31 いざ謁見へ。
私たちはアディック卿の案内で部屋を後にする。
ソファーから立ち上がった時、カルラが私の手に鼻先を押し付けてきた。
なんだろうと思ってカルラの方を見る。
「恵梨香、気をつけてな」
カルラはそれだけ言うと黙ってしまった。
カルラも一緒に行くのに何を気を付けるのか、と思ったがカルラがそういっているのだから、どうすればいいかもわからないがとにかく気を引き締めておこうと思った。
謁見の間には昨日お城に来たときに入っている。
かなり広い空間だったと記憶している。
宝石や彫刻が施された扉の前に来た。
アディック卿が先頭で、その次に有紗、そして私とカルラが一番最後だ。
扉には2人の騎士のような甲冑を来た男性が立っている。
アディック卿の指示で男性たちが扉を開けた。
ゆっくりと開かれた扉の中には、大勢の人が中央にしかれた赤い絨毯によって2つにさかれるように立ち並んでいた。
「さぁ、行きますよ。顔を上げて堂々と」
前を向いたまま言ったアディック卿に私たちは小さく頷いた。
扉を開けた瞬間、ざわめきがおこったがそれはすぐになくなり静かな視線がこちらに向いている。
なんとも言えない空気の中、私たちは絨毯の先にいる国王陛下の方へ歩いていった。
歩いていった先にはあの一段上がった玉座があり、2つのイスに陛下と女性が座っていた。
そのわきには歳が違う3人の男性が並んでいた。
おそらく女性は陛下の奥さんで、脇に立っているのは息子さんだろう。
さっき廊下でぶつかったザイル殿下が一番端っこで口をパクパクさせている。
段差の手前までいって止まる。
「有紗、恵梨香。こちらに」
私たちは陛下に呼ばれて段差を上がる。
陛下が声をかけたときこの部屋の空気がざわりと動いた気がしたが、私は有紗に続いて陛下の前に行った。
「皆に紹介する。この者は救国の聖女によって異世界から参った新たな聖女だ!」
有紗の肩に手をおいて立ち並ぶ人たちの方を向かせて陛下が言いはなった。
この発表は先に知らされていなかったのだろう。
部屋の中が大きなどよめきで埋め尽くされた。
口々に、聖女だと?そんな馬鹿な!偽物では?といったことを言っているのが聞こえる。
どよめきがいっこうに収まらない。
隣の人と話す人や、有紗を見ようと首を伸ばしている人など様々だが、驚いている表情の人が大半だ。
だがその中で、あまり驚いていない様子の人たちもいる。
ぼんやり喧騒を眺めていると陛下が一喝した。
「静まれぇ!!これより聖女の力を見せる。アディック」
「こちらをどうぞ、有紗様」
いつの間にか隅に控えていたアディック卿が有紗に大きな石を乗せた台を運んできた。
濃い青色に染まっている石に有紗が手を当てる。
大きく2回深呼吸をして、魔力を込め始めた。
前と同じように石の中の魔力が有紗の金色の魔力に押し出されるように変わっていく。
見ている人たちの息を飲む音が聞こえる。
完全に染まった後、静まり返った部屋に陛下が宣言した。
「皆、見た通りだ。有紗が聖女だ!」
有紗が聖女として御披露目されました。
次は恵梨香のばんですね。
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