33 有紗の婚約。
「我が息子第2皇子のジェラシュだ。ジェラシュと有紗は婚約することとなった」
「ジェラシュと申します。これからよろしくお願いします」
陛下に言われて前に出た青年が頭を下げてニッコリと笑った。
「よ、よろしくお願いいたします……」
つられるように有紗も頭を下げた。
急な話にここにいる貴族たち、そして私も言葉を失っていた。
なぜか、婚約を発表したがわの王族の方も驚いている。
この事を知っていたのはどうやら陛下と第2皇子、有紗とアディック卿だけだったようだ。
有紗が婚約……。
第2皇子と?
まさかこんなことになるとは思ってもおらず、何て言ったらいいのか頭を働かせようにも、全く思考がまとまらなかった。
「お待ちいただきたい!」
貴族たちの中から1本の腕が突き出ている。
その腕は貴族たちをかき分けてこっちにやってきた。
貴族の間から出てきたのは4人。
おそらく両親とその子供といった感じの家族のようだ。
手を上げていたのは見えていた袖から、父親だと思う。
そのとなりで父親同様に顔を真っ赤にしている女性は母親で、抱き締めるように抱えている少女は娘だろう。
少女は泣きそうな顔をつくってはいるが、なんとも……嘘っぽい。
その少女の肩にてをやって慰めているようなかっこの青年は兄だろうか。
「陛下、恐れながらジェラシュ殿下には我が娘ラビニアとの婚約をお約束されていたではございませんか!ラビニアは殿下と婚約できるのを楽しみにしておりました。しかし、このような場で他の者と殿下が婚約をするというのはどういうことでございましょうか!」
顔を真っ赤にして父親が叫ぶ。
その後ろで、絶妙なタイミングを見計らって娘のラビニアが大袈裟に嗚咽をもらした。
「そ、そうです!デオドラ、私はこのような話は聞いておりませんよ。いったいどういうことですか!」
ラビニアの鳴き声にハッと我に返った陛下の奥さんが言うと、他の皇子もそれに乗っかり文句を言っている。
陛下がため息をついてそちらに向きなおった。
「タイタス卿、そなたの娘との婚約の話はモーラとの口約束のことだろう。私はそんなもの認めた覚えはないが?」
「そんな……」
タイタス卿は真っ赤な顔から瞬時に青い顔になった。
それを見たモーラ妃が今度は赤い顔になる。
「デオドラ、私が約束をしたのですよ?私の約束事は守るに値しないと言うことですか?」
「この件についてはお前が勝手をしすぎたと言うことだ。王である私への相談もなく国の今後に関わる決定など出きるはずがないだろう」
「それならば、聖女との婚姻について母である私が相談をされていないと言うことはどうなのですか?王であるなら母の意見など聞かずともよいと言うことなのですか!?」
陛下に言うモーラ妃の顔には、きっと自分の意見が取り入れられるという自信があるように見えた。
だがくってかかるモーラ妃に陛下はあっさりと言いはなった。
「ああ、その通りだ」
「「!!」」
自分の意見を聞いて有紗との婚約を無かったことにまでは出来ないが、考え直してくれるくらいはするだろうと思っていたモーラ妃とタイタス卿は驚きのあまりひきつった顔になった。
「この婚約は王命だ。誰の指図も受けぬ。聖女の了承もえている。他に言いたいことはあるか!」
ギラリと睨み付けると、タイタス卿はヒキガエルのような声を出して床に這いつくばった。
「ご、ございません。お許しくださいぃい」
そう言うと嫌がる娘をなだめながらタイタス卿たちは広間から出ていった。
それを見たモーラ妃は舌打ちをして何やら第1皇子と耳打ちをしていた。
陛下は気を取り直して残った貴族たちに言った。
「騒がせてすまんな。実は聖女有紗と我が息子ジェラシュとの婚約は既に結ばれている。皆、2人に祝福を!」
そう言うと、割れんばかりの拍手が広間に溢れた。
いつの間にか有紗が遠くなったように感じながらも、私も有紗の幸せを願って一生懸命拍手を送った。
有紗が幸せになりますように。
そう思って拍手する恵梨香の脇で嫌な笑みを浮かべる人達が……。
次こそやっと恵梨香を番です!
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