30 事前打ち合わせ。
アディック卿の横顔は、すぐにいつもの微笑みに戻った。
「恵梨香様、有紗様。謁見の前にお伝えしなければならないことがございます。こちらへどうぞ」
アディック卿の案内のもと、私たちは近くの部屋へ案内された。
それほど広くはない部屋に大きめの机と背の低いソファーがある。
私たちはアディック卿と向き合う形でソファーに腰かけた。
「まずは陛下への謁見についてご説明いたします。謁見とは言いましても、今回は有紗様が聖女であることの周知がおもになります。謁見の間には国中の貴族が集められておりますがお気になさらず入られましたらまっすぐに陛下のもとへお進みください。そこで有紗様にはお手数ですが聖女の力を他のものに見せていただきたいのです」
「聖女の力をですか?」
有紗が聞き返し、アディック卿が頷いた。
「はい。昨日行っていただいた石の中の魔力操作です。皆に見せるために少し大きめにはなりますが」
これくらいですとアディック卿が両手でバスケットボールくらいの大きさの球体をつくった。
「わかりました。私の力を込めればいいのですね」
「はい。それが終りましたら、聖女の証として陛下より細剣を授けられます。魔族と戦う聖女のために鍛えられた剣です。その剣を皆に見えるよう掲げて一言ご挨拶をいただければ謁見は終了です。貴族たちが順番に挨拶をして退城してゆきますので、有紗様は挨拶のみお応えください。それ以外の会話は陛下にお任せください」
「わかりました」
聖女になったらいろいろ大変なんだなと感心していると、アディック卿がこちらに向き直った。
「そして恵梨香様。恵梨香様は聖女有紗様と同じ世界から参られた魔女としてご紹介させていただこうと思っております」
「ちょ、ちょっと魔女ってなに?そんな変な紹介されるの?」
「魔女が変ですか?我が国では複数の特性の魔力を持つ者は魔女と呼び憧れの対象となるのですが……。お気に召しませんか?」
アディック卿が困ったように笑う。
有紗は魔女と聞いて目がキラキラしている。
「恵梨香ちゃんすごい!魔女なんて羨ましいなぁ」
「聖女の方がよっぽどすごいよ。魔女なんて意地が悪そうな……」
「そんなことないよ!いいなぁ」
有紗が興奮しているが、アディック卿は1つ咳払いをして先を続けた。
「恵梨香様については有紗様の細剣の授与が終わった後に紹介させていただきます」
「わかりました。……アディック卿、カルラは連れて行ってもいいんですか?会場内は動物禁止ですか?」
「連れてもらって構いませんよ。むしろ御披露目しましょう」
そういってカルラを見てにっこり微笑んだ。
カルラはそっぽを向いたが、しっぽが割りと高速で左右に振れていた。
「では、そろそろ時間です。参りましょうか」
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