38 昼食会。前
「やはり聖女に選ばれる方は慈悲深いのね。宵闇の巫女にまで手を差しのべられるなんて。しかし、巫女にあまり深入りしては……」
モーラ妃が口元に手をやりながら私を見た。
チラリと見えるその口のはしには蔑みの表情が表れていた。
「やめよ。恵梨香は私の客であり、この国を支える貴族になるのだぞ。これ以上私たちの気分を害するようなら……」
陛下はその視線に殺気をのせてモーラ妃とザイル殿下をにらむ。
息を詰まらせる2人を軽く押してもう2人入ってきた。
「母様、こんなところで止まらないでくれないか」
「ラグズマ……」
「お母様、とにかくお席に。まずは皆落ち着きましょう」
そういったのは有紗の婚約者といわれていた人だった。
モーラ妃を促そうと手を伸ばすと、思い切り音を立てて振り払われた。
「触るでない!そなたに母などと呼ばれたくはありません」
ふん、と顔を背けてモーラ妃は奥のほうの椅子に向かった。
私は心のなかでため息をつく。
「すまんな恵梨香。少し堪えてくれ」
陛下が耳打ちをしてくれたが、これはかなり気合いを入れ直さなければと覚悟を決めて、アディック卿に引いてもらった席へ座った。
足元で寝そべっていたカルラが私についてくる。
「そなた。犬を連れているの?これから食事が始まるというのに。アディック、外に出して」
「モーラ様。カルラ様は……」
「アディック、犬に様なんてつけては王族に仕えるものとして示しがつかないわ!早く追い出しなさいな」
「モーラ、黙れ」
陛下のまとっている空気が凍りついた。
その冷気が部屋全体を一瞬でおおったように思う。
「カルラ……は、恵梨香の友人だ。モーラ、いい加減にその口を閉じろ。それともお前がここから追い出されたいのか?」
怒っている。
その怒気が伝わったのか、モーラ妃はやっとその口を閉じた。
私はカルラを見やると、興味がなさそうにあくびをしていた。
陛下が心配そうな視線を向けてきたので、首を横に振って大丈夫だと伝えておいた。
「さて、食事の前に我が家族を紹介しよう。これは我が妻のモーラ・ウォーブ。それから順に長男のラグズマ、ジェラシュ、ザイルだ。お前たち、こちらは有紗。異世界から来た聖女で、ジェラシュと婚約した。それから恵梨香。有紗の友人で同じ異世界から来た。ベルモア卿とダチェットはお互いよく知っているな。それからシャロッツ。彼は聖女の神殿の神殿長だ」
陛下が一気に説明をしていく。
なるほど、陛下の隣でブツブツ文句を言っているのがモーラ妃で、その隣の背の高いのが第1皇子のラグズマ殿下。
その隣でにこやかに微笑んでいるのが第2皇子のジェラシュ殿下。
さらにその隣でイスをミシミシいわせてる肉ダルマが第3皇子のザイル殿下というわけか。
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