって」

「なんだよそれ」

まんざらでも無い感じで、ちょっと鼻を掻いてみたりなどする。



「おおー? なんか良い感じじゃん。

もうちょっとその調子で盛り上げていけばセックス判定出るかも。

いいよいいよー」

テンキチが最悪のタイミングで茶々を入れる。


愛子の顔がみるみる曇り始めて、怪訝な表情をつくる。

「ちょっと思ったんだけど、たかし君が閉じ込められてるのって」

「セックスをしないと出られない部屋だね。ボクが頑張って作ったんだよ! いやー苦労してさー」


愛子の表情に怒りゲージがみるみる溜まっていくのがモニター越しでもわかる。

「金山君のイタズラでたかし君が一人でそこに閉じ込められちゃったのは、まあわかるけど。

もしかしてそこに一緒に他の誰かを入れようとか思ってたりしたの?」

「愛子ちゃんを一緒にあの部屋に入れようとしたんだけど、うっかり忘れちゃってね。

いやー、二人の愛を背中から押してあげたかったのに残念だなー。

でも、なんだか見てたらもう少しで実質的にセックスと判定されるような会話になりそうだし、結果オーライだよね」


「そんなモンに協力できるかああ!!」

愛子の正拳突きがテンキチの顔面をとらえる。


この暴力に関してはテンキチの自業自得であるし、ちょっと俺の留飲も下がる気はしたが、

少なくとも俺が部屋を出るまでの間はテンキチを殴るのは止めてほしい。


ここから出られたら俺も一緒にとどめを刺すつもりだから。


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