42 心支度。
「あ、有紗は大丈夫ですよ」
私の親友を危険人物みたいに言わないでほしい。
「有紗はすごく優しいんです。私の親友で、幼なじみで……。私の大事な……」
「そうだな……。恵梨香の親友を悪く言いたくはない。だが、危険なのは有紗だけではないのだ。もっとも警戒しなければならんのはモーラだ。あれが有紗に近づけば私の息子、ジェラシュの命が危うくなる。モーラの子が王位を継ぐ為の鍵になるのが聖女である有紗なのだ。有紗の行動によってはたくさんの命が失われかねない」
「そんな……」
有紗の行動で命が……。
母親として自分の子を王にしたいというのはわかる気がする。
だけど、それに有紗が巻き込まれるのは嫌だ。
「どうしたらいいんだろう……」
私のつぶやきに、陛下はギュッとまぶたを閉じて苦々しい表情になった。
「解決する方法が1つだけある……」
「王位継承権を有する順位……といってもジェラシュ様だけなのですが、それを正式に発表することです」
そういったアディック卿の顔には、ほんの少しだけ嫌そうな感情が見てとれた。
「近いうちに、せねばならんかもな」
大きなため息をつく陛下の姿に、その大変さを感じた。
「ああ、この事は他言無用だぞ。特にモーラには知られるなよ。死にたくなければ」
陛下がぐっと怖い顔をして私とアンバーくんたちに言った。
「も、もちろんですよ」
「……ま、お前らなら大丈夫か。しかし、モーラの情報網がどこに潜んでいるかわからん。安易に話題にせんようにな。それと、言葉以外の視線や挙動にも気を付けろ。かまをかけられても動揺するなよ」
ニヤッと笑う陛下にちょっと……いやだいぶ責任の重さのようなものを感じさせられた。
かまをかけられる。
そんなの上手くかわせる自信無いよ。
「恵梨香様、めちゃくちゃ顔に出ていますよ」
苦笑しながらアディック卿は自分の口角を両手の人差し指で押し上げる。
「どんなことを言われても、ずっと笑顔でいてください。これが一番手っ取り早いですし、簡単ですよ。後は視線を相手の眼から外さなければ完璧です」
にっこり微笑むアディック卿。
なるほど、それぐらいなら出来るかもしれない。
私はアディック卿のマネをしてにっこり微笑んで返した。
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