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35 広間からの移動。


「これで謁見は終了とする。皆、帰って良いぞ!」


そう言われた貴族たちは困ったようにざわざわと隣同士などと話し始めた。


そういえば、謁見が終わったあとは順番に挨拶があるんだったっけ。


どうしたらいいのか、挨拶にいってよいのか、そのまま帰れという意味なのか皆計りかねているようだ。


「皆様、本日はご足労いただき、誠にありがとうございました。聖女様がお疲れのご様子ですので、本日のご挨拶は簡単に行っていただければとお願い致します」


アディック卿がフォローをいれてくれたお陰で、貴族たちはほっとしたようすで動き出した。


有紗だけが挨拶をするように言っていたように思うが、私は一緒にいた方がいいのだろうか?


しかし、先ほどのことを思い出すと私はいない方がいいのか。


そう考えていると、カルラが私の手を軽く噛んできた。


何だろうかと見ると、広間の隅っこを見て、首をクイクイと動かしている。


そっちを見ろと言うことかと視線の先を見ると、そこにアンバーくんとダチェットがこっそりと、でも急ぐように手招きしている。


貴族の挨拶の前に広間から出ろと言うことだろう。


私は目立たないようにアンバーくんたちの方へ向かった。


「アンバーくん、ダチェット」


「恵梨香、疲れただろう。私たちは先に失礼しよう。アディック卿に許可はもらっている」


「さ、行こうぜ」


2人は扉のところにいた騎士に声をかけてこっそりと扉を開けてもらう。


私も広間を後にする。


振り替えると、陛下と共に貴族たちに挨拶をする有紗が見えた。


その顔にはとても楽しそうな笑みがあった。




廊下に出た私たちは後から出てくる貴族に会わないよう、急ぎ足で別室に向かう。


「アンバーくんもダチェットもあの広間にいたの?」


「ああ、何かあったときにすぐ動けるようにな。俺は扉の近く、ベルモア卿はお前らの割りと近くにいたぜ」


「そうだったんだ。全然気付かなかった」


「けど、恵梨香の魔力のことがばれたときは焦ったぜ。ベルモア卿が……」


「ダチェット!余計なことは言うんじゃない!あれは恵梨香に害がないよう、仕事で……いやそうじゃなくて……」


自分で言っていながらしゅんとしてしまったアンバーくんの足が止まった。


「ベルモア卿……」


「恵梨香、そうじゃない。仕事だからじゃなくて……」


私は落ち込むアンバーくんの背中に手をおいた。


「ありがとう、アンバーくん。アンバーくんはいつも私を助けてくれるね。本当にありがとう」


本当に心から思った。


最初は色々あったけど、今では一番頼りになる存在だった。


アンバーくんはパッと顔をあげる。


「恵梨香……」


「これからもよろしく、アンバーくん」


「ああ……」


「……いいところですんません。急がないといけないんで、とりあえず足。動かしてもらっていいっすか?」



急いでるのにいい雰囲気になりつつあって焦るダチェットくん。


次話はお疲れ会です。

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